軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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編入してから二週間、学園生活は順調と言ってもいいだろう。

何より、あれから更にアボットさんと仲良くなることが出来た。

挨拶は気軽にするようになり、更に昼食も一緒に食堂でとるようになった。

しかも先日はオススメの本を貸してもらったりもした。

おこがましい事かもしれないが。

もしかして、アボットさんのことを⋯⋯友人、と呼んでもいいのかしら。

こういう事はお互い確認すべきなのかしら。

何しろ、まともに友達というものが出来たことがない為、一人で舞い上がって勘違いしている可能性がある。

私だけが友人だと思っていて、アボットさんはそう思っていないのかもしれない。

それって⋯⋯。

とても迷惑な話よね。

「私たちが友人かどうか?」

目の前のアボットさんは私の質問に怪訝そうに眉を寄せながら、目の前のハンバーグを一口食べると静かにフォークを置いた。

「それって大事かしら」

「勝手に友人だなんて思われていたら迷惑に感じない?」

「迷惑? ないない。

マルセルさんは私のことを友人だと思ってくれているのでしょう?」

「⋯⋯そうであれば良い、と思っています」

「それなら良いじゃない。

友人なんて、言葉で確認し合うことには何の意味もないと思う。お互い気があって一緒にいて楽しいこと、大事なのはそれだけよ」

言葉には何も意味がない、か。

確かに私はカトリーナ様たちと『私たちは仲の良い友人』などとあえて言葉で言っていた部分がある。それが絆を深めて、関係性を強くすると思っていたから。

でも確かにアボットさんの言うことも分かる。

「でも、私は本の貸し借りをしたり、ご飯を一緒に食べたり、気軽にお話をする人は友人だと思っているわ」

「それって」

「私もあなたと親しくなれて嬉しいってこと」

「アボットさん!」

「ほら、私って委員長に風紀委員までやってるでしょ。変に緊張感与えてるみたいで、クラスメイトとも普通に仲は良いとは思うけど少し距離を感じるのよね。

だから、マルセルさんが来てくれて、こんな風に一緒にお昼ご飯を食べたりして⋯⋯正直言うと、私も浮かれてる」

アボットさんは眼鏡の下の視線をトレーに乗った食器へと向けると、恥ずかしそうに「ほら、早く食べないと授業に遅れるわ」と唇を尖らせながら言った。

それに思わず口元が緩まるのを感じる。

まだ親しくなってから期間は経っていない。でもアボットさんの厳しく口で言いながらも、誰よりも面倒見が良くて優しい所が素敵だな、と思う。

何よりカトリーナ様には登校初日に絡まれて以降は、近寄りもしない。

お昼休みに何度かカトリーナ様が近づいたタイミングで、すかさずアボットさんに先に声をかけられるのだ。

そうすると、カトリーナ様は嫌そうに顔を歪めてフンッと顔を背けてどこかに行ってしまう。

そんなにも苦手意識を持つ何かが、私の知らない所であったのかもしれない。

それでもアボットさんに助けてもらっているのは事実だ。

「そうそう! この間貸した本の新刊が今日出るの。読み終わったらまた貸すわね」

「いいの? ありがとう。とても面白くて続きが気になってたの」

「えぇ。でも本屋に行くとつい違う本まで買い込んでしまうから、部屋の本棚がいっぱいでもう入らないかもしれないわ」

「本屋に買いに行くの?」

「そうなの、わざわざ買いに行くのは珍しいわよね。でも実際に行ってみると新刊も沢山チェック出来るし、そっちの方が断然良いのよ」

本屋⋯⋯。

大抵の貴族の家には本屋へと足を運ばなくても、興味のある分野、欲しいものを厳選して屋敷へと運んでくれる。

それを自分で選び、要らないものは返却する。

その為、私自身は本屋に行ったことはない。

でもアボットさんの話を聞くととても楽しそう。

思った以上に興味を持った顔をしていたのだろう。

アボットさんは私の様子に目を細めて笑うと「今度一緒に行く?」と聞いてくれた。

「ぜひ行ってみたいわ」

「ふふ、いいわ。じゃあ約束ね」

⋯⋯約束。

何だろう。この気分が高揚してワクワクする感覚。

領地では街を結構歩いたし、商店や市場を覗いたりもした。

でも友達とどこかへ行く約束をする。

それがこんなにも嬉しくなるものだとは知らなかった。

その後の授業中にも関わらず、ふと思い出してつい顔が笑ってしまった。すると直ぐにアボットさんから《集中しなさい》と言わんばかりに指でツンツンと腕を突かれ、ハッとすることがあった。

「まったく。本屋ぐらいで思い出し笑いをするなんて」

「ごめんなさい。つい⋯⋯」

「でもそれぐらい楽しみにしてくれてるってことでしょ」

下校の為に馬車乗り場へと向かう為、アボットさんと並んで歩く。

やっぱり、私が何で笑ってたのか分かってしまったのね。

「あっ、あれマルセルさんの馬車ね」

「えぇ、また明日お話聞かせてくれる?」

「もちろん」

アボットさんと向かい合い、「また明日」と手を上げて別れようと背を向ける。

我が家の御者が馬車のドアを開けたのを視線の先に見たその瞬間。

馬車からサッと降りて走ってくる黒猫。

黒猫?

えっ、クロ!?

いつも家で留守番をしているはずのクロが私目掛けて走って来た。

何でここに?

いつも良い子で待っていてくれるのに。

私の内心の焦りなどクロは全く気にした様子もない。『ニャー』と鳴きながら(抱っこして)と言うように私のブーツの上に前足を乗せている。

「黒猫?」

その声にハッとして恐る恐る後ろを振り向くと、驚いたように目を丸くしてクロを凝視しているアボットさんの姿。

アボットさん。

精霊⋯⋯見えるのですね。

流石、アボットさん。成績優秀なだけでなくて、魔力もかなり強い方なのですね。

思わず足元で鳴いてるクロとアボットさんと交互に見つめる。

その場に立ち竦んだ私は、これからどう説明するべきかと、つい微笑んだ顔が引きつってしまった。