作品タイトル不明
君は何派?
翌日、焚火の後始末をきちんとしてから港町モタンペへと向かう。
フロイドに関しては、まぁ現状維持というか、元神だから常識に疎い執事として認識しておいた。それ以外にフロイドを表す言葉が思いつかなかったというのもある……
そうして王都イスコアと港町モタンペの間にある広大な平原を越え、そのまま森へと続く街道の脇に2人の男が佇んでいた。
うんうん唸り、何やら考え事をしているようだ。
風貌から盗賊であるのは間違いないのだが、こんなどこからも見えるような開けた場所で居る意味がわからない。
森に仲間が隠れているのかとも思ったのだが、ここから森まではある程度距離があるし、普通の人でも充分逃げきれそうなくらいはある。
という事は見たまんま本当に何かを悩んでいるのだろうか?
でも、盗賊だし、油断は出来ない。
俺達が念のため警戒していると、向こうが俺達に気付いた。
「……あっ、何だお前等?俺達は今大事な事を話し合っているんだよ。別に襲わねぇから、さっさと行けよ!!」
「まぁ、待てよ。女性ばっかりかと思ったが、ちゃんと男が居る。しかも2人だ。あいつらにも聞いてみようぜ!!」
「あぁ!!そりゃいいな!!俺達だけだと結論がでねぇからな!!おいお前等、男2人はこっちに来い!!女達はその場を動くなよ!!」
盗賊の2人がそう言うと、俺とフロイドを指差して来い来いと招いてくる。
俺はフロイドと顔を見合わせる。
「……どうする?」
「まぁ、ワズ様の思う通りにすれば宜しいかと思いますが、そうですね……奥様方に迷惑がかからないようであれば、誘いに乗っても問題はないでしょう。私達を傷つけられるとは思えませんし……」
フロイドが肯定する事が不安に感じる。
何か厄介なというか……面倒臭い事になりそうな……
ただ、フロイドの言う通り、俺達を傷つけられる者なんて多分、邪神かそれに連なる闇の女神とシロぐらいだろうか?
「……まぁいっか。本当に何を真剣な表情で悩んでいたのか気になるし、いざとなったらぶっ飛ばせばいいだけだしな」
俺はサローナ達に近付かないように伝え、メアルを預ける。
念のため、もしもの時は思いっきり抵抗するようにと伝えておいた。
そして俺はフロイドを伴って盗賊2人へと近付いていく。
「よ~し来たな。ちゃんと女達をその場に残してきたな。何せ女達には聞かせられない話だからな……」
「それで俺達に聞きたい事って?」
2人の盗賊は真剣な表情で俺達に尋ねてくる。
怪しげな事や人様に迷惑をかけるような事だったら、即座に殴り飛ばそう……
「あぁ、実はな―――
お前等は“ブリーフ派”、“トランクス派”?どっちだ?」
……はっ!!
一瞬飛んでいた。
理解したくない内容に頭が受け付けてくれなかった。
何言ってんだコイツ?正気か?
なんでいきなり下着の話になっているんだ。
とりあえず、面倒臭そうだしもう殴って終わらそうかな?
「……なるほど」
俺がいざ殴りかかろうとすると、隣から何か納得したような声が耳に届いた。
もちろん、俺の隣に居るのはフロイドである。
隣へと視線を向けると、フロイドは瞑想するように目を閉じ、うんうんと頷いていた。
「男性にとっては永遠のテーマの1つになりますね」
……え?そうなの?そんな深い内容ですか?
俺はフロイドのその呟きに目を見開く。
どう考えてもどうでもいい話ですよね?
何をそこまで深く考える必要があるんですか?
「おや?その顔は、どうやらワズ様はまだきちんと理解していないようですね?いいですか、ブリーフは言うなれば、その密着具合は母親の胎内で包まれているかのような安心感を与える下着であり、トランクスはさしずめ少年から大人へと飛び出すが如き危うさを秘めている下着であるという、2大下着であります。つまり世の男性はその2大下着に自らの精神を表すと言っても過言ではありません。ならばどちらの方が多いのか、どちらの方がより優れているのか……それはまさに永遠の闘争!!究極の2択なのです!!……しかし、そのような事を理解していない所を見ると……さてはワズ様はブリーフ派ですか?」
「い、いや、違うし!!俺はトランクス履いてるし!!」
いきなり聞かれて動揺してしまった。
フロイドの饒舌に盗賊2人はうんうんと何故か納得するように何度も頷いていたのだが、俺が着用している下着を公表すると、片方は歓喜の喜びに包まれ、もう片方は泣き崩れた。
「よっしゃあ~~~!!!」
「馬鹿なぁ~~~!!!」
その様子を俺は冷ややかな目で見ていた。
そんな一喜一憂するような事だろうか?
どっちでもいいじゃんと思うのだが……
「ちなみに私もトランクス派です」
フロイドは優雅に一礼してそう言うと、大喜びが更に飛び跳ねる様に喜び、泣き崩れていた方は地面に頭をめり込ませて唸りだした。
だから、どうでもいいじゃん!!
下着でしょ?履ければどっちでもいいんじゃないの?
喜んでいる盗賊が嬉しそうにこちらへとハグしてきそうになったが、それは遠慮しておいた。
「……で、これが一体なんだっていうんだ?」
「つまり、今この場ではトランクス派の方が強いという事です」
「その通りだ!!同志よ!!」
勝手に同士にしてんじゃねぇよ!!同じ形の下着を履いてるだけだろうが!!
「だから、それに一体何の意味が?」
「意味を考えてはいけません。感じるのです」
……何も感じませんが?
俺がフロイドと喜ぶ盗賊にジト目を向けていると、森から男が1人現れ、こちらへと近付いてくる。俺は盗賊の仲間かと思い、この無意味な会話も罠だったのかと警戒を露わにするが、その男には別の意味で警戒が必要だった。
その男は、至る所に傷痕が残っている、いかにもといった盗賊風の顔立ちをしており、上半身は薄汚れた服を着ているのだが、その服の上からでも分かるほど筋肉が盛り上がっている。
……だが、下半身は何故か黒いパンツ1枚で、その黒パンツも大事な所をギリギリ隠せる程度の布地が少ないモノだった……ごめん、ちょっと直視したくない……
「全く……ブリーフだの、トランクスだの、いつまでガキの会話をしていてやがる」
そう言う男の野太い声がこちらまで届くと、盗賊2人は姿勢を正し、フロイドは驚愕の表情を露わにしている。
「「ちっす!!ブーメラン先輩!!」」
「あ、あれは!!ブーメランパンツ!!男の勲章たる下着の1つをこうも見事に着こなしている……あれは出来る……出来ますよ、ワズ様……気を引き締めうてかからないと……」
何が出来るのか教えて欲しい。
いや、ごめん。やっぱ知りたくない。
「ほら、そんな奴等ほっといてさっさと行くぞ!!」
「「ちっす!!!!!」」
そのまま3人の盗賊は森の中へと消えていった……
俺は終始訳わからない感じだったのだが、フロイドだけは未だ唸っていた。
もうほっとこうと、俺はサローナ達の所へと戻ったのだが
『……トランクス』
俺の下半身に視線を集中させて、何やら考えるのはやめて下さい!!