軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

雑魚い

老練の執事の開始の合図と同時に、勇者が腰に下げている豪華な装飾の鞘から剣を抜き放つ。

その剣も鞘の豪華に劣らない装飾が施されており、刀身部分は薄く青い光が輝いていた。

あれか?もしかして聖剣ってヤツなのだろうか?

勇者が聖剣を持って俺へと斬りかかってくる。

……ヤバイッ!!!!!

俺は咄嗟にその剣を避ける様にして後方へと下がる。

勇者は一振りした聖剣を再び構えると笑みを浮かべる。

「フッ……やはり邪悪なモノには効果がてき面だな。この聖剣で以ってお前を叩き斬ってやろう!!」

……危なかった。厄介だな……あの聖剣……アレで斬られる訳にはいかない……

もちろん、俺は邪悪なモノじゃないし、勇者の言うように効果がてき面でもない。

だけど、厄介だ。だって聖剣って事は……

この世に別の物が存在しないって事だろ?

つまり、その聖剣が壊れるって事は避けなければならない訳だ。

別にこの勇者(笑)のためじゃなく、後の世にこの聖剣を持つであろう人物達のために、残しておかないといけない剣の1つである訳だ。

そうなると、なんとしてでも俺の体に聖剣を当てる訳にはいかない。

だって、俺の体は聖剣を超える神剣でも傷が付くか分からないのだから……

むしろ、触れるだけでポッキリ折れるんじゃないだろうか?

これを厄介として他に何と言う……

あぁ……正直面倒だ……

「ハハハァ!!どうしたどうした!!逃げる事しか出来んのか!!」

俺が大げさに聖剣を避けたもんだから、勇者が調子に乗って、ブンブンと斬りかかってくる。

ちゃうわ!!後々の事を考えてその聖剣に当たらない様にしてるだけだわい!!

というか、勇者の動きもトロい……

え?本当に勇者なの?って動きだ。

だって勇者ってアレでしょ?世界を救ったんでしょ?

え?え?こんなに弱いの?

ウチの嫁さん最強戦力であるハオスイの足元にも及ばないよ?

多分、ステータス的には一番低いであろうタタよりも弱いんじゃないだろうか?

タタに包丁持たせれば勝てそう……

あぁ、それかまだ本気出してないとか?

隠された力があるとか?

眠っていた力が覚醒するとか?

そんな事はむしろなさそうでした。

むしろ今はぜぇぜぇと肩が大きく揺れています。

避けに徹していた俺の姿に調子に乗って、見栄え重視でブンブン大振りで剣を振るからそうなるんだよ?

というかこの程度で息切れるって……

もしかして、魔王倒してから全く鍛錬してなかったんじゃないだろうか?

そう言えば奥さんが沢山居ましたね。

そちらの相手で一杯一杯だったのかな?

でも残念。思う所が無い訳じゃないから容赦はしないよ。

「貴様っ!!逃げるばかりしか出来ないのか!!正々堂々と戦え!!」

正々堂々って……こういう人はよく言うけどさ、それっておかしくない?

だって、戦い方は人其々のはずなのだから、正々堂々の捉え方も人其々ではないのだろうか?

なのに自分にとって正々堂々では無い事が起こると、決まってこういう……

なんででしょうね?

とりあえず、まずは俺の事を普通の人だと思ってるくせに堂々と聖剣を抜き、斬りかかってくる時点で正々堂々では無いと言いたい。

……あっ!!いい事思いついた。きっと勇者が本当に勇者であれば問題ないはずだ。

俺は懲りずに大振りで斬りかかってくる勇者の手首に

「ていっ」

簡単な掛け声でチョップを喰らわせると勇者は痛みで聖剣を落とす。

俺は即座に聖剣を取ると、地面に思いっきりぶっ刺した。

それを確認すると、その場から数歩下がる。

勇者が痛みから目をこちらへと向ける頃には、聖剣は地面から柄の部分だけが飛び出している状態だった。

「貴様っ!!何をする!!その剣が一体何なのか分かっているのか!!」

激昂する勇者だったが、俺はちょっとスッキリしていた。

というかその剣が何なのかって聖剣でしょ?

それに近い武器?ならウチのタタが包丁として使ってるけど?

俺にとってはその程度の価値しかありません。

勇者が這うように聖剣の元へと辿り着き、柄に手をかけると、思いっきり引っ張るが、聖剣はその場からびくともしなかった。

フハハハ!!どうやら抜けないようだな!!つまりお前は勇者ではないという事だ!!

心の中で悪役っぽく言ってみた。

「ふぎぎぎ……」

勇者が顔を真っ赤にしながら聖剣を地面から抜こうとしているが、全く抜ける気配がしない。

というか、聖剣が無いと戦えないんですかね?

素手で来いよ。素手で。

勇者の姿を見ていた視線を上げると、イスコア側の人達は唖然としていた。

そりゃそうか。自分達の勇者が負ける訳ないと思ってたんだし。

アリアも口を開けて信じられないモノでも見ている様な表情だった。

老練の執事は特に表情は変わっていなかった。まぁ執事だしね。

一方モタンペ側の方は、サローナ達は滑稽な者でも見るかのように清々しい程の笑みを浮かべ、ナヴィリオはどこか笑うのを我慢するような苦笑いを浮かべ、エリス姫様とギヴィリオお義父さんは大笑いしていた。

ミレリナお義母さんはフロイドと共に相変わらずのほほんとしている。

それだけ確認し再び勇者へと視線を向けると、まだ地面に刺さっている聖剣と格闘していた。もう諦めなよ、君は勇者ではないという事なんだよ。

そろそろ終わらせるか……

俺はため息を吐くと瞬時に勇者の眼前へと移動すると、間違えて殺さないように手加減した蹴りを喰らわし、空中へと蹴り上げると、その勇者に追随するように飛び上がって追いつくと、手を手刀のようにして勇者の装備を切っていく。

ある程度切り終えると、そのまま地面に向かって殴り落とす。

ドッカアアアァァァ~~~ン!!!!!

地面へと衝突した際に発生した土煙が晴れると、そこには地面に人の下半身が咲いていた。その下半身は何もない生まれたままの姿の……

もちろん、アレはイスコア側の方へ向いています。

サローナ達に汚いモノを見せる訳にはいかないしね。

そして、上空からは俺が切ったマントの切れ端がひらひらと舞い降り、優しくそれを隠した……

むしろその姿の方が悲惨に見えました。

「勝者、マーンボンド家」

老練の執事が冷静にこちら側へと手を上げそう言った。

さすが執事……どっかの似非執事とは違う。

はぁ~、だいぶスッキリした。

俺は多少満足して、俺の帰りを待つサローナ達の所へと戻った。