軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

姫様の求める相手

今の状況を聞いたエリス姫様が俺達にこの王都から連れ出して欲しいとお願いしてきた。俺達は互いの顔を見合わせて、困ったような表情になる。目と目でどうする?と相談すると、俺達の態度に不安を感じたのかエリス姫様が尋ねてくる。

「……いきなりこんな事を言っても困りますよね……申し訳ございません」

丁寧に頭を下げるエリス姫様を見て、同じ女性として何か感じるモノがあるのかサローナ達と光の女神様からどうにか出来ませんか?と懇願するように俺へと視線が集中した。おい、光の女神様……なんでアナタまで俺を見るんですか?というか、仮にも神様なんだから光の女神様がどうにかして下さいよ、という視線を向けると、光の女神様はバッと俺からの視線を外し、音の出ない口笛を吹きだしたかと思えば、ポンッと手を叩き

「……すいませんワズさん……そろそろ顕現の限界時間が迫っております……このようなタイミングで居なくなるのは心苦しいですが、今は邪神の復活に向け私達女神も力を溜めておかないといけないので……では私達女神の使い・ワズよ……また必ず会いましょう……

この場と今後の事は任せましたよ(ぼそっ)」

そう言って光の女神様はそそくさと消えるようにギルドカードの中へと戻っていった。

なんかそれらしい理由を言って、ついでに俺を勝手に自分達の使い認定して、まるっと全部俺に押し付けて帰りやがった!!くっ、やっぱり女神様が光の女神様であろうがやる事は何も変わらない……はぁ……

光の女神様の言葉に反応して、エリス姫様が何やら目をキラキラさせながら俺を見だした。なんか誤解してませんか?すいません、そんな目で見られても困るんですけど……俺は自分が女神様達の使いだなんてこれっぽっちも思ってないので……

俺は気を取り直してエリス姫様に尋ねる。

「はぁ……それじゃあエリス姫様はなんで王都から出たいのでしょうか?理由もわからないのに手伝う事は出来ません。よければ何故出たいのか教えて貰えませんか?」

俺の言葉にサローナ達もうんうんと頷き、エリス姫様もわかりましたという様に頷く。

「……このまま王都に残っていると……勇者様と結婚させられるからです……」

……え?

「いえ、もちろん勇者様には既に多数の方々と結ばれているのは知っております……ただ一夫多妻も認められている以上、王族としては国の英雄と懇意にしたいがために嫁を与えて深い繋がりを持とうとする事も理解は出来ます……出来るのですが、私はそれが嫌なのでございます」

……は、はぁ……

「いえ、別に勇者様の事がお嫌いな訳ではありません。勇者様が私との結婚話がある事を知った途端に急に馴れ馴れしくなった事を鬱陶しく思いますし、私に掛ける言葉が妙に鼻についたり、私を見る目付きが妙にいやらしいモノになって正直反吐が出ますが……」

……それはもう嫌いって素直に言ってもいいのではないだろうか?

「ですが、父様が乗り気である以上、無碍にも出来ず、今後の国の事を考えると迂闊に断る事も出来ないの……ですが、私には心に決めた方が居られるのです。私はその方と結ばれたいと思っております。国のためにも勇者様と結ばれた方がいいという父様の考えも分かるのですが、私はその事を振り払ってでも、その方と結ばれたいのです!!」

……ふむふむ

「では、エリス姫様が結ばれたいと思うその人が王都の外に居るという事なのでしょうか?」

「はい。正しくは今その方は王都の近くにある港町に居るのです。出来ればその方の所までと言いたいですが……王都の外まででも構いません……駄目でしょうか?」

なるほど。だから王都から出たいという事なのか……今の現状を好機と捉えたという事か……エリス姫様の言葉と表情と雰囲気から真剣さと国を捨ててでもその人と生きていきたいという覚悟を感じる……まぁ一平民としては応援してあげたいとも思うけど……これは国を相手に敵対するって事にもなりかねないような……ん?そう言えば最近王都近くの港町って言葉をどこかで聞いたような……まぁいいか……ただ、これはさすがに俺1人の判断で動く訳にはいかない。

俺は1度皆と相談するとエリス姫様に断り、皆を集める。

「一応事情は聞いたけど、どうする?」

「私としては協力してもいいと思うのだが」

「私も協力に異論はありませんね。本人の意思を無視しての結婚は好ましくありません」

「元王族としましては国の事を思えば、このまま城へと送るべきとは思うのですが……やはり同じ女性としては結ばれたいと思う相手の所へ行くべきかと」

「私もナミニッサと同じ意見だな。国は確かに大事だが、それで個人の意思が踏みにじられるのなら、それは間違っていると思う」

「……連れていくべき」

「国のためという名の元に自らの身を差しだす事は高潔かもしれませんが、それでは余計な歪みが生まれるかもしれないと思う。私も愛すべき人の所へ連れていくべきだと思う」

「私も皆と同じだ。婚姻は双方が望んでやるべきだ。こんな一方的なモノなど私は認めたくない。彼女の望む人の所へ行かせるべきだ」

どうも皆はエリス姫様の想いを成就させたいと思っているようだ。まぁ俺も出来るならそうしてあげたいとは思っているんだけど、もしエリス姫様をこのまま連れ出してしまうと、最悪国を敵に回してしまう……まてよ、港町からその人を連れてくれば……いや、結局は門前払いされるかもしれないか……そういえば、俺達はその相手の事を全く知らないな……エリス姫様が恋焦がれる相手がどのような人物か聞いてからでも判断は遅くないか。もし怪しい人物だったのなら、エリス姫様はお城に帰した方がいいだろうし……

俺は今更な事に気付いて、再びエリス姫様に尋ねる。

「ちなみにその人はどのような人物なのでしょうか?」

エリス姫様は目を閉じ、思い出し、愛を囁くように言葉を発する。

「その方は最近港町に住みつく事になったと挨拶に来られた、父の古い友人の方の御子息で、その時に初めてお会いしました……私はその時に恋に落ちました。その方の仕草や佇まい、声に喋り方、その端麗な容姿まで……もう全てが私の心を奪ったのです……」

エリス姫様の頬は赤く染まり、表情はうっとりとしている。

「その方の名は心に深く刻まれました……あぁ……ナヴィリオ様……」

……ん?

「ナヴィリオ?」

「はい、ナヴィリオ様です」

……ちょっと待って……それって……

「マーンボンド家の?」

「お知り合いなのですか?」

エリス姫様がずずいっともの凄い勢いで身を乗り出してきたので、その反動で俺は尻もちをついてしまった。

知ってるも何も……えぇ~……なんかちょっと頭を抱えたくなってきた……