作品タイトル不明
子の心、親達知らず
その後は皆揃って食事を共にし、ルノーさんからはナミニッサとナレリナの幼い頃の話等を秘密裏に教えられていたのだが、その事に気付いた2人によって話途中で止められてしまった。残念。いたずら好きの2人とそれに翻弄されていたナヴィリオが面白かったのに。そしてそのまま俺達はこの場で1泊した。俺達も交代で見張りに立とうとしたのだが、騎士達から断られた。まぁ騎士達が大丈夫というので厚意に甘えて、俺達はぐっすりと眠る事が出来た。
そうして次の日からは騎士達と共に移動を開始した。森を抜け近くの町にまで辿り着くのに数日かかったが、道中は何とか隙を見つけてルノーさんにナミニッサ達の話の続きを聞こうとしたのだが、どこからかナミニッサ達が現れて邪魔された。いいじゃん、昔話に興味を持ってもさ……
そのまま町で一泊し、騎士達とはその町で別れた。騎士達はこれからグレイブさんの国へと向かうそうだ。俺以外にもナミニッサ、ナレリナも紹介状を書いて渡しており、俺のはグレイブさん宛なのだが、ナミニッサ達のはグレイブさんの奥さん宛になっている。町の入り口で別れの挨拶を騎士達と交わし、俺達は王都へ向け出発した。
王都へと続く街道を進んでいく内に小さな森の中へと入って行くと、俺達の進行を邪魔するように1人の男が現れた。
「ふっ……とうとうこの日が来た……あの日見せれなかった俺の通信教育の剣を見せつける時が……」
……ん?いきなりそんな事を言われても……どこか見覚えのあるその青年は青い髪をして……青い髪?それにその顔は……通信教育?
「あぁ!!思い出した!!家族総出で応援されていた盗賊なり立てだった人!!」
「その事は忘れろぉっ!!」
どうも触れられたくない事なのか、もの凄い勢いで怒鳴られた。まぁ、顔を真っ赤にしているし恥ずかしいのだろう。とりあえず俺は皆に待ってもらって青髪さんと対峙する。皆は既に慣れた事なのか休憩を取り、フロイドがどこかから持ってきたのかわからないが、紅茶を取り出して皆に振舞っていた。あれ?その光景を見る限りだと普通に執事のように見えるのに、どうして俺に絡む時は全然執事に見えないんだろうか……
「家族はまいた!!もうここには居ない!!さぁ、存分に斬り合おうじゃないか!!」
「それで……今回は……」
なんか気分が上がってる青髪さんを尻目に俺は青髪さんの後ろを確認すると、今回は彼の家族の姿はどこにも見当たらなかった……見当たらなかったのだが……何故か木の影に隠れるようにこちらを見ている女性が1人居た。木の葉のような緑の髪に可愛らしい顔立ちで、こちらの方をというか、青髪さんを心配そうに見ていた。まさか……
「……あのさ……あそこの木の影に隠れてる女性は誰?」
俺の言葉に青髪さんは血相を変えて後ろを確認する。その姿を確認すると青髪さんの動きが止まり、緑髪さんは恥ずかしそうに顔を伏せていた。
「何で居るのっ?」
青髪さんが驚きの声を上げる。その声に緑髪さんがビクッと体を跳ねさせると、おずおずとその姿を現した。どうやら、青髪さんにとって緑髪さんがここに居た事は知らなかったようだ。
「……だって、その……心配で……怪我するんじゃないかと……」
「大丈夫だって!!こう見えて俺強いんだからさ!!」
いや、とても強いとは思えないんですけど……
「えっと……とりあえず、どなたでしょうか?」
俺がそう尋ねると、青髪さんはこちらへと顔を向け、少し照れくさそうに言った。
「まぁ、その……俺の女」
おっと、青髪さんの女ですか。あれですか、将来嫁にする感じですか?緑髪さんも青髪さんの発言に嬉しそうにはにかんで、俺を視界に入れるとぺこりと頭を下げた。
「……つまり今回は家族じゃなく彼女に応援されるという事だろうか?」
「……」
俺がこの状況を言葉にすると、青髪さんは悩みだした。それはそうだろう、いかに彼女の前でいい格好を見せたいとは思っても、もしかしたら不様に返り討ちにあうかもしれない。そんな姿を見せたくないと思っているのかもしれない。まぁ十中八九そうなるが。もし俺が未だに1人身で出会っていたら間違いなく羨ましさから、そのような行動に出ていたと思うが、俺には既にサローナ達が居るのでそんな気も起こらない。むしろ、どうやってこの場を切り抜けようか、考えないと……そう思っていると助け舟は意外な所にあった。
「あ、あの……」
緑髪さんがおずおずとこちらへと話しかけてきた。俺と青髪さんは一体何だろうかと緑髪さんの発言の続きを待った。
「じ、実は……応援に来てるのは……私だけじゃなくて……呼んじゃいました」
緑髪さんのその言葉と共に近くの木々から続々と人が現れた。あの時見た青髪さんの家族である。
「頑張るんだよ~!!」
「息子の晴れ姿……うぅ……」
「怪我には気を付けろよ~!!」
「ファイトォ~!!」
「自慢の孫じゃ!!」
「逃げてもいいんだからね~!!」
勢揃いしてました。ナイス判断です。緑髪さん。
しかも、それだけで終わらなかった。
「おぉ!!あれが婿殿か!!」
「精悍な顔つきねぇ」
「お姉ちゃん、いいの捕まえたね!!」
どうやら、緑髪さんの家族も応援に参加しているようだ。お互いの家族は挨拶を交わし、父親達は握手を交わして、期待の目で青髪さんを見ている。その一方青髪さんの様子はというと……
「……」
大量の汗を流し、おなかを抱えていた。わかるわかる。緊張による腹痛だね。
『が・ん・ば・れ・ぇ~!!』
両家家族総出の応援である。青髪さんのおなかを抱えている様子を見ていると、どうかやめてあげて下さいと言いたくなる。ただ、負けないで下さいとも思っているが、その場合俺と戦う事になるので、それはなんとなく嫌だなぁ~と思った。
そうして青髪さんを眺めていると、なんとかおなかから手を離し、プルプルと震えながらも俺の方へ指を向けてきた。
「お……お、覚えてろよ~~~!!!」
その言葉を言うと同時に青髪さんは森の中へと走り去っていってしまった。
「追うぞっ!!」
『おうっ!!』
そしてその後を緑髪さんと家族全員が追って行った。とりあえず、青髪さんは家族の問題をどうにかしてから現れて欲しいと思った。それまでは覚えていよう。青髪さんも覚えてろよと言っていたし。
そして俺達は何事も無かったかのように、王都目指して歩み出した。