軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

別話16 マオリーンと獣人

今までは気にする事もなかった事が気になる様になってきた。例えば、自分の毛並みである。今までは毛並みをきちんと丁寧に 梳(と) いたりしなかった。せいぜい手で 梳(す) く程度で終わらせて、自分の見た目になどまったくの無関心だったのだが、それではせっかくのもふもふが活かせないとカガネに熱弁されて、今ではきちんと毎日櫛で梳くようになった。それに自分が食べる物も特に気にした事もなく、食べて胃に入れば全部一緒だとも思っていたのだが、夫殿が嬉しそうに美味しそうにタタの作ったご飯を食べている姿を見て、自分も夫殿にこんな顔をさせたいと思った。今は絶賛タタに料理の教えてもらっている。戦い以外でこんなにも自分が熱中する事があったのだと、毎日奮闘中だ。

自分の伴侶となる夫殿に褒めて欲しいし、綺麗と思われたい。

今はその思いが自分の原動力となっていると理解した時、あぁ自分は好きな男が出来て変わったんだなと思った……

タタと一緒にお昼に食べるためのサンドイッチを作り、タタは昼食を皆へと渡しに行くと私は椅子に腰かけると自分で作ったサンドイッチを1口食べる。タタの作ったサンドイッチは皆のお昼用に作ったので大量なのだが、料理をするその姿は正に1つの道を極めた達人のように流麗で素晴らしかった。出来も全てが統一されているかのように見事に揃っており、中の具も私にはまだ分からないが何か隠し味を加えて美味しく仕上げていると言っていた。それに引き換え私の作ったサンドイッチの形はパンを切る際に力を込めすぎて歪な形になってるし、中の具は所々飛び出してしまっている。食べれば味自体はタタが用意した物なので美味しいのだが、見た目でどうにもその美味しさが損なわれているような気がする……はぁ……まだまだ精進しなければ……

不出来なサンドイッチをもにゅもにゅと食べていると、夫殿がノック音と共に入って来た。

「こんな所に居たのか、部屋まで探しに行っちゃったよ」

夫殿の登場に私の心臓は跳ね上がる。毛並みはきちんと整えられているだろうか……私は自分の身だしなみを気にしつつ、自分の作った不出来なサンドイッチは夫殿から見えないようにそっと隠す。

「ど、どうしたのだ夫殿?探しにって事は、私に何か用なのか?」

「あぁ、今皆の武具を造ってるんだけど、ちゃんと皆に合わせるために、体のサイズを聞いて回ってるんだ。だからマオのサイズも出来れば教えて欲しいんだけど……いいかな?」

「私のも造ってくれるのか?」

「え?あぁ、もちろん。妻になるって話は……まぁまだ保留として、マオ自身の事は嫌いじゃないよ。その実直な性格は好ましいし、最近毛並みも綺麗になってるよね?俺のために整えてくれてるんだとしたら凄く嬉しいよ。マオへの気持ちは俺の我儘になるけど、もう少し固まるまで待ってて欲しいと思う……ちゃんとマオの事も見てるから……」

顔を真っ赤にしながらそう言う夫殿の言葉に私の心臓が更に跳ね上がる。ちゃんと私の事も見てくれていたんだ。半ば強引に夫殿の所へ来たし、今まで戦いしかしてこなかったから、好かれるためにどうすればいいのか分からなくて色々な事に手を出してきたが、夫殿はそんな私を見ていてくれていたんだな……その事が分かるだけで、私の中に元々あった温かいモノが更に熱を持ったような気がする。毛並みとか料理とかやっていて良かった……これからももっと頑張ろう。

「う、うむ……その……あ、ありがとう……」

私の顔も熱を帯び、真っ赤になっている事が自分でも分かった。うぅ……今すぐ飛び出してワァ~っと叫びたい衝動に駆られる。

「そ、そうだ!!私の体のサイズを知りたいのだったな……よ、よければなんだが……その夫殿が測ってくれないか?その……今までそういうのには無頓着だったから……自分のサイズ等知らないんだ……」

「いやそう言われると……う~ん……いいのか?その……俺が測る事は嫌じゃないのか?」

「嫌だなんて思わないさ。むしろお願いしたい」

ちょっと勇気を出してお願いし、私の顔は真っ赤になりながら同じように真っ赤な顔の夫殿に自分の体のサイズを測って貰った。お、夫殿!!耳は特に敏感だから……その優しく……うぅ……あぁ……

数日後、夫殿から私の動きに合わせた武具を頂戴した。私が主要武器として元々使っていた双剣とまったく同じ長さに調整された 超合金属(オリハルコン) 製の双剣で、夫殿の話によると、刀身が長い方は「固有魔法:神」で身体上昇補正がかけられており、短い方には土属性の魔法がかけられており、簡単な土操作が出来るそうだ。そして防具は腕と足、体の上部と腰部分だけの私の動きを阻害しない程度の軽装の鎧を渡された。きちんと尻尾用の穴も開けられており、素材も超合金属製であると言っていた。後は私自身が強くなるだけだな。渡された武具を眺めながら、私はより一層身を引き締めた。

城の横にある開けた平原へと赴くと、武具を装備し自分の動きに馴らしていく。武器の威力に振り回されては駄目だ。使いこなしてこそ、その真価を発揮する……

「はぁ……はぁ……」

一心不乱に鍛錬し、玉の様な汗を掻きながら一息吐いていると、ふと遠くに見える光景に目を奪われる。そこでは夫殿と龍王・ラグニール様が戦っていた。神話のような戦いを見ながら心に湧き立つモノがある。

いつか私もあの頂きに辿り着きたい……

「……私もいつか……」

「そんなに強さを求めるなら、我輩と戦わねぇか?獣人の娘よ!!」

その言葉が聴こえた方へと振り向くと、そこには金色の獅子のような風貌の高齢の男性が居た。金色の獅子の耳にたてがみに尻尾、武骨な顔立ち、見事に鍛えられた肉体……あれ?

「……祖父上殿?」

「……んあ?祖父?……その耳に尻尾……その顔つき……まさかマオリーンか?」

祖父上殿が私を指差し、口をあんぐりと開けている。

「くわぁ~!!なんだよ!!折角獣人がここまで来たって言ってたから来たのに、それが可愛い愛しの孫娘だなんて!!これじゃ死合う事が出来ねぇじゃねぇかよ!!」

祖父上殿がたてがみを掻きむしりながら地団駄を踏んでいた。

祖父上殿……自分を鍛えるために常に旅を繰り返し、偶に帰ってくれば何を倒した、アレを倒したと自慢していて、ここしばらくは帰ってこないと思っていれば……まさか中央の山の頂き付近に居らしたとは……

「はぁ……もう死合いは諦めるか……ところで久し振りだな、マオリーン。あんなに可愛かったのにいつの間にか随分と綺麗になったなぁ~……お爺ちゃんは嬉しいよ。金に困ってはないか?お小遣い必要か?ん?」

心配しすぎです。私ももう立派な大人ですよ。その……まだ経験はないですが……

「その辺りは大丈夫です。祖父上殿こそ、どうしてこのような場所に?」

「うむ、我輩の強さを更に上げるために強き者を探している内にココに住みつくようになってな。不思議と馬が合う仲間も出来たぞ!!ハイ・エルフにネクロマンサーだ!!どうだ、凄いであろう?ガッハッハッ!!」

……う~む……夫殿達に出会った後だからだろうか……出会う前の私であればハイ・エルフにネクロマンサーと言われたらなんと凄いのだろうとは思うのだが……夫殿の強さを肌で感じた後だと……ちょっと……ん?あぁ!!

「祖父上殿、そう言えば先程死合いをしたいと言っておりましたが、よければ私の夫殿と戦われてみてはいかがですか?」

私がそう尋ねると祖父上殿は何やら毛を逆立てて怒りを露わにした。

「夫!!夫だと!!我輩の可愛い孫娘を嫁にするだと!!デイズの野郎、自分の娘をどこの馬の骨にあげやがった!!いい度胸じゃねぇか!!どこのどいつだ!!我輩が戦って見極めてやらぁ!!」

「あぁ、私の夫殿はあそこで龍王・ラグニール様と戦っている彼だ」

私が指差す方へと祖父上殿が血走った眼で視線を動かすと、身に纏っていた殺気が一瞬で霧散した。

「祖父上殿?」

「マオリーンよ……本当にアヤツが夫なのかい?」

「あぁ。といってもまだ将来のだが……この事は父上も了承してる」

「……うん、そっかぁ……ならお爺ちゃん文句無いわぁ……」

「そう?なんなら死合いしてくれるかどうか聞いてみようか?」

「……お爺ちゃん死んじゃうよ?」

「ん?祖父上殿は夫殿の事を知っていたのか?」

恥ずかしそうに話す祖父上殿の話によると、この山へ来た当初、Sランクの魔物達ですら自分の相手にならないと調子に乗っていたのだが、その時に出会った無口の少年に手も足も出ず、ボッコボコにされたそうだ。その無口の少年が夫殿らしい。その後でハイ・エルフとネクロマンサーに出会って、ボッコボコにされた傷を癒してもらってる内に仲良くなったそうだ。

その後は祖父上殿に頼み込んで、私を鍛えてもらった。

もっと強くなりたい……料理も頑張らないと……身だしなみも……