作品タイトル不明
圧倒的強者
俺はゆっくりと歩み出した。
「おやおや~?なんか強そうな雰囲気醸し出しちゃってるよ~?」
「……体格的に魔法使いだろ?先程の床の破壊も、この場に居るのも魔法でなければありえん。おそらく属性魔法:風の使い手辺りか?それなら正直我々の敵にはなりえんな」
「お前達、グダグダと喋るのはいいが、アイツは必ず殺せ!!ナレリナはこの世界の王たる我のモノなのだ!!私のナレリナに無理矢理口付けしやがった!!」
誰がお前のモノだ……
自称世界の王の言葉に俺の中の怒りは更にレベルを上げていく。俺の中に魔王が現れて言葉を投げかける。「フハハハハッ!!皆殺しである!!征服である!!世界征服であ~る!!」すると、今度は俺の中に勇者が現れた。「待て!!九分殺しで止めて、生きている事を後悔させてやるんだ!!そして、その後に征服だ!!世界征服だ!!」うん……どっちも止めないのか。俺の怒りに過敏に反応してるな。しかし今はちょっと鬱陶しいから、どっか行っとこうか……俺が脳内で魔王と勇者を振り払うと「「アイルビ~バァ~ック!!」」とよく分からない事を叫びながら消えていった……俺は大きく息を吐きだすと、力強く拳を握りながら前に進んでいく。
「はいは~い!!わかったよ、王様!!ゴーレム達、王様がお怒りだから、そいつをさっさとやっちゃって!!」
女がそう言って自身が持つ杖を俺へと向ける。それに反応してゴーレム達が重そうな見た目とは裏腹に俺へと一気に迫って来た。石の拳を振り上げ、俺を殺そうと一気に振り下ろす。俺はその拳を真正面から受けた。
……で?特に何ともないですけど、何か?
俺は俺の体に拳を当てているゴーレムをただ障害物を振り払うように無造作に横殴る。
ボゴッ!!
たったそれだけでゴーレムは上下2つに別れて砕け落ちた。俺はその砕けたゴーレムの頭を踏み砕き、歩を進める。
「「「……え?」」」
3人が起きた事が理解出来ないのか、呆けた表情をしているのだが、ゴーレム達はそのまま何事も無かったかのように俺へと拳を振り下ろしていく。前、左、右、3方向から同時にゴーレムの拳が俺を殴るが、俺の体は微動だにしない。うっとおしいなぁ……邪魔なんだよ……
殴り……
蹴り……
俺は体の内にある怒りのままにゴーレムを片っ端から破壊していく。全く手加減する気がないので、俺の手に足に触れるだけでゴーレムは砕け散っていき、おそらく1分もかからない内にこの部屋に居たゴーレムはその全てがただの石の塊へと成り果てた。そしてその間に俺は空中に舞っているゴーレムの破片をギリギリ砕けないように手加減して、何度か指で弾く。
凄まじい速度で飛んでいく破片は女の腹部、腕、足を貫いていく。女は自分の体に一体何が起こったのかわからないような顔で口から血を吐き、その場に崩れ落ちる。
「……か、かふっ……い、一体何が……」
糸が切れた操り人形のようになった女が、かろうじて言葉を発する。俺を見るその目には恐怖が宿っていた。その様子を見た仮面の男が俺に強い殺気を向けてくる。
「ちっ……古代兵器と言っても所詮は造り物か……」
仮面の男が元ゴーレムの塊を蹴って1歩前に出てくる。背負っている大剣と腰の長剣を抜き、大剣の切っ先を俺へと向けてくる。どうやらこの仮面の男は二刀流のようだ。仮面の男は顎で女の方を示すと言葉を投げかけてくる。
「こいつは俺にとっちゃ可愛い妹でな。その妹をこんな風にした報いを受けてもらうぞ」
なら俺は嫁さんを傷つけられた怒りをぶつけてやるよ……
仮面の男が瞬時に俺へと肉薄する。大剣と長剣が十字を切るように上と横から俺へと迫ってきていた。見た感じどうやらその2つの剣はなかなかの名剣のようだが、俺には通用しない。ゴーレムの拳の時と同じように2つの剣は俺に触れた瞬間、その刀身が粉々に砕け散る。その事に仮面の男は一瞬動揺したようだが、直ぐ様気を持ち直すと、黒装束の袖口から何やら針を取り出して俺へとそれを突き刺したのだが……というか、剣で切れない段階で普通予想出来ないもんなのか?針は俺の体に突き刺さる事は無く、普通に砕け散ったのだが、どうやら針に何かを塗っていたようで液体が俺の腕に付着した。
「フハハッ!!毒がついたぞ!!これでお前は終わりだ!!その毒は大型の魔物ですらも絶命させる程の猛毒……」
仮面の男が嬉しそうにそう言っているが、俺はその間に自分の身体を確認する。
「全く問題ない。というか、これ以上の毒を全身で浴びた事も飲んだ事もあるぞ」
「……は?」
俺は大きく足を振り上げ、仮面の男を蹴り上げた。その衝撃の勢いで仮面の男はこの部屋の壁という壁に何度も打ちつけられ、最後には女の近くに落ちた。よく弾んだなぁ。仮面の男がずたぼろになりながら自分の近くに落ちた事で「ひっ」と小さく悲鳴を上げ、仮面の男はそこでぴくぴくと痙攣している。どうやらまだ生きているようだ。まぁ、どうでもいいけど……
俺はそのまま自称世界の王に向け歩み出す。自分を守る者が誰も居なくなった事に自称世界の王が困惑して声を張り上げる。
「よ、よせ!!く、くるな!!……そ、そうだ!!我が軍門に降れっ!!我が世界を支配した暁には、世界の半分を―――」
正直許すつもり、この自称世界の王に対して慈悲の気持ちもないので、俺はその頭を吹っ飛ばそうと拳を殴りつける―――
が、自称世界の王の頭に当たろうとする瞬間、その拳は誰かの手の平に当たって止まる。
「ここまでです、ワズ様。この者を裁くのは私達ではありません。この者を裁くのは虐げられてきたこの国の民達であり、被害を受けてきた獣人達でなければなりません」
「……なんでお前がここに居る?お前には街の方を頼んでいたはずだぞ……フロイド」
俺の拳を止めたのはフロイドだった。自称世界の王は白目で口から泡を吹きながら、下半身には水たまりを作っていた。
「街の方はもう大丈夫ですので、私は急ぎここまで馳せ参じた次第であります。私はナミニッサ様の執事である事から、自動的にその夫たるワズ様の執事でもありますので」
「……」
「執事ですので」
「お前それ言わないと気がすまないのか?」
俺は大きく息を吐き、拳を下ろすと神格化を解いた。フロイドに毒気を抜かれた俺は冷静になった事で視野が広くなる。確かに、後々の事を考えれば自称世界の王はこの国の人達と獣人達に任せた方がいいか。ついでに、この仮面の男と女の方も任せてしまおう。
俺はフロイドに胡散臭そうな者を見る目を向けるが、相変わらず涼しげに笑みを浮かべていた。神格化した俺の拳を止めたコイツは一体何なのか……まぁ、聞いてもはぐらかされそうだし、なんというかフロイドだからで全て納得しそうな自分が居て怖い……それにコイツからは1度も敵意を感じないしな……まぁ、もし敵になるなら全力で排除するだけだ。
俺はそのまま回れ右して後ろに居た未来の嫁さん達の所へと戻った。