軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後始末 1

サローナ達の所へ戻ろうとする俺にもの凄い速度で飛来するモノがあった。メアルである。メアルは速度を落とさず、そのまま俺の頭に突撃すると、ヒシッとくっ付いてきた。いや、俺だから微動だにせず受け止められるけど、普通その速度でぶつかると吹っ飛ぶからね。メアルにジト目を向けるが、そこはメアル。我関せずといった感じでよじよじと登り、俺の頭の上にのっかると、安心したようにぐっすりと眠りだした。俺は頭の上で眠るメアルを優しく撫でる。はぁ……癒される。

メアルの行動は嬉しかった。あんなに怒りを露わにし、最早人が出来る行動ではなかったのに、メアルはそのままいつもの様に俺の頭の上に乗っかっている。その普段通りの事が嬉しかった。メアルはこんな俺を怖がらないんだな。俺はもう1度メアルを撫でるとサローナ達の方を向く。彼女達はどうだろうか。俺を怖がってないだろうか……

「ずるい!!ずるいぞ!!」

「ワズさんから口付けされるなんて!!」

「姉様、羨ましいです!!」

「……愛情たっぷりだった」

「くっ!!う、羨ましくなんてな……う・ら・や・ま・すぅ・い~!!」

「……でへへ」

……何やらナレリナを取り囲んでワイワイやっていた。ナレリナもあの思い出すのも嫌なムカツク出来事は気にしてないようだ。

そのまま近付くと、俺が近寄って来た事に気付いたサローナ達が一気に詰め寄って来た。

「ワズさん!!私にも……その……く、口付けを……その……」

「私にもワズさんから……お願い出来ないでしょうか?」

「ワズ様。姉様ばかりズルイです。私にもして下さいませ!!」

「……いつでも何でも受け入れる」

「お兄ちゃん!!私にも熱烈なのを、こう……ぶちゅーっと!!」

「私にも……その……も、もう1度……」

あれ?何か皆から口付けを求められてます?というか、怖がらないのね。まぁ、それならそれでいいんだけど。あまりにもいつも通りでびっくりです。メアルといい、皆といい、ほんと俺には勿体ないくらいくらいだな。俺は嬉しさのあまり皆を抱き締める。

「「「「「「いえ、今は口付けをお願いします」」」」」」

え~……今、いい感じで抱き締めたじゃん。綺麗に終わったじゃん。もうこれで終わりでいいんじゃないの?駄目なの?駄目なんですね?そうですか……

「えっと……あっ!!ほら、フロイドが見てるし、口付けはまたの機会という事で」

「いえ、私の事は路傍の石とでも思って軽く流して頂いて構いませんよ」

「「「「「「そう言ってますし、お願いします!!」」」」」」

くっ!!フロイドめぇ!!お前絶対楽しんでるだろ?ほらほら、怒らないから正直に言ってみろよ!!てか、そのこっち見ながらにやけてるのやめろっ!!

「……なんだ?とり込み中か?急いで駆けつけたのに、邪魔しちまったか?」

いつの間にか、この部屋の入り口に手を付きながらグレイブさんが俺達を見ながらそう言葉を投げかけてきた。俺は即座に皆を抱き締めていた手を離す。ナイス!!なんていいタイミングで来るんだ!!さすがグレイブさん!!空気の読める男ですね!!

「「「「「「……ちっ」」」」」」

あれ?今、なんか近い距離から舌打ちが聴こえたような……きっと幻聴だな。だって俺の近い距離に居るのって……満面の笑顔を俺に向けるサローナ達しか居ないもんな……さっきの舌打ちは本当に幻聴なんだろう……そう思おう……

……そう思いたい……

俺がそう思っていると、グレイブさんの後ろからデイズが部屋に入って来た。

……あっ!!そう言えばデイズの娘さんの事を忘れていた。どこにいるんだろうと視線を部屋の中へ向ければ、隅っこの方でこちらの様子を窺っていた。急に色々起こったから、まだ呆けているようにみえる。俺はこちらを見ているデイズの娘さんに手振りでデイズの方へ向けと合図を送る。その俺の行動にデイズが視線をそちらの方へを向けた。

「マオリーンッ!!」

娘を確認したデイズが涙を流しながらそう叫ぶと、娘さんがビクッと反応し、デイズの方へ視線を向ける。デイズをその目に捉えるとスゥーっと涙が流れる。

「パパッ!!」

デイズと娘さんは共に走りあい、互いの無事を喜ぶようにヒシッと抱き合った。うんうん。感動の親子の対面ですね。よかったよかった。デイズと娘さんが喜ぶ中、グレイブさんがこちらへと来た。

「そっちも片付いてるみたいだな。まぁ、来た時の空気が弛緩してたし、元々問題はないと思ってたけどな」

グレイブさんが自称世界の王達を見ながら声を掛けてくる。

「そちらもここに来たという事は街の方も片付いたんですね?」

「あぁ、フロイドがやけに張りきってて、特に問題も起こらず終わったな」

フロイドが?その言葉に視線をフロイドへと向けるが、相変わらずの胡散臭い笑みで一礼してきた。よし、ほっとこう。

「それでどうする?」

「ん?どうするとは?」

「いや、とりあえず今は一時的にとはいえ、この国を救った訳だが……問題はこれからだろう?この国の王族が居なくなる訳だからな……」

「そうですね」

「この国を良い方へ導ける舵取りが出来る者が頂点に立たないと、また同じ事の二の舞になるしなぁ……」

「ですねぇ」

俺がにやにやしながらグレイブさんを見ながら返事をしていると、俺の表情に気付いたグレイブさんが苦笑いになった。

「ワズ坊……何やら激しく嫌な予感を感じるんだが……」

「グレイブさんって……もしかしてずっと旅してるんですか?」

「そうだな、前にも言ったが俺の奥さん達は世界中に居るからなぁ」

「どこかに奥さん達を集めて一緒に暮らしたいとは思わないんですか?」

「そりゃ、そう出来ればそうした……くは……ないような……」

「この国は北に獣人の国、東に王都、西には海が広がってるし、立地的には悪くないですよね?」

「……そう……だな」

「そろそろお子さんも欲しいでしょ?」

「そりゃ……なぁ」

「それに、ここに入る時に書きましたよね?責任を取るって?」

俺がそれを言うとグレイブさんは何かを諦めたか、考えるように空を仰ぐ。

「……つまり、ワズ坊は俺にこの国の王になれと?」

「グレイブさんなら、きっといい国に出来ると思います」

俺は正直にそう答える。本当にグレイブさんなら立派な王になると思ったからだ。

グレイブさんは覚悟を決めたように強い眼差しで俺を見てきた。

「責任取るって書いたしな。しかし、俺が王か、柄じゃないんだが……冒険者から王になるなんて本当にどっかの物語かって話だが……立派な王になれると思うか?」

「なれますよ。俺も可能な限り協力します」

「……はぁ……ワズ坊が協力してくれるんなら……この国の王を目指してみるか。いつまでも旅は出来ないし、そんな俺を心配している奥さん達を安心させたいしな」

照れるように話すグレイブさんに俺は笑顔を向けた。