作品タイトル不明
降臨、爆誕!!
先程までであればデイズの爪は砕け散っていたのだが、今はその爪も砕け散らず、そのまま残っていた。その事にデイズは自らの力が跳ね上がっている事に気付くと、もう片方の爪を俺に向かって突き刺してきた。もう服を斬られるのは勘弁なので、その爪を受け止め、握力で握り潰そうとしたのだが、獣の本能でも残っていたのか即座に俺から飛び去るようにして距離を取った。と、思ったのも束の間、瞬時に俺へと迫ると今度は足蹴りをかましてくる。それを避けると、デイズはその勢いのまま体をぐるっと回転させ、爪を俺に振りかぶってくるが、それは足で止めた。デイズはそのまま着地すると、空いているもう片方の爪で攻撃してきたので、今度こそ握り潰してやるつもりでその爪を掴んだのだが、デイズの攻撃はそれで終わってはいなかった。そのまま顔を突き出し、大きく口を開くと俺の首に噛みつこうとしてきた。そのまま噛み殺そうとしてきたので、俺は咄嗟に空いている方の腕をデイズの眼前に出し噛みつかせる。俺の腕を噛み千切ろうと歯をたててくるが噛み千切れないとわかると、再び後ろへと飛び去って距離を取ったのだが、そのまま噛みつかせた部分の服が千切れてしまった。何これ?片方は斬られ、片方は千切られ……何か今の俺って変な格好になってないか?ちょっと恥ずかしいんだけど……はぁ……
さて、服の事は後回しだ。まずは目の前のデイズをどうにかしないと。やっつけるのは簡単なんだけど、やっつけた後が問題なんだよなぁ……今まで経験で言うと、やっつけると赤い玉を吐きだして生きているのか死んでいるのかわからない状態になるんだよなぁ。ハオスイの場合は例外として……あんなに怒る程の理由なんだし、出来れば生きて聞いてどうにか出来るなら、どうしかしてやろうかとは思ってるんだけど……相手はそうも言ってられないし、どうも今のデイズは変な方向に意識の全てが向かってる感じだから、聞き出すのも無理っぽいな……ならまずは気絶だけさせるか。デイズを沈黙させれば周りの強硬派の獣人達も少しは落ち着くかもしれないし、今はこの戦いを止める事だけを考えるか。
そう思った俺はデイズへと声を掛ける。
「今からぶちのめすけど、死ぬなよ?」
「……ウウゥ……コロス……ヒトゾクハコロス」
あかん。聴こえてないわ。しょうがない。一応、言うだけは言ったからな。
他の者には目もくれず、再びデイズが俺へと向かってくる。完全に俺を狙っているようだ。だが、今度はこっちも迎撃させてもらう。俺は迫ってくるデイズに一瞬で近付く。いきなり目の前に現れた俺にデイズは焦ったのか、うろたえる様に大きく腕を振りかぶるが、その行動は俺にとっては酷く遅い。俺は振りかぶる途中の腕を掴み、そのままねじる様にして腕の動きを封じると、少し力を込めてデイズを蹴り上げる。俺の蹴り足がデイズの体にめり込むように入った後、デイズは空中へもの凄い速度で吹き飛んでいった。俺はその姿を目で追うと足に力を入れ、飛んでいったデイズを追う。瞬く間に空中を飛んでいるデイズに追いつくと両手を組み、振り上げ叩きつける。今度は地上へと向かってもの凄い速度で落下していった。そのままデイズが地上へと落下すると、凄まじい衝撃音と共に地面はひび割れ陥没する。その中心にはぴくりとも動かないデイズが居た。俺はそのまま地上へと着地するとデイズの方へ視線を向ける。
「……コロ……ス………………コ……」
デイズはそのまま気を失った。口から赤い玉を吐き出さないし、生きているようなので、ほっとした。もちろん、吐き出そうとしたら瞬時に口を閉じに向かうつもりだった。しかし、困った事もある。デイズの姿が戻らない事と、これでは怒りの目を向ける理由を聞けない事だ。さて、どうしようかと考えていると、ふと周りが静かになっている事に気付いた。ん?どうした?周りに視線を向けると戦いは止まっており、強硬派の獣人達は所々で武器を落とす者や、悔しそうに口を噛む者、涙を流している者も居た。あれ?この状況って俺が悪者みたいになってないか?ど、どうしよう……とオロオロしていると、20人程の獣人達が俺の傍へと駆け寄って懇願してきた。あれ?確かこの人、マーラオのお父さんのギオさんだったよね?
「頼む!!いや、お頼みします。どうか我が弟の命を奪わないで頂きたい!!」
そう告げると地面に頭を擦りつけだした。ちょ!!それやられると俺が完全に悪者扱いになるから!!元々殺すつもりはないのに~!!
「大丈夫だって!!ワズ坊は元々殺すつもりなんてねぇよ!!俺にだって、獣人達を殺さないようにって言ってきたくらいなんだからよ!!」
そう言いながらグレイブさんがゆっくりと現れた。さすがグレイブさん!!わかってるぅ~!!かっこいいよぉ~!!助かったよぉ~!!頼りになるよぉ~!!グレイブさんの言葉にギオさんが頭を上げ、確認するようにグレイブさんを見ると肯定するように頷くと、今度は俺の方を見てくるので俺も頷いておく。それを確認すると、ギオさんは目に涙を浮かべ、安堵したように体から力を抜いていった。そんなギオさんに俺は声を掛ける。
「……それで聞きたい事があるんですが?」
「なんだろうか?」
「何故、デイズはこんなにも人族に怒りの目を向けてくるのでしょうか?」
「……」
俺の問いにギオさんは目を瞑り考え込むように黙り込む。少しの後、目が開かれるとまっすぐ俺を見て答えてくれた。
「……実はデイズの娘が南の王国の連中に非道な手段で攫われたのです。いえ、デイズの娘だけではありません。強硬派の多くはデイズと同じ境遇なのです。だからこそ彼等は自分の息子、娘を助け出そうと戦いに打って出ようとしていたのです」
なるほど……そりゃ怒るわ。人族に怒りの目を向けるのもわかるな。なんというか本当に殺さなくてよかった……よかったのだが、デイズの状態をこのまま放置する事が出来ない事もまた事実なんだよなぁ……
「デイズは何かしらの原因で狂っているだけなのです……どうか、助けては頂けないでしょうか?」
そうギオさんが俺に言ってくるが……そりゃ俺も助けてやりたいけど、どうしたらいいのかわからない。また女神様達に聞いてみるか?でも、そう都合良くいくのだろうか……まぁ聞くだけ聞いてみようかなぁと思った時……
俺の懐から光の玉が飛び出し、空へと飛んでいく。
すると、空が輝き、その空から俺の近くへ一筋の光の柱が現れた。その光の柱の中には1人の女性が居た。ピンク色の髪を優雅にたなびかせ、可愛らしい顔立ちに均整のとれた体つきで、見えそうで見えない透明度の高い布地の修道服を身に纏っていた。そんな人物がゆっくりと舞い降りてきた。そのあまりの神々しさに、この場に居る俺以外の人達は皆平伏しだした。地上へと降り立ったその人物はそんな光景を見て静かに、それでもこの場に居る全ての者に囁くように届きそうな声で告げる。
「……七並べに勝った私がワズさんの愛を勝ち取るため」
あれ?どうしよう。凄く嫌な予感がするんだけど……
「女神、ここに!!爆!!誕!!」