作品タイトル不明
追いかけて来た者達
今、俺の目には視界全てを埋め尽くす程のおびただしい数の完全武装の獣人達が一気に迫ってきていた。さぁて、やるか。
俺は一気に飛び出すと手っ取り早く一番近くに居る獣人を殴り飛ばす。もちろん、殺さないように手加減はしている。まぁ骨の2、3本は覚悟してもらいたい。攻めてきてるのはそっちなんだし。殴り飛ばされた獣人はそのまま自分の後ろに居た獣人達10人程を巻き込んで吹っ飛んで行った。装備していた鎧がぼっこり凹んでいたけど、弁償はしないからね。というか、息つく暇も無い。殴ったと思ったら直ぐに次の奴が現れる。剣を大きく振りかぶり、俺を斬り殺そうとしてくる。俺はその剣を素手で叩き割ると、そのまま頭を掴み、地面へと叩きつけた。地面が大きくひび割れ、その振動で獣人達が大きく態勢を崩すと俺は瞬時に動き、10数人を殴り吹っ飛ばす。殴られた者達が空を舞っている間も俺の動きは止まらない。未だ態勢を崩している獣人を見つけると、蹴り飛ばし、殴り飛ばし、投げ飛ばしたりと大忙しだ。それでも目に見える数は全然減っているようには見えない。先はまだまだ長そうだなぁ……
さて……囲まれてしまった。かなりの数を吹っ飛ばしたはずなのだが、全く減っているようには見えない。どんだけこの場に居るんだよ。まぁ、しょうがない。殺さない事を徹底している分、効率が悪くなるのは否めないし。相手の獣人達もまともに行っても勝ち目がないと思ったのか、今は俺を斬ろう刺そうとするのではなく、まず俺の動きを抑え込もうと掴みかかってきていた。こう大人数で1度に来られると対応に困る。俺のステータスだと少しでも力を込めれば簡単に相手を殺してしまうせいで、常に意識を手加減に向けているからだ。現に今も咄嗟に力を込めようとして、このままじゃ殺しちまうと思い、力を抜く隙を突かれて掴まれてしまうと、他にも何人もの獣人達が即座に飛びつき、掴まれ組伏せられてしまった。俺の身動きを封じると、そのまま圧死させるとでも言いたいのか、何人も俺の上に飛び乗ってきた。その行動が続き、今では3、40人程が俺の上に次々と飛び乗って結果、大きな山が出来ていた。もういいか、と思うと俺は「よいしょ」と軽い掛け声と共にその山を持ち上げると、その光景を信じられないとでも言うような恐怖の視線を至る所から感じた。俺はその山を遠くにポーンと投げ飛ばす。まぁ、あれぐらいじゃ死なないだろう。俺は服に付いた土埃を払い、手をパンパンと叩いた。さっ、次はどいつかなぁ……
まだまだ獣人達は数多く居るのだが……現在俺は1人である。いや、正確には違う。俺の周りの空間だけ、がらんと空いているのだ。暴れた結果だろうか、誰も俺に近付こうとはしてこなかった。大部隊の完全武装の獣人達は遠巻きに俺を囲んでいる。かかってこいよ。だが、俺が1歩前に足を出すと、そのまま獣人達は1歩後ろに下がる。さらにぐいぐい前に行くのだが、俺の進む距離に比例して後ろに下がられた。えぇ~、じゃあ、これからどうすんの?と思っていたら、獣人の大部隊の後ろの方から俺目がけ、空を埋め尽くすような無数の矢が降り注いできた。味方まで巻き込む程のその矢の量に俺は焦った。味方ごと俺を仕留めようとしているのか。死人を出す気のない俺は即座に地を蹴り空へと飛ぶと、ちょっと本気の蹴りを放つ。その蹴りによって生み出された風圧によって、全ての矢は行き場を見失い、遠い空まで吹き飛んで行った。獣人達はその光景にポカーンとしてたけど、誰も死んでないし、これでよし……
そういえばグレイブさん達は大丈夫だろうか?相変わらず俺の周りは閑散としていて誰も攻め込もうとしてこないので、ふとそう思った俺はグレイブさん達が居る方向へと視線を向ける。そこはまさに激戦だった。グレイブさんは俺と同じで獣人達を極力殺さないように戦っているため、少々苦戦しているようだ。しかし、そこはさすがのSランク冒険者。きちんと相手の意識だけを刈り取っていた。それでも多勢に無勢ではあるのだが、そのグレイブさんを助ける存在があった。奥さん達と穏健派の獣人達である。彼等は協力して相手を撃退していく。もちろん命を奪う真似はしていない。武器を奪ったり、縛りあげたりと戦う力を奪っているだけだ。それでも充分グレイブさんの役に立ってはいるだろう。その証拠に彼等の顔は生き生きとしているし、実際にグレイブさんの死角を突くような攻撃を王様自らがカバーしたりして互いににやりと笑ったりしていた。いいなぁ……楽しそうだなぁ……羨ましいなぁ……もちろんこっちもいつ攻め込まれてもいいように警戒は怠らなかったのだが、誰も攻め込もうとはしてこなかった。なんでだよ。こいよ。かかってこいよ。そんな事を思っていると……
はずした視界の方で爆発音のような大きな音が鳴り響いた。
何事と思いそちらの方へ視線を向けると、そこには空中へと舞い上がる獣人達の姿があった。いやほんと何事?舞い上がる獣人達は終わる事がなく、次々と空へと舞っていった。俺の周りに居た獣人達も何事かと慌てている。その場所を目をこらして見ると1人の少女がそこに居り、それは緑色の髪の1部が2本の角のようになっているという特徴を持つ少女・ハオスイであった。どうやら体調が万全に戻ったのか、自分の近くに居る獣人を掴んでは投げ、掴んでは投げを繰り返してこちらへと向かって来ていた。その健康な無事な姿にほっとしたのだが、よく見るとその場に居るのはハオスイだけではないようだ。
ハオスイの後に続いて突き進んで来る人達が見える。
フロイドかな?そんな軽い感じで眺めている視界にありえない人達が写った。
……え?……嘘でしょ?……なんでここに居るの?