軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第89話 塔を造ってみたんです

全長二十メートルを超える巨躯が宙を舞った。

その巨大な身体からは想像できないほどの跳躍力だ。

「「「ぬおあああああああああああああっ!?」」」

地上の冒険者たちがパニックになりながら懸命に走る。

やがて彼らの頭上へ、巨大カエルが降ってきた。

どおおおおおおおおおおおおおおんっ!!

轟音と共に地面に激突。

発生した衝撃波で、辛うじてプレスを避けた冒険者たちが吹き飛ばされていく。

ぼよよよんっ、ぼよよんっ、ぼよんっ!!

しかもそこから何度かバウンドして追い打ちをかけると、いくつかの家屋も巻き込み、大きな被害を生み出した。

「こ、この巨体で、あんなに跳ぶとか……反則だろ……」

「こんな化け物、どうやって倒すってんだよぉっ!?」

「終わりだ……もうこの街は……」

「お、俺は逃げるぞ!? こんなのと戦ってたら命がいくらあって足りねぇからな!」

幸い冒険者たちは全員、下敷きになるのは回避できたみたいだけれど、完全に意気消沈してしまっている。

中には逃げ出す人たちも。

「このままじゃ……」

僕も先ほどの衝撃波でひっくり返っていたのだけれど、絶望的な思いで立ち上がろうとした、そのときだった。

「っ!?」

迫る巨大カエルの舌。

少し前から警告音は響いていたけれど、起き上がり際だったため反応が遅れてしまう。

舌が身体に巻き付いたと思ったときには、もう目の前に巨大カエルの大きな口があった。

〈帰宅〉で逃げる!?

いや、先ほどのプレス攻撃で僕の家も壊されてしまっている。

遠くの他の家に飛べば……いや、距離が遠ければ遠いほど必要な魔力が多くなるし、発動にも時間がかかるため間に合わない。

「ライルくん!?」

「〈防水〉!」

咄嗟にできたのは覚えたばかりの生活魔法を使うことだけだった。

気づいたときには僕は巨大カエルの体内に放り込まれ、スパイクロールを一瞬で骨にしてしまった消化液の中に落ちていた。

「でも、濡れてないっ……?」

どうやら一か八かの〈防水〉の効果があったみたいだ。

消化液を完全に弾いてくれているみたいで、そうなると当然、身体が溶かされる心配もない。

「これなら時間をかけて〈帰宅〉を発動すれば……待てよ?」

こんな場所からは一刻も早く脱出したかったけれど、はたと思う。

この状況はむしろ絶好のチャンスなのでは、と。

「無防備な体内……昔読んだおとぎ話だと、巨人に食べられた小さな戦士が、身体の中から攻撃して巨人を倒したって書かれていたけど……」

まず思いつくのは、先ほど少なからず効果があった〈食材切り〉だ。

限界まで魔力を込めて放てば、十分なダメージを与えられるかもしれない。

他には〈冷房〉。

体内から冷やしてやれば、寒さへの耐性があってもさすがに凍りくのでは?

逆に〈加熱〉はどうだろう?

体内から超高熱で焼かれれば、普通の魔物なら一溜りもないはず……って、中にいる僕も一溜りもないかも。

「〈水生成〉は? 胃を限界まで膨張させて、破裂させる……いや、口から水を吐き出すだけで対処されてしまうか。……じゃあ、吐き出せないようなものなら? ……っ! それだっ!」

僕は亜空間から大量の骨を取り出す。

カーミラさんがどうしてもと言うので仕方なく保管しておいた、穴底の骨だ。

この強力な消化液でも簡単には溶けないはずなので、ちょうどいい 材(・) 料(・) だろう。

そして、ただでさえ巨大カエルの胃袋を埋め尽くしている大量の骨に、僕はその生活魔法を使った。

「〈日曜大工〉!」

骨と骨が自動的に組み合わさり、一つの大きな建造物ができあがっていく。

それは塔状のもので、やがて巨大カエルの胃の中を圧迫し始める。

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!?」

さすがの巨大カエルもこれは効いたらしい。

のた打ち回っているのか、中にいる僕はぐるぐると回転して上下左右が分からなくなってしまう。

気づいたときには体外に吐き出されていた。

「ライルくん!?」

「無事だったのだ!?」

「はい、見ての通り」

巨大カエルは周囲の建物を破壊しながら七転八倒している。

「ゲコゲコゲコゲコゲコオオオオオオッ!?」

その胴部は左右に大きく引き伸ばされていて、外から見ても体内に何か棒状のものが入っていることが分かるほど。

さらにそれはどんどん大きさを増しており、巨大カエルの分厚い肉を突き破ろうとしていた。

「い、一体何をやったんですの?」

「体内で〈日曜大工〉を使って塔を造ってみたんです」

「……ごめん、何言ってるかぜんぜん理解できないんだけど?」

「右に同じなのだ……」

そのときついに骨で作られた塔型の建造物が、巨大カエルの肉を貫く。

「ゲコオオオオオオオオオオッ!?」

血の混ざった液体を飛び散らせながら、巨大カエルが絶叫を響かせる。

明らかな致命傷だけれど、それでもまだ巨大カエルは生きていた。

鈍重な動きになりながらも、穴底の方へと逃げようとする。

凄まじい生命力だ。

ただ、この場にいる上級冒険者たちが大人しく逃走を許すはずもない。

もはや虫の息となった巨大カエルにトドメを刺すべく、総攻撃を仕掛ける。

反撃する力も残っていない巨大カエルは、ひたすら穴底を目指し続けたものの、ついに動けなくなった。

――〈家具移動〉を習得しました。

――〈ペット飼育〉を習得しました。

どうやら無事、倒すことができたみたいだ。