軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第7話 ビンビン言ってやがる

地下10階の安全地帯で三時間ほどの仮眠を取った後、僕たちは順調に階層を踏破し、地下13階に来ていた。

相変わらず代わり映えのない洞窟が続いているけれど、やはり道はより複雑になってきていて、自作のマップでルートを指示しているギルさんも頭を抱える場面が多くなっていた。

「ったく、別れ道が多すぎるんだよなァ。しかも段々と立体的になってきてやがるから、平面の紙でマップを作るのも大変なんだぜ?」

もちろん魔物も強力になっていた。

「っ……」

獣人特有の高い嗅覚を持つシルアが、真っ先にその接近に気づいて無言で剣を構える。

「グギギギ」

現れたのはホブゴブリンだ。

ゴブリンの上位種だけど、大きさはゴブリンの数倍はあるだろう。

そして動きこそ鈍重なものの、通常のゴブリンとは比較にもならないほどパワーがった。

さらにホブゴブリンが引き連れているのは、通常のゴブリンより少し体格が良くて、肌の色も違うゴブリンたち。

鎧を身に着け、武器を持っているこいつらもまたゴブリンの上位種で、ゴブリンナイトと呼ばれている。

「来るぜ!」

一斉に躍りかかってくるゴブリンの群れ。

全部で七体いるため、こちらより数が多い。

先陣を切ったシルアが、一気にゴブリンナイトとの距離を詰めて先制の一撃をお見舞いする。

それはガードの剣を弾いて、そのまま致命傷を与えた。

だけどそこへ二体のゴブリンナイトが左右から挟撃してくる。

シルアはそのまま二体を同時に相手取った。

その間にゲインさんはホブゴブリンと対峙。

怪力から繰り出される強力な棍棒を、ゲインさんは大剣で受け止めたばかりか、反撃の蹴りをホブゴブリンの顎下に叩き込んだ。

その間に残る三体のゴブリンナイトが、後方にいる僕たちの方に殺到してくる。

そのうち一体は気配を消していつの間にか接近していたギルさんが、急所を短剣で一突きして仕留めたけれど、二体はそのまま僕とメーテアさんのところへ。

「ちょっと、こっちまで寄こさないでよ! 〈ライトシールド〉!」

そう味方を咎めながら、メーテアさんは自分の身を守るための結界を展開した。

白魔法の中にはこういった防御系の魔法もあるのだ。

「「ギャギャギャッ!」」

結界に阻まれたゴブリンナイトたちが、苛立ったように剣で結界を叩く。

「ゴブリン気持ち悪すぎ! 早く倒しなさいよ!」

「んなこと言われても、数が多いんだから仕方ねぇだろ! ちっ……しかも新手がきやがったか!」

舌打ちするゲインさん。

見ると、新たに三体のゴブリンナイトがこちらに近づいてきていた。

これは少し僕もサポートした方がよさそうだね。

経験値を稼ぐ機会でもあると思って、僕は魔力の塊を飛ばしてゴブリンナイトの身体に風穴を開けていく。

頭に兜を被っているため、ゴブリンのように脳天を一撃というわけにはいかない。

それでも何発か喰らわせてやれば、魔力弾だけでも仕留めてやることができた。

やがて新手も含む十体の魔物を全滅させた。

「……なんだ? もう片付いたのか? 十体いる割には苦戦しなかったな?」

「途中で何体か勝手に倒れたように見えたが……おれの気のせいか?」

思いのほか早く戦闘が終わり、ゲインさんとギルさんが不思議そうにしている。

「にしても、さすがにこの階層ともなると簡単には行かねぇか」

「前回もゴブリンナイトの集団には苦戦させられたからなァ。もう少し慎重に行った方がよさそうだぜ? っと、そういや、ライル、まだお前さんの〈小物収納〉には余裕があるんだよなァ?」

「はい、あります」

「そいつはいい。だったら可能なだけこいつらを入れておいてくれ。ゴブリンナイトの武具は割と高く売れるんだよ」

ゴブリンナイトの武具はダンジョンが作り出すもので、すべて新品だ。

性能も悪くないため、地上に持ち帰ればいい稼ぎになるという。

「分かりました」

僕は九体分の武具をすべて〈小物収納〉で亜空間に入れておく。

「……全部入っちまうのかよ。稼げる反面、重くて嵩張るから、基本的には持ち帰るのを諦めるもんだが……やっぱ性能おかしくねぇか?」

「はは、そんなことないと思いますよ。まだぼくは成人したてですし」

他の生活魔法使いの魔法がどの程度か知らないけれど、魔法の性能は一定ではなく、経験値獲得に伴って向上していくと言われているからね。

まぁ僕の場合、魔力量が他の人よりも ち(・) ょ(・) っ(・) と(・) 多いようなので、その分、性能も少し高いとは思う。

そうして非常に入り組んだ地下13階を進むこと、およそ一時間。

横穴が幾つもある広い空間を見回しながら、ゲインさんが言う。

「ようやく前回引き返した地点まで辿り着けたぜ。情報によれば、もう少しで次の階段があるはずなんだが……ギル、どの穴を進めばいい?」

「分かるわけねーだろーが。とりあえず端から順番に虱潰しだ」

冒険者の中には、まだ通過したことのない場所のマップが分かるような能力を持つ人もいるみたいだけれど、そうでないケースが大多数なので、こんなふうに地道に一つずつ実際に探索してルートを絞っていくしかないようだ。

結局、別れ道は全部で九つあり、七つ目でようやく正解ルートを引き当てて階段を発見するまで、二時間近くかかってしまった。

「ともあれ地下14階まで到達できたぞ。あの別れ道で少し手間取りはしたが、時間的にもまだまだ余裕がある。このまま探索を続けるぜ」

未知の領域である地下14階の探索を開始する。

出没する魔物は地下13階と大差ないものの、フロアの構造はより複雑さを増していて、ギルさんが何度も頭を掻き毟った。

「ちっ、また同じところに出ちまったか。となると、さっきの道に戻るしかないわけだな。ったく、もうちょっと来場者に親切な造りにしておいてくれってんだ!」

そんなふうにダンジョンに文句を言いながら、元の道へと引き返そうとしたときだった。

「グモオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

どこからともなく響いてきた雄叫びに、僕らは一斉に足を止めた。

「ちょっと、何よ、今の声は!?」

「魔物の咆哮? だが明らかに並みの魔物じゃねぇぞ……?」

「ゲイン、おれも同意見だ……危険度センサーがビンビン言ってやがる……。しかも恐らくそんなに遠くない場所だ……」

そのとき突然、シルアが叫んだ。

「っ……足音がっ……近づいてきてる……っ!」

彼女が明確に言葉を発したのは、僕の知る限りこれが初めてだった。

直後、僕の耳にもその音が聞き取れるようになる。

ドンドンドンドンドンッ!

さらに近づいてくる猛烈な振動。

やがて通路の向こうから、そいつが姿を現した。

「「「み、ミノタウロスっ!?」」」