軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第60話 ボコボコにしちゃって

捕まっていた人たちを連れて、ひとまず盗賊団の拠点を出た。

「多分もうすぐ近くの街から騎士か冒険者の応援が来ると思うんだけど……あ、あれかな? いや……ちょっと違うかも?」

応援を待っていると、向こうから見知らぬ一団が近づいてきた。

こちらを見て驚いた顔をしたのは、商人と思われる格好でありながら、盗賊たちと同じ匂いのする男だった。

「ど、どういうことだ? まさか、奴隷どもが脱走しているのかっ……?」

「もしかして奴隷商? ちょうどいいタイミングだね」

僕はその奴隷商らしき男に近づいていった。

「な、なんだ、お前はっ? どうやって脱走した! 盗賊たちはどこだっ?」

割と臆病な性格らしく、うわずった声で怒鳴りつけてくる。

「僕は冒険者。盗賊団なら壊滅させたよ」

「なっ……お、お前がやったのかっ!?」

「うん。それで、おじさんは奴隷商だよね? 新しい奴隷を仕入れにきたの?」

「お、おい、お前たちっ! あのガキから私を守れ……っ!」

こちらの質問には答えてくれなかったものの、まず間違いないだろう。

「「「……はい」」」

奴隷商の男に命じられ、前に出てきたのは五人の少年少女たちだった。

恐らく僕とあまり変わらない年齢だけれど、全員が人間にはない特徴を有していた。

犬や狼のような耳を持つ子が二人に、熊っぽい耳を持つ大柄な子が一人、そしてイノシシのような牙を持つ子が一人。

「……獣人?」

「そうだ! こいつらもガキだが、見ての通り獣人の奴隷だっ! それも私の護衛役に相応しい、高い戦闘能力を持ったやつばかりだぞっ!」

しかもよく見ると彼らの腕にはどこかで見たことのある、あの禍々しい紋様が刻まれていた。

「隷属魔法……」

黒魔法の中には、主人の命令を強制的に実行させることを可能にする魔法があった。

それが隷属魔法で、現在この国では禁忌の魔法とされている。

「ねぇ、君たち、もしその魔法から解放されたら、その男をどうしたい?」

「「「……?」」」

「当然、今までの鬱憤を晴らしたいよね」

僕の言葉を受けた獣人たちは、やはり日頃の恨みつらみがあるようで、奴隷商の男を睨みつけた。

「な、何だ、その顔は!? そんな反抗的な態度を取っていいのかっ!? お前たちは私の命令に背くことは絶対にできないのだぞ!?」

「ううん、できるよ? ぜひ寄ってたかってボコボコにしちゃって」

「お、おい、何を言っている……? 気でも触れたのか? こいつらの隷属魔法を解除するのは、魔法をかけた者にしかできないはずだぞ……?」

「〈汚れ落とし〉」

以前、シルアにかけられた奴隷魔法を消し去ったように、僕は〈汚れ落とし〉で彼らを忌まわしき隷属魔法から解放する。

「「「……っ!? 紋様が……消えた……?」」」

「ば、ば、馬鹿なっ!?」

「はい、これでもう命令に従わなくてよくなったね?」

「う、嘘だっ! そんなはずはないっ! おい、お前たち! 早くそのガキをやってしまえ!」

涙目で叫ぶ奴隷商だけれど、獣人たちはその場から動かなかった。

「……命令を聞いても……身体が拒否できる」

「本当に隷属魔法が解かれたのか……?」

「腕の紋様が消えているし、きっとそうに違いない!」

自由を取り戻したことにしばし感動してから、彼らは一斉に奴隷商の男へと視線を向ける。

「ま、待て……っ! そ、そんな真似をしていいと思っているのか!? わ、私の背後にはっ……と、途轍もなく恐ろしい組織がいるんだぞっ!? も、もし私に危害を加えたとしたらっ、ど、どうなるか分かっているんだろうな……っ!?」

奴隷商の男は必死に脅すも、獣人たちの怒りを抑えるには弱かった。

「や、やめろっ……やめてくれっ! お、お願いだっ……ひいいいいいいっ!?」

五人の獣人たちから寄ってたかって殴られ蹴られ、やがて奴隷商の男はボロ雑巾のように地面を転がる。

気絶しているものの、呼吸をしているので辛うじて生きているみたいだ。

僕は彼らに訊いた。

「まだまだ満足できないでしょ? 五人いるんだから、せめて五回くらいは半殺しにしないとね。〈痛み止め〉からの〈目覚まし〉」

「っ……わ、私は一体……?」

傷を回復させ、強制的に覚醒させると、奴隷商の男は何が起こったのか分からないという顔で起き上がった。

そのことに驚きつつも、獣人の少年少女たちは獰猛に笑った。

「「「……最高」」」

「ひいいいいいいいいいいいっ!?」

それから五回も半殺しにされた奴隷商の男は、殊勝な態度で反省を口にした。

「……も、もう……やめて、ください……お願い、します……もう二度と、阿漕な商売は、やりません……はい……ちゃんと出頭し……罪を償います……」

とそこへ、近くの街から派遣されてきた騎士たちが拠点にやってくる。

どうやらパイソンが逃げずにちゃんと報告してくれたらしい。

拘束された盗賊たちと奴隷商の男を前に、騎士たちが目を丸くして、

「え、これを君一人でやったのかい?」

「まさか、あのヒドラの牙を、たった一人で壊滅させてしまうなんて……」

「それにしても……そろって魂が抜けたようになっているんだが……何があったんだ?」

実は奴隷商の男だけでなく、盗賊たちも拘束した後に軽く痛めつけておいたのだ。

それですっかり従順になっているのである。

「あはは、まぁ細かいことは気にしないでください」