軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第50話 ちょっと考えごとしててさ

ルアは冒険者ギルドの受付嬢だ。

ここラモンの街には、この世界でも珍しく街の中にダンジョンがあるため、連日のように冒険者を志望する少年少女がやってくる。

ただ、冒険者になれるのは、たとえ見習いであっても十五歳から。

その日、彼女の担当する窓口にやってきたのは、十五歳にしては小柄で子供っぽい少年だった。

「あら、どうしたの、僕? もしかして何か依頼かな?」

「いえ、素材の買い取りをお願いしたくて」

依頼希望者と勘違いしてしまっても無理はないよね、と後から振り返っても思う。

「……失礼しました。見習いの冒険者さんでしたか」

「見習いじゃなくて、こう見えても正式な冒険者です」

しかも彼はDランク冒険者だった。

才能のある冒険者であっても、こんなに早く昇格するのは難しい。

二重の失態を犯し、人は見かけじゃないんだなと反省する彼女に、少年は旅の道中で倒したという大量の魔物の素材の買い取りを依頼してきた。

「一体どの街から来られたんですか?」

「アーゼルからです」

「アーゼル!? また随分と遠くから来たんですね……それならこの素材の数も納得です」

少年が窓口から去った後、ルアはふと思う。

「でも運が良かったよね。最近この街の近くの街道でトロールが頻繁に確認されていて、被害が出てるから……」

トロールは大型で、非常に凶悪な魔物だ。

いかに才能があっても、さすがにDランク冒険者一人では太刀打ちできないだろう。

すでに何体か討伐されているが、それでもまだ被害が続いていた。

いくつかのパーティがその原因を探っているところだが、もしかしたら近くにトロールの集落でもあるのかもしれなかった。

そのときすぐ隣の窓口に、どこか慌てた様子の四人組の冒険者がやってきた。

「報告だ。トロールの集落を発見した」

「えっ、本当ですか!?」

「ああ。間違いない。それも五十体を越える規模だ。上位種のドントロールもいた」

「なっ……す、すぐに討伐隊を結成しないといけませんね!? さらに増えたら、食糧を求めてこの街に攻め込んでくるかもしれません……っ!」

「いや、それが実は……群れが全滅していたんだ」

「……へ?」

「それもどの個体も、頭に小さな穴が開いて死んでいた。恐らくは魔力を凝縮して撃ち出し、ピンポイントで貫いたのだろう。そんな真似ができる魔法使いを俺は知らない。もしかしたら危険な魔物の仕業かもしれん」

話を聞いていたルアは、深刻な顔をしながら呟く。

「ドントロールもいる五十体もの集落が、街の近くに形成されてたなんて……。それが全滅してたのは朗報だけど、彼の言う通り危険な魔物の仕業だったとしたら……頭に穴が開いて死んでいたっていうのも不気味だし……ん? 頭に穴……? どこかで……」

脳裏に過ったのは、先ほどの少年が持ち込んできた魔物の素材。

どれもこれも頭に穴が開いていたのだ。

「……ま、まさかね?」

◇ ◇ ◇

窓口で素材を買い取ってもらった後、僕は依頼書が貼ってある掲示板のところに来ていた。

今は魔境に向かう旅の途中だし、この街で依頼を受ける気はないのだけれど、一応どういう依頼があるのか興味本位で見ておきたかったのだ。

その中に、トロールの頻出の原因を調査する依頼書を発見する。

「そういえば伝えるの忘れてた」

峡谷の底に発見したトロールの集落のことを思い出す。

すでに脅威は取り除いたけれど、戻って報告しておいた方がいいだろう。

依頼を受諾していたわけではないものの、もしかしたら報酬を得られるかもしれないし。

「あ、でも、なんか窓口が忙しそう?」

「おい、そこのお前」

「後にした方がいいかな? 今のうちに今日の宿でも探しておこうか」

「お前だよ、お前! 聞こえてないのか!?」

「……え?」

何やら怒鳴るような声が背後から聞こえてきて、振り返るとそこにいたのは僕とそう歳の変わらない少年だった。

後ろにはこれまた同じ年くらいの少女が二人。

「僕?」

「他にいないだろ! さっきからずっと呼びかけてるのによ!」

「ちょっと考えごとしててさ。それより君は誰? 僕に何の用?」

少年は胸を張って宣言した。

「おれの名はアルク! 将来、世界最強の冒険者になる男だ!」

後ろの少女たちが呆れたように呟く。

「また大きな声で……ほんと、恥ずかしいったらあらしないわ」

「うぅ……せ、先輩冒険者さんたちがこっち見てます……」

そんな二人の反応を余所に、アルクと名乗ったその少年は僕を指さして告げた。

「お前もおれたちと同じ十五歳だろ?」

「よく分かったね?」

「城門の衛兵と話してるところを聞いたからな!」

どこかで見た顔だなと思ってたけど、都市に入るときに見かけた気がする。

「お前、仲間がいないんだろ! 同じ駆け出し仲間のよしみだ! 特別におれのパーティに加えてやってもいいぞ!」

「遠慮するよ」

即答すると、まさか断られると思っていなかったのか、少年は「え?」という顔になって、

「何でだ!? お前、見たところ魔法使いだろっ? 魔法使いが一人でダンジョンに潜るなんて危険だぞ!」

「ご忠告ありがとう。でも生憎と今、パーティは探してないんだ」

「そう言わずに、いいだろ!? うちのパーティ、見ての通り魔法使いがいないんだ! 冒険者だった親父にパーティのバランスには気をつけろって口を酸っぱく言われてて、このメンバー構成じゃ気持ち悪くて仕方ないんだよ~っ!」

「そんなこと言われても……」

なんだか変な奴に絡まれてしまったなぁ。