軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第39話 エッチな指輪でござるか

ドラゴントレントは、トレント種なのに炎への高い耐性を持つらしい。

そのため〈火起こし〉で焼くという方法は却下された。

単に氷を溶かすだけになる恐れがあるしね。

「〈草刈り〉! 〈草刈り〉! 〈草刈り〉! 〈草刈り〉! 〈草刈り〉! 〈草刈り〉!」

結果、選ばれたのは、地道に〈草刈り〉でその身体を斬り刻んでいくという方法だった。

この〈草刈り〉だけれど、草判定されたものだけに効果があるため、氷越しにでもドラゴントレントにダメージを与えることができるのだ。

「完全にライル君だけの活躍でボスを倒してしまえそうですね……」

「さ、さすが、拙者の認めた男でござるな……っ!」

「がはははっ! とんでもない駆け出し冒険者がいたものだな!」

「……しかも当の本人にあまり自覚がないときている」

〈草刈り〉を使い続けること、三十分ほど。

「ふぅ、これで全身をバラバラにできたと思うんですが……」

――〈防犯〉を習得しました。

――〈害虫駆除〉を習得しました。

――〈暖房〉を習得しました。

「あ、魔法を覚えました! しかも三つも!」

どうやらボスが絶命し、膨大な経験値が入ってきたらしい。

「このボスの素材も高値で売れそうですよね? 氷を溶かして持って帰りますね。いま覚えたばかりの生活魔法が使えそうなので……〈暖房〉!」

〈暖房〉を使うと周囲の温度が瞬く間に上昇し、氷がどんどん溶けていく。

氷の中から出てきた分から、〈小物収納〉で亜空間に入れていった。

「あれだけ大量のトレントを入れておきながら、まだ入るのですか……」

「もうなんか怖くなってきたでござるよ……」

やがてすっかりボスの巨体が亜空間に収まった。

ボス部屋の奥には宝箱が出現していた。

ダンジョンを攻略して得られる攻略報酬である。

「また木の根が……なんて展開はないでござるよな……?」

「……安心しろ。今度は本物の宝箱だ」

先ほどの一件でユズリハさんが警戒する中、ピンファさんが蓋を開けた。

「これは……」

中に入っていたのは、リングが二重になっている小さな指輪だった。

シンプルなデザインだけれど、強い魔力が込められていることが分かる。

「まさか『叡智の指輪』ですか!?」

「えっ、エッチな指輪でござるか……?」

「違います。『叡智の指輪』です。その名の通り、装備した者の知能を高め、一説には並列思考をも可能にすると言われている神秘のアイテムです」

かなり希少なアイテムらしい。

さすがダンジョンの攻略報酬だ。

「じゃあ、頭の悪いユズリハさんが装備した方がいいかもしれないですね」

「確かに! 拙者の唯一の欠点である低い知能を補うことができれば、完璧な剣士になれ――って、酷くないでござるか!?」

僕の提案に、ユズリハさんが非難の声を上げる。

「そうですね。現状、ユズの頭の悪さはパーティにとって最大の穴。それを無くせるというのは非常に大きいです」

「……完全同意だ」

「二人まで!? 拙者どこまで残念なやつ認定されているのでござる!?」

「がはははっ! パーティを危険に晒したのだから言われても仕方あるまい!」

ゴルドンさんの核心を突いた一言に、さすがのユズリハさんも押し黙った。

「は、反省してるでござる……」

というわけで、ユズリハさんが装備する流れになりつつある中、リーゼさんが言った。

「ですが、このアイテムはライル君に装備してもらいましょう」

「え、僕ですか?」

「はい。『叡智の指輪』は、魔法使いが喉から出るほど欲しがる代物で、どう考えてもあなたが装備するのに相応しいアイテムです」

魔法の使用には、割と高い知能が求められる。

頭の中で魔法の術式を組み上げてから発動するためだ。

ゆえに『叡智の指輪』があれば、より早く魔法を発動できるようになるという。

「でも、僕は生活魔法使いですし……」

「生活魔法使いも魔法使いではあるでしょう? それに今回のダンジョン攻略における貢献度を考えても、ライルくんが持っておくべきと考えます。みんな、いかがでしょうか?」

「頭が良くなった感覚を味わってみたかったでござるが……異議なしでござる!」

「わしも異議なしである!」

「……右に同じだ」

こうして、僕が『叡智の指輪』を装備することになった。

恐る恐る指につけてみると、

「っ……なんだか、頭が少しすっきりしたような気がします」

「本当に賢くなったか試してみるでござるよ! 36+45+21は?」

「102です」

「早っ……ええと、36と45を足すと、72でござるから……それに21を足して……92で……あれれれ? くくくくっ、お主、間違えているでござるよ! その指輪、本当に効果あるのでござるか~?」

「いえ、102で合ってますよ。ユズ、自分で答えが分からない問題を出さないでください」

僕は苦笑しながら言った。

「というか、それくらいの計算なら元からすぐできましたけど……」

「今のがユズの出せる最高レベルの問題だったんですよ」

「……なるほど。大丈夫ですか? 今からでも『叡智の指輪』を付けなくていいですか?」