作品タイトル不明
第19話 どうせ僕は貧弱ですよ
〈修繕〉の生活魔法を使うことで、すべての建物が元通りになった。
我ながらとても頑張ったと思う。
「でも予想より早く終わったね。オークを全滅させて、経験値を稼いだお陰かな?」
経験値を獲得していくと、魔力量が増えたり、魔法の性能が上がったりするので、その効果かもしれない。
あるいは同じ魔法を使い続けたことで熟達し、魔力効率や性能が上がったのもあるだろう。
「ああ……俺たちのフェリオネアが……」
「あの忌まわしき魔物災害で、何もかもが失われたと思ったのに……」
「奇跡だ……」
復興隊の面々が涙を流しながら感動している。
ただ、街は元に戻っても、出ていった人たちはまだ戻ってきていない。
街はあるのに人がいないというゴーストタウン状態だ。
ゼファルさんたちの呼びかけで、かつての住人たちがちょっとずつ戻りつつあるそうだけど、まだまだ先は長そうだった。
「なにせ食べ物がねぇ」
「なるほど」
ゼファルさんの言葉に、僕は納得させられる。
「確かに家はあっても、十分な食料がないと戻ってこれないよね」
復興隊くらいの人数なら狩りや採集などで賄えるけれど、フェリオネアの全住民の胃袋を満たすとなると大規模な農地が必須だった。
「……僕が水攻めをしちゃったせいで、オーク肉は食べれないし」
オークの肉は豚肉そのもので、地域によっては当たり前に食べられていたりする。
あれだけいたので当分の食料にできたのだけど……。
「いや、そいつは仕方ねぇよ。まずはやつらを全滅させなけりゃ始まらなかったわけだしな。まぁ北の農地を地道に復活させるしかねぇだろう」
元々このフェリオネアの食料は、街の北側に広がる農地で生産されていたそうだ。
ただ、そこも魔物災害で荒らされた上に、長きにわたって放置されたせいで、今では雑草が生い茂って酷い有様だという。
一度様子を見に行ってみることになった。
「この辺りはすでに農地だったはずだ」
「あー、確かに酷い状態ですね」
「見てもどこからが農地なのか分からないわ」
この農地を再び作物が育つ環境に戻すには、途方もない労力が必要だろう。
「でも、覚えたてのこの魔法が使えると思う。ちょっと試してみますね。〈〈草刈り〉!」
新しい生活魔法を発動させると、僕の背丈に近い高さにまで伸びていた雑草が、一瞬で切り取られた。
「今なにをしたんだ!?」
「〈草刈り〉という生活魔法です。まさにこういうときのためにあるような魔法ですね」
僕は〈草刈り〉を連発し、どんどん雑草を排除していく。
ただ、刈った後の草はその場に残るため、膨大なそれを処理しなければならない。
「ついでに〈乾燥〉を使えば、処理が楽になるかな? 〈乾燥〉!」
〈乾燥〉を使うと、見る見るうちに草が萎れていき、最後は踏んだだけで粉々になるほどカラカラになってしまった。
これなら処理も簡単そうだね。
と、そんな感じで雑草を駆除しまくっていると。
雑草の陰から突然、何かが飛び出してくる。
「魔物!?」
巨大なカマキリの魔物、キラーマンティスだ。
左右に二本ずつ有した大振りの鎌を振り回しながら、飛びかかってきた。
「ライル!」
ガキガキガキガキンッ!
咄嗟に間に割り込んできたシルアが、すんでのところで鎌を弾き返してくれる。
「た、助かった……っ! ええっと……〈火起こし〉!」
「ちょっ、こんな場所で!?」
火柱がキラーマンティスを呑み込む。
巨大カマキリはそのまま絶命したけれど、周りは雑草だらけなわけで、当然のように火が飛び移って延焼し始めた。
「〈草刈り〉!」
慌てて周りの草を刈り、延焼を防ぐ。
「うん、〈火起こし〉を使うときは周辺環境を考慮しないとダメだね……」
「それより、今みたいに魔物が潜んでいると危ないわ。ライルは魔法は強力だけど、身体は貧弱だから、不意打ちを喰らったら一溜りもないわよ」
「……ど、どうせ僕は貧弱ですよー」
でもシルアの言う通り、この雑草の森の中には、他にも魔物が隠れていそうだ。
今のキラーマンティスのような昆虫系の魔物の生息地になっていてもおかしくない。
シルアが助けてくれたからよかったけど、何かしらの対策なしに〈草刈り〉を続けるのは危険だろう。
「……っと、そうだ。昆虫系の魔物が多いなら、もしかしたら〈虫よけ〉が効くかも?」
〈虫よけ〉も新しく覚えた生活魔法の一つ。
使えば害虫が寄ってこなくなる魔法だけれど……。
そうして〈虫よけ〉を自分にかけた、次の瞬間だった。
ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザッ!!
「え、何の音!?」
「見て! 魔物が勝手に逃げていくわ!」
周辺に潜んでいた昆虫系の魔物が、一斉にどこかへ行ってしまったようである。
「魔物の昆虫にも効果があるみたいだね」
「それにしても効きすぎじゃない……?」
どうやら百メートルくらいの範囲に近づくだけで、向こうから避けてくれるらしい。
お陰で魔物に襲われる危険性を大きく下げることができたのだった。