軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

8章 エルフの里へ  03

翌朝、俺たちはホーフェナ女史の家の前に集合した。

俺たち3人はいつものダンジョンに行くような格好で、すぐ使う荷物を背負い袋に入れている程度の旅装である。

一方のホーフェナ女史は大きめのバッグを背負い、薬草取りのときのような動きやすそうな格好でまとめている。手には頑丈そうな杖を持っているが、護身用の武器を兼ねているのだろう。

スフェーニア嬢は軽鎧に短弓を携えた狩人っぽいスタイルだ。腰に水晶のついた杖をさしているところからして魔法も使えるのだろう。やはり背には登山用ザックのような大きな袋を背負っている。

ただ大きめのマントの下に見える緑を基調とした服はやはり少し露出が多い気が……。ラーニもそうだが冒険者の女性はなにかそういう決まりでもあるのだろうか。

俺たち3人の軽めの装備を見てスフェーニア嬢が 怪訝(けげん) な顔をする。

「昨日申し上げたように里までは3日ほどかかります。軽装なようですが大丈夫でしょうか?」

「私が『アイテムボックス』持ちなので旅の用意はそちらにすべて入れてあります。不足なく用意はしてありますので問題ありません」

「そうですか。Dランクのパーティで『アイテムボックス』持ちは珍しいですね。うらやましく感じます」

ちなみにスフェーニア嬢はソロメインでCランクまで昇格したかなりの腕利きの冒険者らしい。見た目は少女だが、やはりエルフは見た目では判断できないのかもしれないな。

「ソウシさんは色々とできる冒険者さんなんですね。頼もしいです」

ホーフェナ女史がそんなことを言うが、こちらはまだ冒険者になって数か月のひよっこである。長旅は初めてだし、今回スフェーニア嬢がいるのは密かに心強い。

「では出発しましょう」

スフェーニア嬢の号令で、俺たち5人はエルフの里に向けて出発した。

先の話の通り、エルフの里までは徒歩で3日ほどかかるとのことであった。全員冒険者であれば走って時間短縮もできるが、今回はホーフェナ女史が一緒なのでそのような強行軍は不可能である。実は 背負子(しょいこ) を用意してあるので俺が背負って走るということも不可能ではないのだが、どうも走っていくこと自体あまり常識的な行為ではないようだ。

目的のエルフの里は、街道をひたすら東に進み、そこから峠を一つ越えた先にあるらしい。まずは街道を歩くだけなので一応感知スキルは働かせているが道中はのどかなものである。

「そういえばソウシ一人だけ男だね。ソウシとしてはラッキーじゃない?」

街道に出てすぐに、ラーニがそんなことを言ってきた。

「それは今さらだろう。それに女性が多い旅ってことはよからぬ奴も寄ってきそうだし、逆に気を張らないとならないしな」

「あ~、まあ確かにね。パッとみて美人と可愛い女の子しかいないし、逆にソウシが怪しまれたりして」

「ソウシさまは誰が見ても立派な方ですから大丈夫です」

意地悪い笑みを浮かべるラーニの横でフレイニルが真面目な顔でフォローをしてくれる。

その様子が面白かったのか、ホーフェナ女史がこちらを見て微笑んだ。

「この間も思いましたが、ソウシさんのパーティは不思議な組み合わせですよね。どのようにしてお知り合いになったんですか?」

ちらとみるとスフェーニア嬢も聞き耳を立てているようだ。そりゃまあおっさんと美少女二人パーティは怪しいよな。

それを知ってか知らずか、まっさきに答えたのはフレイニルだった。

「ソウシさまは冒険者になったばかりで困っていた私を無償で助けてくださったのです。ソウシさまがいらっしゃらなかったら私は今こうして冒険者をしていられなかったと思います。ですから私はソウシさまに一生ついていくと決めたんです」

「まあ情熱的! 運命の出会いみたいな感じなのかしらね。困っている人を助けてあげるなんてソウシさん優しいんですね」

ホーフェナ女史の笑顔には屈託がないのでいい方にとらえてくれているようだが、スフェーニア嬢はちょっと眉間に力が入ってる気がするな。

普通に考えたらフレイニルみたいな美少女をおっさんが助けるなんて下心ありありだと考えるのが当然だろう。フレイニルの言葉自体、いたいけな少女がダマされてるだけにしか聞こえないし。

おそらくそれを察知したラーニが俺を見ながらニヤニヤ笑っている。

「フレイはもう少し言葉を足さないと、ソウシが勘違いされるわよ?」

「勘違い? ソウシさまがすばらしい方だと言っただけですが?」

「フレイはそのつもりでも、聞く人によってはソウシがフレイをうまくだましてるように聞こえるから」

「そんな……そうなのですか?」

フレイニルが目を向けるとホーフェナ女史は「ソウシさんがいい人だって伝わってるから大丈夫よ」と言ってくれたのだが、スフェーニア嬢は恥ずかしそうに目を逸らしてしまった。

それを見てフレイニルは何か言おうとしたようだが、ラーニがそれを遮った。

「少し一緒にいれば分かってもらえるから大丈夫よ。それと私はソウシとフレイのパーティが気になって自分から入れてもらったの。結果として強くなれたから大正解だったのよね。ソウシはリーダーとしても信用できるし、フレイも強いしね」

「そうやってお知り合いになったんですね。この間見た時もすごく連携が取れているように思えましたし、きっといいパーティなんでしょうね」

ホーフェナ女史が頷いていると、スフェーニア嬢が咳ばらいをしながら口を開いた。

「ところでラーニさんは強くなれたとおっしゃっていましたが、ソウシさんたちは強さを求めていらっしゃるのですか? エルフの里にダンジョンがあるかどうかも気にしていらっしゃいましたが」

「そうですね。できることはすべてやって強くなることを目的にしています。ですのでスキルもできるだけ取得するようにしています」

「それは素晴らしい考えだと思います。冒険者もCランク以上は壁が厚く、そこで諦めてしまう人間も多いのですが……。私がしばらく組んでいたパーティも一度Dクラスダンジョンで危険な目にあってから私以外は上を諦めてしまいましたし」

「そうでしたか。しかしスフェーニアさんはくじけずに上を目指したのですからお強いのですね」

「ええまあ……。同族でAランクになった者もおりますので、私もそこは目指さないとなりませんので」

同族Aランクというのは『紅のアナトリア』のことだろう。なるほどそういうしがらみというか、こだわりみたいなものも種族によってはあるのか。

「ふぅん、でもそれならスフェーニアさん私たちのパーティに入るのはどう? 強くなれると思うよ」

ラーニがいきなり雑なスカウトを始めるので、俺はちょっと慌ててしまった。

リーダーの了承もなくというのもちょっとアレだが、それ以前にCランクの超絶美形エルフに声をかけるあたりが怖いもの知らず過ぎる。まあラーニはそういうの気にしなさそうではあるが。

「すみません、ラーニが勝手なことを……」と俺が謝ろうとすると、スフェーニア嬢は気分を害した風もなく聞き返してきた。

「強くなれるというのはなにか根拠があるのでしょうか?」

「ソウシの考えたトレーニングをするだけでも強くなれるし、私たちほぼ毎日ダンジョンに潜ってるしね。だからスキルもいっぱい取れるし、その上……っとこれは秘密かな。パーティに入ればすぐ分かると思うけどねっ」

またこの娘は思わせぶりなことを……。余計怪しまれるだけだろうと思ったが、スフェーニア嬢は目を細めて、少しだけ興味をあるそぶりを見せた。

「この旅でソウシさんのパーティのことを見てから考えてもよろしいでしょうか?」

「え? ええ、もちろんそれが普通だと思いますので。いやなにか申し訳ありません、突然変なことを申し上げまして」

と謝っているとラーニがつんつんと突いてきた。見るとなぜかドヤ顔でサムズアップをしている。

「これで4人目も確定ね。どうせソウシは自分からスカウトしないだろうし、ちょうどよかったでしょ?」

「そういうことするなら一応はパーティに確認とるものだぞ」

「あ、ごめん。でもスフェーニアさんはウチのパーティにピッタリだと思ったからつい……」

注意をすると理解はしてくれたようだからそこはよしとする。彼女はまだ15歳の少女なのだから多少先走るのはしかたない。

「確かにちょうど足りない部分を補い合えそうではあるけどな」

スフェーニア嬢は見た感じ弓と魔法を使う中~長距離専門の冒険者だろう。ウチは前衛が2人、どちらかというと補助メインの後衛が1人だから、攻撃メインの後衛が入ってくれるのがベストなのは確かである。

「でしょ。それに上を目指してるなら完璧じゃない? フレイもそう思うよね?」

「えっ? あ、はい、そうですね。スフェーニアさんはすごくきれいな方ですし」

いきなり話をふられてよく分からないことを口走るフレイニル。しかし言われてみれば、これでもしスフェーニア嬢が入ったら、おっさん+超絶美少女3人とかいう死ぬほど目立つパーティになる気が……今さらと言えば今さらか。

「うふふっ、楽しい旅になりそうですね」

ホーフェナ女史がそんなことを言って、とりあえずエルフ少女スカウトの話はいったんそこまでとなった。