軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

8章 エルフの里へ  02

翌日午前、ギルド前でマリアネと合流すると、俺たちはホーフェナ女史がいる薬房へと向かった。

ホーフェナ女史が営む薬房は一見普通の家に見えたが、案内されて中に入ると漢方薬に似た香りが充満しておりいかにも薬を扱う場所といった感じをかもし出していた。

応接室のような部屋でマリアネと俺たち3人、そしてお茶を運んできてくれたホーフェナ女史がテーブルにつく。気配感知によるとこの家にはほかにもう一人誰かいるようだ。家族か助手というところだろうか。

皆に茶が行き渡ると、白衣姿のエルフ美人・ホーフェナ女史が待ちきれないといった感じで口を開いた。

「さっそく依頼を受けていただいてありがとうございます。それで成果の方はいかがだったのでしょうか?」

「こちらになります、お確かめください」

マリアネが大きなバッグからラビットの角をテーブルに並べていく。バイコーンラビットの角がその最後に並べられるとホーフェナ女史は目を輝かせて両手を広げた。

「すごい! 素晴らしいです! 貴重な角がこんなに! しかもバイコーンラビットまで! ソウシさんのパーティを指名して正解でしたっ!」

俺の手を取って、今にも踊り出す勢いのホーフェナ女史。こんなに喜んでもらえるなら冒険者冥利に尽きる……のだろうか。

マリアネはこほんと咳ばらいをすると、顔を赤くしたホーフェナ女史が椅子に座るのを見計らって言葉を続けた。

「こちらはすべて所定の金額にてお引き取りをお願いいたします。それと今回依頼を受けたソウシの方からお願いがございます。このお願いはギルドとしてのお願いでもありますので、ぜひご了承いただきたいと思います」

「はあ……? 分かりました。なんでしょうか?」

キョトンとした顔のホーフェナ女史だったが、俺が真面目な顔をしてみせると居ずまいを正してくれた。

「お願いというのは、ラビットの角を採取したのが私たちのパーティだということを秘密にしていただきたいということです」

「秘密に……なぜでしょうか?」

「私たちがラビットの角を簡単に採取できるということが知られれば、色々と不都合が生じるからです」

「不都合……」

ホーフェナ女史はしばし目を伏せ、それから再び目を俺の方に向けた。

「例えば依頼が殺到するとか、採取できる秘密を他の冒険者さんに探られるとか、そんな感じでしょうか?」

「ええ、まさにそんな感じですね。そういったことが生じた場合、今後ホーフェナさんの依頼を受けることもできなくなります」

という言い分がこちらの切り札だが、思った通りかなり効果があったようで、ホーフェナ女史は慌てたように頷いた。

「わかりました、絶対に口外はいたしません。私も商売をしている身ですから、他の方の商売を台無しにする気はありません」

「ありがとうございます。話はそれだけです。今後ともよろしくお願いいたします」

ということで、この件については問題はないだろう。ホーフェナ女史が黙っていてもそのうち俺たちの特殊性は知れてしまうかもしれないが、そのころは別の土地に移っているはずだ。

「では、また私の依頼を受けてもらうことはできるんですよね?」

「ええもちろん。ただあまり頻繁には受けられませんが」

「もちろんそれで結構です。ただ今日はここにマリアネさんもいらっしゃいますし、新たにソウシさんのパーティに依頼をしたいのです。今回は採取ではなくエルフの里までの護衛依頼なのですが……」

「護衛依頼ですか?」

また急な話が持ち上がってきたものである。

フレイニルとラーニをちらりと見ると、どうやら2人とも興味を持った様子だ。まあ俺としても『エルフの里』とやらはかなり興味をひかれる話である。ファンタジーのお約束でもあるし。

マリアネも特に止めないので続きを聞くことにする。

「お話をうかがいましょう」

「ありがとうございます。その前に一人紹介をしないとならない方がいらっしゃいますのでお待ちください」

そう言うとホーフェナ女史は部屋を出ていき、しばらくして一人の女性を連れて戻ってきた。

「こちらは里からいらっしゃった冒険者のスフェーニアさんです。実は今回ラビットの角をお願いしたのも彼女の依頼がもとになっているのです」

「私はスフェーニア、エルフの奥里、アードルフの冒険者です。この度は協力いただき感謝いたします」

ホーフェナ女史の紹介を受けて 慇懃(いんぎん) に挨拶をしたその女性は、輝くほどの銀の髪をポニーテールにまとめた、美形が多いといわれるエルフの中でもとりわけ美しいのではないかと思われる、精緻な人形のような美少女であった。

ホーフェナ女史とスフェーニア嬢の説明によると、どうやらとあるエルフの里で疫病が発生したらしい。

スフェーニア嬢はその里の依頼で、薬師のホーフェナ女史のところに疫病に効く薬を作ってもらいに来たのだそうだ。

で、薬の製作にはラビットの角が必要ということで俺たちに今回の依頼が来たわけだ。

「ソウシさんのパーティのおかげで材料は揃ったのですけれど、薬の調合は症状を見て行わないとならないんです。ですので私もその里に行かなければならないんですが、途中危険な場所もあって……。そこで信用できる冒険者さんに護衛をお願いしたいんです」

というのがホーフェナ女史が護衛依頼を出す理由であった。

「お話は分かりました。ところでつかぬことをうかがいますが、エルフの里はエルフ族以外の者が行っても問題はないのでしょうか?」

俺のその質問にはスフェーニア嬢が答えた。

「確かにエルフ族以外の者を 忌避(きひ) する里もありますが、これから向かう里はそのような場所ではございません」

「その里の近くにダンジョンはありますか?」

「はい。FからDクラスのダンジョンが一つずつございます。もちろん入ることも可能です」

それなら行ってみる価値は大いにありそうだ。

フレイニルとラーニに確認を取ると「ソウシさまに従います」「エルフの里にも興味あるし行きたい」とのことで即決となった。

「分かりました、お受けします」

「よかった。よろしくお願いしますね」

ホーフェナ女史がホッとした顔になり、スフェーニア嬢と頷き合っている。

「それではここで手続きをしてしまいましょう」

マリアネの隙のない事務処理により、明日朝出発ということで話がまとまった。今日は長旅の用意をする日になりそうだな。『アイテムボックス』が手に入った後で助かった。このあたりも『悪運』さまさまだ。