軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18章 帝都 ~武闘大会~  47

大型天使スケルトンと冒険者たちの間では、すでに戦いが始まっていた。

『ソールの導き』のメンバーとマリシエール殿下もそこに参加している。いくつもの魔法がスケルトンに向かって放たれ、前衛型の冒険者はスケルトンの足へ攻撃を仕掛けている。飛翔する槍はソミュール女史のものか。『ポーラードレイク』のジェイズが大剣を振るっているのも見えた。

しかしどうやら各自楽勝とはいかないようだ。フレイニルの『後光』で弱ってはいるはずだが、天使スケルトンは想像以上に強敵らしい。

俺も目の前に迫ってくる1体に向かって歩いていく。巨大な剣が振り下ろされるが、それは『不動不倒の城壁』で難なく受け止められる。マリシエール殿下の剣撃に匹敵するほどの強烈な一撃ではあるが、逆に言えば、身長が5メートルあっても同等の威力しか出せないということになる。

『万物を均すもの』を振り上げる。天使スケルトンの上半身を狙って放たれた『衝撃波』は巨大な丸盾に防がれたが、その盾ごと腰から上の骨を粉々に打ち砕いた。

「……なるほど、見えないなにかに守られている感じがあるな」

攻撃の手応えから、俺はそう判断する。

どうやら天使スケルトンは、その身体に透明な魔法の鎧のようなものをまとっているようだ。今マリシエール殿下が膝に一撃を加えたが、確かになにかに阻まれて十分なダメージを与えられていない。

「ソウシ、こっちもお願い!」

ラーニが巨大な刃を跳躍で回避しながら叫ぶ。一人で一体をひきつけていたようだ。

そちらにも『衝撃波』を飛ばし、スケルトンの上半身を粉砕する。

「ソウシの一撃を見ると自信なくしそう」

と笑って冗談を言いながら、ラーニはシズナやサクラヒメたちの方へと応援に向かった。

その間に1体のスケルトンが、足を切断されて倒れ込んだ。やったのはジェイズか。さすがグランドマスターの信が篤い冒険者だ。

もう一体が魔法の集中攻撃で頭部を失った。こっちはスフェーニアとゲシューラだ。

遅れてもう一体の頭部が、ソミュール女史の投げ槍に貫かれて砕け散る。

カルマとサクラヒメも一体を仕留めにかかっている。こっちも問題はないだろう。

俺はそのまま走っていって、『衝撃波』で天使スケルトンを粉砕して回った。乱戦に近い状態だが、スケルトンの身長が高いおかげで『衝撃波』が使いやすいというのが皮肉だった。

俺が8体目を始末したところで、残るは5体ほどになった。怪我を負った冒険者もいたが、フレイニルが後方で『生命魔法』を『範囲拡大』で使用していて全員がまだ健在のようだ。このままなら大勢は決したと言えるが、チラと見るとイスナーニが再び杖をかざそうとしていた。

「まさか『スカルエンジェルレギオン』がこれほど 容易(たやす) くやられるとは。だが貴様だけは死体にしてやらねば気が済まぬ」

「お断りだ。マリアネ!」

「お任せを」

「なに!?」

『隠密』スキルでイスナーニの背後に回っていたマリアネが、短剣『龍尾断ち』を一閃させる。

驚愕の表情を浮かべたファルクラム侯爵の顔――イスナーニの首が飛び、断面からは青いどろりとした液体が流れ出た。

「クヒャッ、ぬかったか。だがこれはこれで予定通り。この身体には多少の仕掛けがしてあるゆえなァッ!」

イスナーニの身体が崩れて、青い液体の水たまりのようになった。そしてその青い水たまりの中に、魔法陣のような文様が浮かび上がった。

「またなにか来るぞっ!」

俺が叫ぶと同時に、水たまりの上、地上3メートルほどのところに黒い楕円が現れた。『アイテムボックス』を開いた時に現れる、別空間への穴に似たなにかだ。

そして俺は、その『なにか』に強烈な見覚えがあった。

「ソウシさま、これはまさか!?」

「間違いなく『異界の門』だな。全員離れろ!」

近づいて来ようとしたフレイニルを制し、俺自身も後ろに下がった。目の前に生じたそれは、『悪魔』の世界に通じる『異界の門』に間違いなかった。

残り1体になっていた天使スケルトンを倒し、マリシエール殿下が走ってくる。

「オクノ伯爵様、これはいったい何でしょうか?」

「これは『異界の門』、『悪魔』が住む世界に通じる通路です」

「『異界の門』、そういえばグランドマスターがおっしゃっていましたわね。ということは、あの異形のモンスターがここから?」

「そうです。奴らはこの『異界の門』を通ってこちらの世界に現れます。しかしまさか『冥府の燭台』が関係するとは知りませんでした」

「恐ろしいお話になりそうですわね。しかしまずは、ここから現れるであろう『悪魔』を倒すことが先ですわ」

「その通りでしょう」

『ソールの導き』のメンバーも、俺の周りに集まってきた。全員が見守る中で、『異界の門』は、徐々にその大きさを広げていく。

「クヒャヒャッ! 成功だ成功だ、我らの手によって、冥府への扉を開くことに成功した! これで『迷い姫』様をお迎えする時がずいと近づいた! クヒャヒャ、実験を仕込んでおいて正解であったわ!」

その声は、床に落ちたイスナーニの生首のものだった。気にしていなかったが、首だけはまだ形を保っていたらしい。

「本来の目的は達せられなんだが、これが成功したなら文句はない! さあ、ここから出づる『悪魔』は手ごわいぞ。なにしろ数多くの命と引き換えにしておるからなあ!」

「このっ、うるさいわよっ!」

胸糞が悪くなりそうなことをしゃべる生首を、ラーニが思い切り蹴飛ばした。「クヒョ!?」という声を残して、ひしゃげた生首が場外へ飛んでいく。

舞台の中央で広がり続ける『異界の門』は、高さが20メートル、幅が10メートルほどに達するとそこで広がるのをやめた。

「なにか……出てきますわね」

マリシエール殿下が剣を構えなおす。

その時、『異界の門』からいきなり巨大な顔が飛び出して来た。その顔の後ろにはタンクローリーほどの異形の身体、そして身体の下には無数の人間の足、何度も見ている暴走悪魔だ。

俺は咄嗟に『不動不倒の城壁』を構え、『誘引』スキルを発動する。

「お任せくださいませ」

しかしなんと俺の前にマリシエール殿下が立ち、暴走悪魔の前で『運命を囁くもの』を一振りした。

刃に触れた瞬間巨大な暴走悪魔はするっと上に飛び上がるように一回転しつつ俺たちを飛び越え、後ろの地面に顔面から落下した。

自重で首が折れたらしく、暴走悪魔は倒れて全身を痙攣させている。そこをラーニやカルマ、サクラヒメたちが向かっていって止めをさす。

暴走悪魔はその後さらに2体連続で現れたが、すべて1体目と同じ末路を辿った。さすが帝国最強の冒険者というべきか。

問題は、暴走悪魔と同時に、多数の小型悪魔が現れたことだ。人間の身体に二つの頭を持ち、手足の代わりに羽の生えた飛行型、同じく二つの頭に6本の足をそなえた虫型などがわらわらと飛び出し這い出してくる。

その数は100体を超え、周囲の冒険者たちのほうへと広がっていく。