軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ガルツ山の秘密

エルグランダーク公爵家が 治(おさ) めているネルグランディ領は、リムートブレイク王国の東端に位置している。

領地はとても広大で、その大半が穀物農地だ。

隣国サイリユウムとの間には大きな川が流れており、その支流や運河から流れる豊富な水が農地を支え、設置された水車の動力で脱穀から粉挽きをすることで、加工品としての出荷も可能にしていた。

国境と接する領地ということで、ネルグランディ領には騎士団を持つことが許されているが、隣国サイリユウムとは友好国では無いものの敵対国でもないため、今のところ争いはない。

では、ネルグランディ領騎士団は暇なのかと言えばそうでもなかった。

領地が広大であるために村々の自警団でまかなうのがむずかしい部分を騎士団がフォローしていたり、災害が起こった際の復旧工事などの土木作業にも騎士団員達は駆り出されていた。

普段から訓練を行って鍛えられた肉体と、指揮系統のしっかりした行動力はそういった活動にも大変役に立つ。

もとより、領騎士団には地元の農民出身の騎士が多いので、そういった地域活動に積極的に参加するものは多いのだ。

そうしてもう一つ、ネルグランディ領騎士団には重要な任務がまかされている。

魔獣の討伐である。

広大なネルグランディ領の南西の地域にガルツ山という魔獣の巣窟となっている山があり、その封じ込めと駆除が騎士団の役割となっているのだ。

「ハッ!」

短く発された気合いとともに細い剣が突き出され、黒く捩れた角を持つコウモリの急所を突き刺した。

ディアーナはそのまま剣を後方へと勢いよく振り抜き、勢いでコウモリの魔獣を剣から振り落とす。

「ディアーナ格好いいぃいいいいい!」

「私の孫が素敵」

カインが叫びながら風魔法を放ち、ディアーナの背後に迫っていた魔狼の足をすくって転ばせ、カインと同時にささやくようにつぶやいたヴァレリアが数十本ほどの炎の矢を発生させ、多方向へと飛ばして空中に浮かぶ魔獣達を燃やし尽くした。

「私のヴァレたんはやっぱり最強!」

「はあぁぁあん。大魔法使い様の魔法ぅ~。この目で見られるなんてぇ~」

ニキアスとティルノーアが目をハートにしてヴァレリアの魔法をうっとりと見つめていた。

随行していた騎士達は、剣を抜いたものの獲物が全てエルグランダーク家の人間に倒されてしまい、手持ち無沙汰になってしまっていた。

カイン達は、突然現れた曾祖父母たちとお茶を一服してすぐにガルツ山へとやってきた。

ニキアスが「確かめたいことがあって戻ってきた」とエクスマクスに言えば、「わかりました」といってすぐに頷き、魔獣討伐用の部隊が編成されたのだった。

ニキアスがディアーナとカインを連れていくと言い出したときにはさすがに猛反対したが、祖父母であるニキアスとヴァレリアには逆らえず、できる限りの最強部隊を編成し、治癒魔法持ちの魔法騎士も付けたうえで送り出してくれていた。

「ガルツ山は魔獣が多いという話は聞いていましたが、ここまでとは思っていませんでした」

「私も、ひ孫たちがこんなにできる子だとは思っていなかったよ」

「おばあちゃまの使う魔法は、お父様の魔法に似ていますね。あの炎の矢を飛ばす魔法は見たことがあります」

「ヴァレたんは格好いいからな。小さい頃のディはおばあちゃまっ子だったのだ」

ニキアスの言葉に、カインが苦笑する。

どうも、ニキアスとヴァレリアはディスマイヤの事を『ディ』と呼んでいたようで、幼い頃のディアーナの愛称と被るのだ。

カインはついついディアーナの事を言われているのかと思ってしまい、違うんだったと自己否定するのを繰り返していた。

「ジュリアン様とジャンルーカ様も連れてきて良かったんですか?」

カインがニキアスと会話をしつつ無詠唱で氷魔法を飛ばし、ディアーナの前に飛び出そうとしていた牙タヌキの足をすくって転ばせる。体勢を崩した牙タヌキは、ディアーナによって切り払われていた。

「むしろ、あの遊びの場にサイリユウムの王子たちがいたからガルツ山に来ることにしたのだ」

「?」

ニキアスはチラリと視線を後方にながし、最後尾近くを歩いているジュリアンとジャンルーカの姿を確認した。

ジュリアンとジャンルーカは、ハッセとティルノーアとネルグランディ騎士団に守られるように囲まれながら歩いていた。

ジュリアンは森の中を興味深そうに見渡し、ジャンルーカは戦いに参加せずに守られていることに居心地の悪さを感じているように眉尻を下げてあるいていた。

魔獣を倒しながら二時間ほど山を登っていくと、木々がまばらになり空と麦穂が揺れる麦畑が時々見える様になってきた。

もうすぐ頂上が近いという場所まで来ると簡素な小屋の様な物があらわれ、その前に二人の大柄な人物が立っていた。

「御前!」

「大奥様!」

二人の人物は、ネルグランディ領騎士団第三部隊の隊員であると所属をあかし、ニキアスとヴァレリアに頭を垂れた。

領城や王都の屋敷には寄り付きもしない曾祖父母は、このガルツ山の監視小屋にはちょこちょこ訪れているようである。

「カイン、ディアーナ。そして、サイリユウムの第一王子殿下。本日はこちらをご覧頂きたくおつれしました」

監視小屋の後ろにある階段状の山道をもう少しだけのぼると、ニキアスは体をズラして後続のメンバーの視界から退き、広場のようになっている山の頂上を手で指し示した。

「これは……」

ジュリアンが絶句する。

ガルツ山の頂上には、丸の中に星形の図形が収められた形の魔法陣が描かれていたのだ。