軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

191.ペオニー攻略戦 その9

大量のレベルアップを告げるアナウンス。

ステータスに刻まれた大量のSPとJP。

改めて俺たちが戦ったのが規格外の相手だったと思わされる。

「……でも勝った。勝てたんだ……」

ようやくその実感が湧いてくる。

拳を握り、笑みを浮かべる。

でも喜んでばかりもいられない。

まだ西野君たちは戦っている。

『安全地帯』の再設定が残ってる。

それが完了して、初めて俺たちの勝利だ。

「モモ、時計を出してくれ」

「わんっ」

モモの『影』から時計を取り出す。

俺のアイテムボックスは保存機能のせいで正確な時間が計れない。強力になった反面、こういうことに関してはデメリットといえば、ある意味デメリットか。

(現在の時刻は……十一時四十五分)

この市役所を放棄したのが確か十一時。

『安全地帯』の再設定まで残り十五分か……。

次にメール画面を見る。

一人ずつ名前を確認する。……全員載ってる。

(大丈夫だ、まだ生きてる。まだ誰も死んでいない)

キキの支援魔法は発動している。

これがなければ、名前が消えても気づかない可能性もあった。

キキに感謝しないとな。

「……行こう」

フラフラになりながらも、俺は立ち上がる。

新しく取得した固有スキル、大量のポイント、質問権の解除、それにペオニーの残した種子。

気になることは山ほどあるが、でもまずは新しい『安全地帯』を手に入れてからだ。

でも、

「あ……あれ……?」

マズい、視界がぼやける。

スキルの反動、激痛、疲労、出血。

それらが体に一気に押し寄せてきた。

マズい……正直、立ってるのも限界だ。

「わ、わんっ! わんわんっ」

モモが心配そうにこちらを見つめてくる。

むちゃしないで! と言っているようだ。

「はは、ごめんな、モモ……。でも行かなきゃ……。早く『影』を広げてくれ」

「……くぅーん?」

だいじょうぶ? ほんとうに?

心配そうに見つめるモモに、俺は精一杯の笑みを浮かべる。

問題ないと、モモの頭をやさしく撫でる。

さあ、気合を入れないとな。

もうちょっとだけ、頑張らないと。

そう思い、立ち上がり、前を見た。

――誰かが居た。

「――随分、ボロボロだね」

『ソイツ』は普通に歩いてきた。

目の前の道の向こうから、真っ直ぐに。

「お前は……」

その顔には見覚えがあった。

忘れるはずなどない。

四日前にも、俺はソイツと顔を合わせている。

人の姿でありながら、人とは全く異なる気配の持ち主。

大野君と同じゾンビの気配を持ち、だが大野君のように人がモンスターになったわけではない。

この世界で最初に人を殺し、知性とスキルを得たのだと、ソイツは言った。

「やあ、久しぶりだね、『早熟』の所有者さん」

最悪のタイミングで、最悪のモンスターが姿を現した。

時間は少し遡る。

カズトがペオニーの根元に辿り着き、木偶人形と死闘を繰り広げていた頃、

西野たちもまた、『豊穣喰ライ』との戦闘を続けていた。

残った数はたった一匹。

だが、その一匹が問題だった。

「喰ワセロオォォォオオオオオオッッ!」

『豊穣喰ライ』は無数に開いた口から舌を伸ばし、西野たちを攻撃する。

「畜生、なんだよ、こいつは!」

「急にでっかくなるなんて反則だよー!」

悪態をつきながら、必死に攻撃を躱す柴田と六花。

彼らが戦っているのは、巨大化した『豊穣喰ライ』だった。

たった一匹だが、その戦闘能力は今までの『豊穣喰ライ』の比ではない。

無数の舌による攻撃に、彼らは徐々に疲弊し、追い詰められていった。

「ハァ……ハァ……これ、おにーさんじゃないと、どうにもならないんじゃない?」

六花の予想は正しい。

事実、カズトは巨大化した『豊穣喰ライ』を片手間で封殺している。

カズトは『豊穣喰ライ』の合体巨大化を悪手だと判断したが、西野たちにとってはそれでも十分な脅威であった。

「弱音を吐くな、六花。クドウさんは、俺たちよりもずっと厳しい戦場に居るんだぞ? この程度、俺たちで何とかするんだ」

「分かってるよぅ……」

六花を叱咤する西野だが、彼も内心では焦っていた。

このままではマズいと。

触れたモノを腐らせる毒を持つ『豊穣喰ライ』に対し、西野たちは攻めあぐねていた。

(決め手に欠ける……)

西野たちにはカズトのような強力な遠距離攻撃手段がなかった。

通常サイズであれば、五所川原の丸太や六花の投擲で何とかなったが、あのサイズでは致命傷には至らない。

(せめて一之瀬がいてくれたら……)

そう思わずにはいられなかった。

彼女の化け物ライフルであれば、あの巨体であっても仕留める事が出来ただろう。

だが、彼女は既に戦線を離脱している。

ペオニーに爆弾を仕掛けるために、限界を超えて化け物ライフルを使い続けたからだ。そして彼女以外に、あの化け物ライフルを扱える者は居ない。

こんな時に、と西野は一瞬思うが、すぐに首を振る。

馬鹿か。彼女は自分の仕事を完璧にやり遂げたのだ。自分達の役割すら満足に果たせない自分達が、どうして彼女を責められる?

(考えろ……。軍用ヘリも戦車も無い。アイテムボックスに収納できない武器は全て市役所に放置してきた……)

アイテムボックスの所有者たちは、ヘリや戦車を収納できるほどレベルは高くなかった。

というより、大きさ、量を問わずあれだけの数を収納出来るカズトの方が異常なのだ。

それに銃火器の類もない。ペオニーに殆ど使ってしまったし、持ってこれたのは最低限の物資のみだ。

(思い出せ……他に何かなかったか? 利用できる地形は? 何か……何か……ッ!)

脳をフル稼働させ、西野はふと思い出した。

「……そうだ。もしかしたら、アレなら……」

起死回生の一手。

即座に彼は動いた。

「六花! 皆と一緒に二分時間を稼いでくれ!」

「了解!」

仲間に指示を出し、彼はすぐに建物の入口へと向かう。

「確かこの辺だったはず……!」

周囲を見回し、目的の物を探す。

幸いにして目的の物はすぐに見つかった。

「あった!」

西野はそれを抱え、すぐに走った。

「六花!」

叫ぶと同時に、手に抱えたそれを彼女目掛けて投げる。

「ソレをヤツの口へ投げろッ!」

「んっ!」

六花は手に持った鉈を捨て、西野から投げられたそれをキャッチする。

それは石だった。漬物石という表現がぴったりの大きな石だ。

「これって――そっか!」

その石を手に持った瞬間、彼女もすぐに西野の意図を理解した。

大きく振りかぶって、手に持ったそれを『豊穣喰ライ』の口へと投げつけた。

「ぬおりゃあああああああああああ!」

「ギギ?」

ぱくり、と。

反射的にそれを飲む込む『豊穣喰ライ』。

「よしっ! 全員その場から離れろ! ソイツから距離を取れ!」

即座に西野は撤退を指示。

柴田たちはすぐに後退する。

「ギギッ!」

逃がすまいと、『豊穣喰ライ』も追撃を仕掛けようとする。

だが、次の瞬間、その体がボコボコッと膨張した。

「ギ……ギァ……?」

それだけでは終わらない。

ボフンッ! と無数に開いた口から黒煙と大量の『熱』が吐き出される。

「ギァ……ギャアアアアアアアアアッッ!」

余程の激痛だったのか、『豊穣喰ライ』は悲鳴を上げながら、ゴムまりのようにその場を転げまわる。

「こ、これって……? 西野さん、一体何をアイツに食わせたんですか? あれってただの石にしか見えませんでしたけど?」

「ああ、石だよ……。ただし、ここに『 座標(ポイント) 』として設置された、アカが擬態した石だ」

「あっ――」

それでようやく柴田も気付いたらしい。

そう、西野は石に擬態したアカを、『豊穣喰ライ』へ投げつけ、体内で再度『爆弾』に擬態してもらったのだ。

本来は移動用に設置された『 座標(ポイント) 』だが、今は緊急時だ。西野はこれを消費することを決断した。

「ペオニーにも同じ作戦でダメージを与える事が出来たからな……。上手くいってよかった」

「流石っすね……。よくあの一瞬でそんな手を……」

「別に大したことじゃない。それよりも、早く奴に止めを刺すぞ。全員、持ってる武器をありったけ奴に投げつけろ! 間違っても近づくんじゃないぞ!」

「うっす」

「りょーかい!」

「「「オオオオオオオオオオオッ!」」」

西野の機転により戦況は完全に逆転した。

アカの爆弾によって、大ダメージを受けた『豊穣喰ライ』はもはや虫の息であった。

そこに彼らは一斉に投擲を開始。

少しずつ体を傷つけられ、遂に『豊穣喰ライ』は息絶えたのである。

「うおおおおおおおお! 勝った! 勝ったぞ!」

「やった! やったぜー!」

最後の一体を倒したことにより、どっと勝ちどきが上がる。

残り時間まで防衛を維持する必要はあるが、それでも作戦はほぼ達成されたも同然だ。

湧き上がる笑顔と歓喜の声。

西野も思わず拳を握りしめる。

(よし……残り時間はあと三十分。みんな疲弊してるが、これなら十分耐えられる)

流石にあのサイズの『豊穣喰ライ』が再び現れれば厳しいだろうが、周囲にモンスターの姿はなく、気配を殺して隠れている様子もない。

勝ったのだ。

自分達は、賭けに勝った。

(そうだ。クドウさんにも連絡を――)

作戦が予定通りに進行してれば、今頃はペオニーを倒している頃だ。

向こうの状況が気になる。

メールをしようと、ステータスを開いた――その瞬間、

「―――ルォォ……」

「え……?」

ボコボコと。

目の前の地面が膨れ上がった。

「な、なんだ……?」

「嘘……アレって……」

その光景に誰もが驚愕した。

忘れるはずもない。

その存在は、彼らにとってトラウマそのものなのだから。

「なんで……どうして、このタイミングでコイツが……?」

せり上がった地面は、やがて固まり、巨大な人型を形成する。

それは『安全地帯』という絶対領域を力技で覆そうとした異形の存在。

――ゴーレムだった。

「ルォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!」

かつて市役所を蹂躙した異形の存在。

その姿に誰もが戦慄した。

「ッ――『全員、散開! 固まるな! 距離を取ってヤツを取り囲め!』」

それでも、即座に動けた西野は流石であった。

スキルを込めた指示によって、その場で固まった仲間を強制的に動かし、散開させる。

固まっていてはいい的だ。

(あれは――間違いない。六花たちの報告にあったゴーレム……!)

四日前、六花たちは探索中にゾンビ化した大野を発見し、更にティタンと同種のゴーレムと、それを従えた謎の知性ゾンビに遭遇したと聞いていた。

もしかしたら、戦闘の途中で乱入してくるかもしれないという懸念はあった。

(だが、よりにもよってこのタイミングで――ッ!)

余りにも最悪のタイミングに、西野は歯噛みせずにはいられなかった。

これはマズい。余りにもマズい状況だった。

なにせ純粋な戦闘力では、このゴーレムは間違いなく先程の『豊穣喰ライ』よりも上だ。

なにより、『安全地帯』を力技でねじ伏せる事が出来るコイツを放置するのはマズい。

絶対にこの場で仕留めなければならない相手だ。

(でも……どうすればいい?)

全員が疲労困憊な上に、武器もボロボロ。

アカの爆弾はもう使えない。

いや、それどころか『 座標(ポイント) 』も消えてしまったため、カズトが援軍に駆け付けるという可能性も消えてしまった。

(藤田さんや五十嵐会長にも救援を――いや、駄目だ。無駄に犠牲者を増やすだけだ)

数でどうにかなる相手ではない。

破城鎚、化け物ライフル級の攻撃力があって、初めて攻略可能な相手だ。

だがそんな強力な武器はこの場には無い。

(何か……何かないか? 起死回生の一手は……)

必死に考えるが何も策は浮かばない。

再設定まで残り三十分。

時間を稼ぐことくらいなら出来るだろうが、果たしてその間に何人犠牲になるだろうか?

いや、コイツが相手ならば、再設定が完了してもまだ安心できない。

何か、何か策は――、

「ニッシーッ! なにボーっとしてんの!」

「ッ……しま――」

「ルォォオオオオオオオオオオオオッッ!」

思考に没頭するあまり、西野はすぐ目の前まで迫るゴーレムに気付くのが、一瞬遅れた。

致命的な隙。

振り上げられた拳は既に自分に振り下ろされていた。

「マズ――」

「西野さんッ!」

六花や柴田が走る。

だが、駄目だ。間に合わない。

回避も無理だ。紙一重で躱す事は出来るかもしれないが、西野のステータスでは、攻撃の余波でも致命傷になるだろう。

(『命令』で一瞬でも動きを遅らせて――いや、もう無理だ。間に合わない……)

ゆっくりと自分に迫る拳を前に、西野は己の最期を悟る。

こんな、こんなところで終わりなのか?

(クドウさん、一之瀬、柴田、大野、五所川原さん――六花)

嫌だ。死にたくない。まだ生きていたい。

皆と一緒に、これからも――、

「……みんな、ごめん」

そしてゴーレムの拳が、西野を叩き潰そうとして――

「――諦めちゃ駄目だよ、西野君」

「……え?」

声が、聞こえた。

足元の影が広がる。

誰かが、西野の前に立っていた。

その人物は両腕を前に突き出し、ゴーレムの拳を受け止めていた。

ソイツは、その正体は――、

「大野……?」

「……ごめん、随分待たせちゃったね」

そこに居たのは、ゾンビとなった彼の親友――大野の姿だった。

カズトは彼と睨み合いを続けていた。

「そんなに警戒しないでもらえるかな? 私は別に君たちと戦いに来たわけじゃないんだ」

「……信じられないな」

表情はなんとか平静を保ちながらも、俺は内心焦っていた。

本能とスキルが最大限警鐘を鳴らしている。

ヤバい……コイツは、とてつもなくヤバい。

(……四日前とはまるで別人だ……)

感じる気配がまるで違う。

間違いない。コイツ、この四日間でさらに強くなってやがる……。

腰に携えた剣も、以前より禍々しさが増している。

目の前のソイツはやれやれと、首を横に振り、

「悲しいね。まあ、いいや。じゃあ、本題に入ろうか」

そう言って、一歩前に出る。

「ペオニーの魔石、そして神樹の種。この二つを私に譲って貰えないか?」

「……何だと?」

「手に入れたのは知ってるよ? ずっと見ていたからね。いやはや、大したものだよ。いくら『早熟』の所有者といえど、あの暴食を相手に勝つなんてね」

「暴食……?」

「そうだよ。気付いてなかったのかい? ペオニーは固有スキル『暴食』の所有者だ」

七つの大罪の一つ『暴食』。

そうか……ペオニーのあの規格外の強さの一端はそのスキルのおかげだったのか。

「もしこの二つを譲ってくれるなら、私は君に手出ししないと約束しよう」

「その言葉を信じるとでも?」

「信じられないかい? ならスキルを使おうじゃないか。スキル『契約』、これを使えば、契約に記された内容は絶対に履行される」

彼は懐から紙を取り出し、こちらに投げる。

なんらかのスキルが働いているのか、紙はゆらゆらと虚空を渡り、俺の前に舞い降りた。

「そこに私が君に一切の危害を加えないと明記してあるだろう? 君がそれに同意すれば、スキルは発動する。どうだい? 悪い条件じゃないだろう?」

確かに紙には、俺がアイテムを渡す代わりに、奴が俺に一切の危害を加えないと明記してあった。

紙から何らかの力の波動も感じる。

奴の言っている事は本当なのだろう。

でも、

「――信じられる訳ないだろう」

「……どうして?」

「ここに記されてるのは、『お前の俺に対する攻撃』だけだ。なら、例えば『お前以外の誰かに命令して、俺を攻撃する』なんて事は可能なんじゃないか?」

「……」

「もし、お前が本当に俺たちと争うつもりが無いなら、こう書けよ。『自分とその仲間、息のかかった者、その全てを、今後一切クドウカズトとその仲間、周囲の人々へ危害を加えること、悪意を向ける事、間接的に被害を与える事、それら全てを禁ずる』って。それなら、俺はお前の提案に喜んで従うよ」

「……」

ヤツは一瞬、ぽかんとした表情を浮かべ、

「はは……ははははははは。いいね、凄く良い! やはり君は私と同じだ」

腹を抱えて笑い出した。

ひとしきり笑うと、ピタッとヤツの顔から笑みが消える。

「でも……悪いがそこまで譲歩は出来ないな」

轟ッ! とヤツを中心に強大な威圧感が放たれた。

先程までの抜けた感じが消える。

「もう一度だけ言おう。死にたくなければ、ペオニーの魔石と神樹の種を私に寄越せ」

譲れではなく、寄越せときたか。

本性が見えてんぞ、おい。

やっぱり、間接的に俺を始末する気満々だったようだな。

(どうにか隙を見て、モモの『影渡り』で逃げるしかないな……)

問題はその隙をどう作るかだけど……。

奴が腰に携えた剣を抜く。

怪しく光り輝くそれは一目で只の剣でないと理解出来た。

「わんっ」

『影』からモモが現れる。

「……(ふるふる)!」

服に擬態したアカが震える。

「きゅー!」

肩に乗ったキキが吠える。

三匹とも、まだ諦めていないようだ。

はは、自分達だってボロボロなのに本当に頼りになる連中だよ。

「悪い皆、もう少しだけ付き合ってくれ」

とうぜん! とばかりにモモたちは頷く。

せめて手に入れたスキルや大量のポイントを使えればと思う。

だが、そんな隙、コイツは与えてくれないだろう。

現に、俺はコイツと話してる最中にも、ステータスを操作する隙をコイツは見せてくれなかった。

ステータスを操作する一瞬の隙を見せたら、その瞬間に殺されるだろう。

(どうする……? どうすればいい?)

状況は絶望的。

また一歩、奴が近づいてくる。

だが、そこで予想外の事態が起こった。

突如、ヤツは視線を俺から逸らし、虚空を見上げたのだ。

手に持った剣を振り上げ、何かを弾く。

「何だ……!?」

辛うじて、俺の眼にはそれが黒い弾丸のような物だと見る事が出来た。

(……一之瀬さんの攻撃じゃない。今のは、まさか――)

見覚えのある攻撃だった。

奴も忌々しそうな表情を浮かべている。

「……成程、私以外にもこの戦場を視てる者がいるとは思ったが、それがまさか君とはね」

呆然とする中、俺とヤツの間に『闇』が現れる。

ごぼりと、音を立て、そこから一体のモンスターが姿を現す。

闇よりなお黒い漆黒の獣。

爛々と赤く輝く瞳。

「そいつらは自分の獲物だとでも言いたいのか? 『狼王』シュヴァルツ……!」

「グルルルル……」

かつて学校で俺たちと死闘を繰り広げた最悪のモンスター。

ダーク・ウルフがそこに居た。