軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

許し

アルマークが立ち上がるのを見ながら、イルミスが無表情で言う。

「最初は何を始めるのかと思ったがね」

アルマークは恥ずかしさに顔を赤らめた。

「こういう試験は初めてなもので……」

言い訳にしかならないと思いながらも言ってしまう。

「ちょっと、平常心を失っていました」

イルミスは薄く笑う。

「あのまま石刻みの術でも始めようものなら、夏休みの間中ずっと瞑想の補習をしてもらおうかと思っていたがね」

危なかった。

アルマークは内心冷や汗をかいた。

もう発動寸前までいっていた。

魔力は指先からこぼれる寸前だった。

「ぎりぎりでみんなの言葉を思い出しました。自分にできることをやれ、と。それで思いとどまりました」

そうか、とイルミスは呟く。

「人生に挑戦は付き物だ。成功するかどうかも分からないことに、人生を懸けて挑戦しなければならない時がいずれ必ず来る。だが、この試験はそういう類のものではない。普段の授業で身に付けたことを発揮できるかどうかを見るのであって、やってもいないことに一か八かで挑ませて成功するかどうかを見たいわけではない」

「はい」

ついさっきまで、まさにそのつもりでいた。

「君は賢い。以前にも言ったと思うがね。賢いが故に、少し考えると簡単にそれらしい答にたどり着いてしまう。一見するとまるで正解かのような答にね」

竜の炎で失敗した日に、イルミスに医務室で同じ意味のことを言われた。

「だが、幸い君には人の意見に耳を傾けられる度量があり、君の周りには良き友人たちがいる」

「はい」

そう、今回も友人たちに助けられたのだ。

「彼らへの感謝の気持ちを決して忘れないようにしなさい」

「はい、もちろん」

学院長にも同じことを言われた。アルマークはすぐに頷くが、イルミスは首を振る。

「今の言葉は目の前の君に言ったわけではない」

その言葉にアルマークは戸惑う。イルミスは厳しい顔で続けた。

「未来の君に対して言ったのだ。遠くない将来、彼らより遥か高みにたどり着いた後の君にな」

「先生、それは」

僕を買いかぶりすぎです、と言おうとしたが、イルミスに柔らかく制された。

「今の君の気持ちは分かっている」

そして、ふっと表情を緩める。

「今日の瞑想は良かった」

思いがけない称賛にアルマークの顔が輝く。

「君の努力の賜物だ。たゆまず努力したのだろう。よくぞこの短時間でここまで練り上げた」

「ありがとうございます」

そして、イルミスは、厳かに宣言した。

「休暇が終わったら、君に魔法を教え始めることにする。この休暇の間にさらに瞑想の練度を上げておきたまえ」

「……はい!」

それは、学院入学以来、アルマークが待ちに待った瞬間だった。