軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3組

校舎に着いて、リルティたちと話し始めたウェンディと別れると、アルマークは教室にネルソンを見付けてさっそく声をかける。

「ネルソン、ちょっと教えてくれ」

「おう、どうした」

ネルソンが笑顔を見せる。

「今度、武術大会で対戦する3組のことだけど……」

言いながらアルマークは、ネルソンの隣の席に腰を下ろす。

ここはキュリメという女子の席だが、今日はまだ来ていない。

「モーゲンを練習に誘うときに、何人か手強い相手の名前を出してたじゃないか。僕は彼らのことを全く知らないから教えてくれないか」

「ああ、そうだな。いいぜ 」

ネルソンは頷いて、話し始める。

「まず、一番注意しなきゃならないのはコルエンだな。運動神経抜群だし、背が高いからリーチも長い。3組で一番強いのはこいつだろう」

「コルエンね。なるほど」

「それから、エストンとポロイス。こいつらも強い」

「その名前は聞き覚えがあるな」

アルマークが口を挟む。

「あれだっけ、昔ノリシュをいじめてたっていう」

「ああ、そいつらだ」

ネルソンは苦々しい顔で頷く。

「いけすかねぇ奴らだ。アルマークにとっちめられる前のトルクよりももっとだ」

「貴族なんだね」

「ああ。今名前をあげた三人とも貴族だぜ。どこの貴族か、名字も覚えてねえけどな」

ネルソンはそう言って、へっ、と笑う。

「コルエンとは同じクラスだったこともあるし、一年の頃は一緒にかくれんぼやったりして遊んだ仲だから、いい奴だってことは分かってるんだけどな。他の二人とはほとんどまともに話したこともねぇよ」

「そんなに偉そうな態度なのかい」

「ちょっとでも話してみりゃ分かるさ。まあとにかくこの二人は、背はコルエンほどじゃねえけど、大柄だし力も強い。貴族だから入学前からある程度の訓練も受けてきてるだろうしな」

「なるほど。エストンとポロイス。覚えたよ」

「あとはクラス委員のルクスがそれなりに強いけど……どうかな、1組との試合もあるから四人全員がうちとの試合に出ることはないだろうな」

「ネルソン、君はエストンとポロイスにうちとの試合に出てほしいと思ってるだろ」

アルマークが笑いながら指摘すると、ネルソンも相好を崩して同意する。

「まあ、そりゃな。せっかくの機会だ。どうせなら気に入らねえ奴とやったほうが燃える」

「ノリシュの敵討ちかい」

「ばっか、そんなんじゃねえよ」

ネルソンは慌てて否定する。

「あの件は別に……」

ネルソンはノリシュの席を見ながら、言い訳するように言う。

「あいつらが気に食わねえ理由がまた一つ増えたってだけのことだ」

「そうか。あの日、君はずいぶん怒ってたみたいだったから」

アルマークはボルーク卿の迷路で、音を立てて揺れていたネルソンの炎を思い出しながら、言った。

ネルソンは俯き、鋭い目で足下の床を見つめる。

「……ノリシュの話を聞いて、色々と腑に落ちたんだよ」

アルマークがネルソンの顔を見ると、ネルソンは床から目線を上げ、ちらりとアルマークを見て恥ずかしそうに笑った。

「アルマーク。俺はバカだけど、あの迷路の中であいつが泣いてたことに気付かねえほどバカでもねえよ」

「……うん。僕はもともと君がバカだなんて思っちゃいない」

アルマークが頷くと、ネルソンはこそばゆそうに身をよじる。

「お前、そういうことを恥ずかしげもなく平気で言うよな。やめろよ、恥ずかしい」

「そうかな」

アルマークは首を捻る。

「……アルマーク」

遠慮がちに後ろから声をかけられて、アルマークは振り向いた。

小柄な少女が気まずそうに立っている。

「ああ、ごめん。キュリメ」

アルマークは慌てて立ち上がった。

「君の席だったね」

キュリメは俯きがちに首を振る。

「ネルソンと大事な話があるのなら、まだ座っててもいいよ。私、別のところに行ってるから」

「ええ?」

アルマークは驚いて首を振る。

「いやいや、もうだいたい済んだし、大丈夫だよ」

「……そう?」

キュリメは上目遣いにアルマークを見るが、彼と目が合うとすぐにまた俯いてしまう。

「うん。ありがとう、キュリメ」

「うん。それならいいの」

キュリメはそう言って自分の席に遠慮がちに腰を下ろした。

「じゃあネルソン、また」

アルマークはネルソンに片手を上げ、ネルソンは「おう」と応えた。

それから、放課後はイルミスのもとで霧の魔法の練習、朝は四人で武術の練習という生活が始まった。

夜は時折ウェンディやレイラと帰りが一緒になることもあったが、ほとんどの場合、アルマークの方が遅く、一人で帰ることになった。

そんなある日の放課後。

アルマークはその日、意外なほど早い時間にイルミスが終了を宣言したので、まだ明るい時間に魔術実践場を出ることが出来た。

きっとこの時間はまだウェンディたちも武術場だろう。

覗いていこうかな。

そう考えて、武術場へ足を向けようとしたとき、アルマークは後ろから自分の名を呼ばれた。

「今日は早かったな」

そう言いながら大柄な少年が近付いてくる。

「トルク」

「……ちょっと面貸せ」

トルクは顎をしゃくった。