軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

形のない商品

「そういや豚貴族について何か分かりましたかね?」

「一応調べてみたけど情報が少な過ぎるわね。もっと何かないの?」

まぁそりゃそうか……しかしなぁ、この世界に来て牢屋に引きこもっていた私には出せる情報がない。

「幼女ちゃん……なんかない?」

まだ幼女ちゃんの方が外から来た分、的確な事いえるだろ。

「……王都……王都から飛行船に乗った。豚オジチャンの街まで乗った……」

「それ、途中で乗り換えとかしたかしら?」

少し考えて首をブンブンと横に振る。それを見てOL女はコメカミをトントンと指で叩く。小声で「王都から直通の飛行船が出てるってこと?」と呟いている。

「かなりの大都市になるわね……。日数はどれくらい乗ってたか覚えてる?」

「……おぼえてない」

「だいたいで良いわ、三日以上乗った?」

今度は縦に首をふる。

なるほど、王都から出てる便で絞り込もうとしてるのか。元の世界でも同じ事が出来るけど、この世界でもその手法は可能らしい。

「……ちなみに、個人所有の飛行船は使用してないわよね。分かったわ。また少し調べてみる。数日ちょうだい」

「ほいほい、期待してますぜ」

「それとお金の事だけど……この際ハッキリ聞くけど幾ら欲しいの?」

「お、飾らない言葉ッスねぇ」

「子供相手に駆け引きするのも馬鹿らしいわ」

「んふふ、バイトの1日の給料っていかほど?」

「そうね……もちろん職種によるけど、ウチのバイトなら1日でだいたい900ネルスくらいね」

え〜っとぉ、白髪ママから聞いた上での私換算だと一ネルス10円計算だったはず……。もちろん物価とか元の世界と違いはあるだろうから大体だけど。

つまりバイト一日で9000円か……。

「ほいじゃあ二人分で1800ネルスお願いしますわ」

おや、頭を抱えてどうした? つっても大体何考えてるか分かるけどねぇ〜。

「こう言うのもどうかと思うけど……今日の働きで最低でも5万ネルス払うつもりでいたわ……」

「ほ〜……でもまぁ一日1800ネルスって事でいいんじゃないッスか? ……分かるでしょ?」

「だから困ってるのよ……キミ達がただの子供の思考してるなら悩まず払ってたわよ……」

そう言ってやると更に頭を抱えてしまった。

結局、働きに見合わない安い報酬を提示するってのは、私達の抱えてる事情の重さを表している。それに気づいているからこそOL女はビビってるんだよ。

まぁアレだ。私が豚貴族に、白髪親子を匿うだけで30万ネルスを払うと言われた状況に似ている。「コイツどれだけの危ない橋を渡らせる気なんだ?」ってね。

その逆だ。コレだけの働きをしといて安い給料を選ぶなんて、どれだけスネに傷を持ってんだってさ。

「……分かったわ……キミ達、『パイプ端末』は持ってるかしら?」

「パイプ端末?」

なにそれ? タバコ?

幼女ちゃんを見てみるが、持ってないのジェスチャーをしている。ん〜……幼女ちゃんとしてはパイプ端末の存在は知ってるって事?

あ、これはこの世界の常識っぽいな。子供の幼女ちゃんですら存在を知ってるし、OL女も当たり前みたいに聞いてくるし。

「パイプ端末ってなんすかね?」

「知らないの? ……今時ずいぶん厳しい家庭にいたのね……」

聞かぬは一生の恥ってね。

「ふへへ、今まで 箱(檻) 入り娘だったもんで……」

「まぁいいわ。簡単にいうと金銭の受け渡しが簡単に出来る装置かしら」

そう言ってOL女は自分の手首を見せてくる。

ん〜腕輪だね。これがパイプ端末か。

「これを銀行に紐付けしておけは、取引に現金を使用しなくてもいいのよ。まぁ、金銭の受け渡しが出来るってのは一例ね。アプリと呼ばれるシステムを入れる事で本が読めたり動画が見れたりする装置よ」

OL女が手首を弄ると、半透明のモニターの様なものが現れる。

機能的にはスマホっぽい事が出来るってことか。

んで多分金銭が受け渡し可能ってのは、それ単体で銀行から移し替えができるんだな。

そういやこの世界って発展してるから、スマホに準ずる物があってもおかしくはないか。

つーか、コレって……。

「見たことあるわ」

服を買って貰った時に豚貴族が使ってた奴だ。

忘れてたけど、電子決済モドキがあるって驚いたんだよね……やっぱりこの世界……侮れねぇわ。

本や動画が見れるってネットもあるかもしれん。

「まぁ見たことあるでしょうね。大体の人間は持ってるわ」

「へぇ〜便利ですねぇ……」

これ貰えねえかなぁ……チラッチラ。

おや? 幼女ちゃん。

変な顔してどしたの?

「……オバケ姉ちゃんは……それ持っても使えない……」

「え? なんで?」

それは『どうせ機械音痴だろ』みたいなニュアンス?

あれ? いつの間にかすげぇ舐められてたりする?

「…………んー」

幼女ちゃんは少し考えた後、口元でバッテンを作った。

言えないってこと?

ん〜? もしかしてさっきの情報は隠そうってお勉強をさっそく実践してるのかな?

「まぁいいわ。現金で払えば良いだけだし。明日持ってくるわ」

「あ、ちょい待ち」

部屋を出て行こうとするOL女を呼び止める。

「形のない物を買い取る気はない?」

「…………」

給料とは別にお金は稼がなきゃね。

「……何を売ってくれるのかしら? 盗品は買い取らないわよ」

そんな警戒しないでよ。

「情報とかどすか?」

「キミに私が欲しがる情報を持ってるとは思えないのだけれど?」

ふむ、それはそうだね。

情報は今から仕入れるんだからさ。

「まぁ今度、目録用意しておくから期待しててよ」

「そ……期待しとくわ」

「ちなみに昨日の夜って何かありました?」

「なにも無かったわよ?」

「んふふ……どうも……」

怪訝な顔をして部屋を出ていったので、私は背を伸ばして欠伸をする。

なるほどねぇ……『何も無かった』んだぁ。

お宅の副店長が襲われて眠らされてたのに?

ふぅ〜ん……どう言うことだろうね。

もしかして報告されてない? ……なんでよ?

まぁだからこそ……私の情報の商品が充実するってもんよ。

「幼女ちゃ〜ん、私は夜まで寝るけどどうする?」

「……本部屋があるらしいから、そこに居る」

「オッケー、何かあったら呼んでねー」

そう言って私はベッド下のスキマに入り込んだ。

「さぁ〜て、幼女ちゃんばかりに働かせるのも気が引けるからね」

私も仕事をしようじゃない。

つーことで…………

ゲームしよか。