軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

きれいな神様

「「はぁ! はぁ! はぁ!」」

つ、疲れた〜! 最後の最後で奥の手のジェット噴射を使ったせいで、自分の足で走ることになっちゃったよ。エネルギー切れよ。

それにしてもちょっとショックなのは、普通に走ると幼女ちゃんより足が遅かった現実ね。

いや、いいんだけどさ……この世界の住人は人間じゃねぇんだから。

「いいものを見せてもらったわ〜」

息を整えていたらそんな声が聞こえて来た。

周りを見渡してみると、そこは私の想像するようなファンタジーの謁見の前みたいな所だった。遊園地のアトラクションらしいチャチさはない。

赤い絨毯が敷かれ、その先にある階段の上に王様が座るような玉座がある。お城の雰囲気にマッチした光景だ。

声が聞こえたのは玉座のほうからだね。……でも姿はない。

「ようこそ、妾の居城へ」

と思ったら玉座の後ろからヒョコっと顔を覗かせて、女がニッコリ笑っていた。

まぁ……そうだよね。ドレス女だ。今度は透けていないし、顔もよくみえるよ。やっぱりコイツが封印されてた神様ってやつね。

「あなた達の大立ち回り見てたわ。とても面白かったよ」

そういって人好きのする笑顔で階段を降りて来ると、私と幼女ちゃんの周りをクルクル回る。

「……そらどーも」

「んふふ。妾、貴女達のことが気に入っちゃったわ」

ドレス女はそういって、両手を合わせると頬の横に当てる。

「テレサちゃんの願いはクリフォード君のお願いのキャンセルね。了承したわ。でも願いのキャンセルって言うのもどうかしらね? 結局のところ叶えてない訳だし……」

「……」

ドレス女は人差し指を頬に当てると考える仕草をする。そして両手をパンと合わせると、良いことを思いついたかのように、とびきりの笑みをみせる。

「そうだわ! こういうのはどうかしら? 改めてテレサちゃんの願いを叶えるっていうのは! たとえば……お母さんの元に魔法で送ってあげるとかどうかしら?」

「……ッ!」

その言葉に幼女ちゃんが反応するけど、まだ息が整っていないのか上手く言葉が出てこないらしい。

なるほどねぇ……。

「お断りするッス」

「……」

ドレス女にならって満面の笑みで断る。悪いね幼女ちゃん、ノーセンキューってやつだよ。幼女ちゃんは驚いたような顔で私を見つめてる。

「……どうして……かしら?」

うわ……一ミリも表情の変わらない笑みで平坦な声が出てきた……こわ。

「いやぁ、親切を無下にして悪いッスねぇ。特に意味はないッスよ」

私は疲れた体を解すように首を回して、肩を回す。

「ところでメガネの願いって何か覚えてます?」

「もちろんよ。運命力を上げたいだったわね」

ちゃんと覚えてるか……。どうでもいいけどお前さ……笑った顔の奥から品定めするような目を向けて来るの、気持ち悪いからやめてくんね?

「実際のところさ……出来るの? アンタに運命力を上げるってさ?」

「へぇ……」

その言葉を皮切りに……ゆっくりとドレス女の口は裂け、綺麗な笑みは醜悪な顔へと変貌を遂げる。

「……ぴっ」

幼女ちゃんは怯えて変な悲鳴あげてる。

あーまぁ本性はそっちだよね。今更清楚ぶったところで前に見せてんだから胡散臭いだけだよ。

「……くかかっ。運命力……運命力のう? なんじゃソレは? 知らぬなぁ。知らぬものは叶えられぬのぅ……」

楽しそうね。本来の喋り方はそっちなんでしょ。

「んじゃあ、この城にメガネが先に着いてたらどうしてたんすか?」

「……喰らえばよかろ?」

当たり前のように言うじゃん……。

ニチャアと裂けた口から二股に分かれた舌を覗かせ、酷く楽しそうに笑うドレス女。うん、もう本性を隠す気はないようだ。というか演技が下手くそすぎる。

まだ幼女ちゃんのほうが演技が上手いよ。いや、そもそも隠す気もないのかもしれないね。

「それはまた……有りなんすかそれ?」

「くく、有りじゃのう。妾が願いを叶える意思さえあればよかったのじゃ……封印がなくなった今、叶えられぬ願いの強制力など妾の力で噛み砕くのもたやすい」

コイツ私が思ってるよりヤバい存在なのかもしれないね。封印が解けて全力が出せるなら、契約をオジャンにできるって、かなりの力がないとできないんじゃない?

なんとなくだけど……。

紛れもなく神様みたいな存在なのかもしれないね。それも邪神方面へのさ。

「それならさぁ……できんの? 幼女ちゃんをママさんの元に送り届けるってさ?」

「……くく! 童……姿形は違うがお主、妾の遊園地で夜中に徘徊しておった娘じゃな?」

ドレス女は堪らないとばかりに強烈な笑みを浮かべる。

「あぁ、魔法で送り届けるじゃったか? ……出来ぬのぉ。童よ、なぜ妾の嘘が分かったのじゃ?」

「そもそも気に入ったから願いを叶えるって意味が分からんすね」

「そうかの? 気に入った者を優遇したくなるのは誰しもがもつサガじゃろ?」

「そっちじゃないッスよ。私達にそんな関係性なんてないでしょ……初めて会話すんのにさ」

初めて会話するのに気に入ったとか宣ってくる邪神とか信用できるかっての……。それに、そんなことしてお前に何の得があるんだよ。

私の言葉にさらに笑みが強くなる。もう人の顔はしていない。

「くかか! 童よ、随分と頭が回るではないか! いや、ちがうのぉ……お主、誰も信用しておらんな。まぁいいわ……そこまで分かっているのなら……覚悟はできているのだろうな」

ズルリと這いずるような音が聞こえる。ザワザワとした不吉な風が屋内なのに吹き始める。

カパリと下顎が外れ、私の顔を丸呑みに出来そうなほど大口を開けたドレス女が眼前に迫った。

「せっかく復活したことであるし、貴様らを喰らった後に、長らく封印してくれた、この忌まわしき地を水に沈めてしまおうかのう?」

はいダウト……。

「嘘つき……」

私の眼前で、ドレス女の大口がピタリと止まった。