作品タイトル不明
パラサイトガール
「おい小娘……キサマいつまで居座るつもりだ……」
どーも私です。バカ息子の件が片付いて、私の牢屋にも平穏が戻ってきました。
でも、豚貴族は不満の様だね。
「はは、いまさら何を言っておられるのですか? 私を閉じ込めてるのはお貴族様ではないッスか」
「これの何処が閉じ込められているのだ!」
何処がって。
「いや、どう見たって私、閉じ込められてますよね? 見てくださいよ。この絵面。鉄格子の中で泣きじゃくる少女とそれを醜悪な笑みで眺めるお貴族様……」
「誰が泣きじゃくるだ! せめてソファーに寝転がった姿勢を解いてから言え!」
うっせぇ豚だな。こっちも引けないのよ。いきなり宿無しとか冗談じゃない。出ていくにしても、ちゃんと次の拠点を整えてからだよ。
せっかく平穏になったんだ。もう少し厄介になるからね。
「だいたい最初に閉じ込めたのはソッチでしょうに……」
「ふん、キサマはもう用済みだ。何処へでも行くがいい」
お、その用済みって台詞、悪党っぽくていいね。似合うよ。
「んじゃココで」
「ふざけるな! キサマのように閉じ込めても勝手に抜け出す、不気味な小娘など手元に置いておけるか!」
お、そう言う事いう? 甘いなぁ豚貴族。
「どこにそんな証拠あるんスか?」
「何だと……」
「私が抜け出してるって証拠あるんですか?」
「き、キサマ! この期に及んでまだそんな事を言いよるか! いたではないか! しょっちゅう抜け出しておるのを見ておるわ」
はは、そだねぇ。だがソレを言われるのは想定済みなんだよ。
「へ〜……夢でもみたんじゃないですか?」
「夢だと! 戯けたことを!」
「ほら……聞いてみればいいじゃないッスか? 私が抜け出しているのを目撃したかどうか、みんなにさぁ……」
「……」
はは、いないんだよ。豚貴族以外に、私を外で見かけた奴なんてね。
頭が可笑しくなったと思われるだけだよ。
「……領主館に出没する幽霊の正体はキサマだろ……」
いたわ……。そういや結構目撃されてたね。
えっ? そんなに噂になってるの? いや、それは何とも……すんません。
自宅をホラーハウスにするつもりはなかったんすわ。
「え……と、人違いですね……。私はココを一歩も動いてないので!」
「…………チッ!」
豚貴族は証拠不十分と判断したのか、苛立たしげに舌打ちすると、鉄格子を両手で掴んで睨みつけてきた。
「ふん! おい小娘。キサマがそう言うならコッチにも考えがある。牢屋の外でキサマが捕まったら、不法侵入で警察に突き出すからな!」
ん〜、なるほど、そうくるか。確かに捕まったら言い逃れは流石に出来んわな。
もともと豚貴族は、スパイへのカモフラージュとして私を利用してきた。情報が筒抜けにならないようにね。
でも知ってるぞ。お前、私の存在を極力隠していただろ。一般の職員には知らされてないんだ。
少女の監禁とか外聞悪すぎるもんな。
仮に捕まった時のことを考えて、自分は関係ないと言い張りたいんだよね。
分かってるって。そんなヘマはせんよ。
しかし、アレだね。鉄格子を両手で掴んでる豚貴族は、悪い事して牢屋に取っ捕まったみたいに見える。
私より先に捕まってんじゃねぇよ。笑いそうになるだろ。
まぁそんなことより。
「いいッスよ」
軽く答えてやる。
捕まったらだぁ? こちとら今まで捕まったことねぇんだよ。そんな戯言は捕まえてから言いなさいよ。
結局の所、今までとやる事は変わらないからね。
捕まるつもりも、見つかるつもりもない。
バカ息子の件では、腹が立ったから手を貸したが、豚貴族がゲス野郎なのは間違いないからね。
それなら私は豚貴族を散々利用してやるだけだよ。
「ふんっ!」
お、帰るのかな?
「あ、ちょっといいですか?」
「なんだ! メシのグレードなら上げんぞ!」
「お小遣いください!」
「ぶっ殺すぞ! クソガキッ!」
飾り気のない殺害予告するじゃん。
「なんでワシが、キサマに金を恵んでやらねばならんのだ!」
う〜んごもっとも。まぁダメだよねぇ……。
豚貴族は金持ちだけど、意味もなく金をくれる奴じゃあない。
むしろ喜んで金をくれたら、逆に罠を疑う所だったよ。
まぁ、一応ダメ元で聞いただけだから良いんだけど。
豚貴族はブヒブヒ言いながら私の牢屋から出て行った。
「う〜ん、金が欲しい……」
あぁ、別に私は豚貴族を煽り散らす為に、小遣いをせびった訳じゃないよ。
割と緊急にお金が必要なんだ。
と言うのも……
「スキマの空間が一杯になっちゃったんだよね……」
覚えてるかな? slitースリットーで得た能力、『スキマに入り込む能力』の詳細。
スキマ内に作れる空間はタタミ一畳分が三つ。つまり三畳だ。
一つは食料を一杯まで詰め込んだ。毎日、厨房で漁った甲斐があったよ。腐らない様に冷房ガンガンに効かせて冷蔵庫にしてるから長持ちするよ。
余ったリソースで気温の調節付けてたのが、意外なほど役に立ってる。
二つ目の空間は、食料以外の倉庫。生成した 妖球(あやかしだま) もここに入れている。
三つ目の空間は、私が入り込んで過ごす為の空間。一応小さなクッションと、テーブルという名の木箱があるだけの小部屋といった所だ。
漫画とか持ち込みたい。
まぁ、食料庫と倉庫が埋まっちゃったから、なんとかしたいなぁと思ってるんだ。そこで、スキマ空間の能力にはもう一つ秘密があったよね。
お金の力で拡張ができるんだよ。
元より、三カ所しか空間が作れないのは、無理があったんだ。でも擬似アイテムボックスの為に、リソースの節約で仕方なかったんだよ。だから拡張性を持たせてたんだよね。
基本五万円分で一畳追加の拡張なんだけどさ。
五万円と言っても、私がこの世界のレートを把握しないことにはできないんだけど、どちらにせよお金がないことには把握できない。
まぁ追々考えるしかないか。
「まぁ何とかなるでしょ! とりあえず今は……」
私は領域を展開する。
「ゲームで新しい能力でも模索するかな」