軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

悪事に加担? 知りませんわそんなん

「……キサマ。本当にどうやって牢屋を抜け出しておるのだ……」

尋問スペースの椅子に座りながら頭を抱える豚貴族が、疲れたように問いかけてきた。

大丈夫? 疲れてるなら今すぐ鉄格子を越えて背中をさすってあげようか?

「ははは、お貴族様は一体何を言って居られるのやら。見た通り私は牢屋の中にいるではないですか」

「だから頭を抱えておるのだ!」

でしょうねぇ。

昨日の暗殺者騒ぎから夜が明けて、結構な騒ぎになっていただろうに豚貴族は牢屋にやってきた。

鉄格子の中にいる私を見た時、豚貴族が驚きでギョッとしたのには笑いそうになってしまった。

牢屋から逃げ出した私が戻ってるとか思わないよなぁ。こちとら此処から出ても身分証明どころか住むところもないもんで。

今の所、飯も出るし住むところもある。囚人という身分はゼロよりマシなんだよ。だからさ、これからも私のこと養ってくださいねぇ。

「キサマは何でセドリックがいる時には喋らんのだ……お陰でワシが変な目でみられただろうが」

「まぁまぁ落ち着いて」

軍人執事の前でしゃべらないんじゃないよ。別にお前にも喋るつもりはなかっただけ。気軽に口を開くことで取り返しのつかないことを避ける為だ。

とにかく、この世界の常識が足りないからね。喋ることでこっちの情報を与えるのは避けたかったんだ。

けどまぁ、バレちまったもんはしゃーねぇから

開き直って豚貴族から情報を頂くことにしようと思って会話している。この豚さんはあんまり頭が良くないからね。下手な事言っても気付かないだろ。

「昨日の暗殺者はどうなったんですか?」

「やっぱり昨日のはキサマではないか……暗殺者には逃げられた」

「あらら」

豚貴族は頭が痛そうにしながらも面倒くさそうに答えた。そうそう、素直に答えたほうが精神衛生にもいいよ。答えなかったらうるさいぞ……私が。

「宿舎から兵士がやってきたのを感じとったらしい」

なんだかお約束って感じだね。

「どちらにせよ昨日の奴らは下っ端だ。それでなければワシらは今頃ここにおらんわ」

「あー……」

妙に隙が多いと思ったら暗殺一年生でしたか。何がプロだよ。

「お陰で護衛を増やされて息が詰まるわ」

吐き捨てるように呟く豚貴族。

護衛って……

「どこにいるッスか?」

あれか? 実は私が気づいてないだけで本当はこの部屋に、

「いないぞ」

「いないんだ! ちょっと期待したのに!」

「というよりは、今はこの部屋にいるから要らないのだ。この部屋は防音防諜に加え、ちょっとやそっとでは破壊出来ないようにしてある。おまけに魔術のジャミングも施してあるからな。実質アヤブドール家敷地内で一番安全な場所だ」

「私の部屋に変な細工しないでほしいーんすけど!」

「キサマの部屋ではないわ!」

いやまぁそうなんだけど……私の部屋でよくない?

「この部屋……なんかあるんスか? 随分厳重に防犯してるみたいっすけど」

「はん、小娘に言った所で支障などないから教えてやる」

あ、はい。言いたいんだね。なんか嫌らしげに、ほくそ笑んでるけど大層な理由があるんだろうね?

「この部屋に何が有るという話ではない。ワシらは安全に誰にも会話を聞かれない場所としてこの部屋を作ったのだ。くはは、キサマを利用してなぁ」

「え? 私っすか?」

「そうだ。もともとワシは王都で不正を理由に糾弾され、領地であるこの街に帰還させられたのだ」

ふむふむ、大体予想通りだね。しかしイキイキと自分の悪事を語るよねこのオッサン。

「つまり、それは不正の証拠を流した不届者がいる事になるよな、ワシの部下に、クク……それも数字の見れる上の人間になぁ」

お、おう……八つ裂きにするのが楽しみでたまらないという表情やめろ。

「はぁ……それで何で私が関係あるんです?」

「察しのわるいガキだのう。ワシはこの領地……というかこの領主館に帰ってくるのは久しぶりなのだ。不正の情報を流したスパイはワシのいない間に、部屋にも寝室にも執務室にさえ細工し放題ということだ。つまり、この領主館は何処にスパイの目が有るかわからん。分かるか?」

「ん〜、う〜ん。まぁ何となく分かった」

「ワシはスパイに会話が盗聴されずに安全な場所を用意する必要があった」

「それがこの牢屋と尋問スペースと……」

「その通りだ。ただ、そんな部屋をバレずに用意するのは難しい。なんせワシの部下がスパイだからな。部屋を作った時の工事でバレてしまう。そこで飛行船に密航した不届きな小娘を保護したことにして部屋を整えるという名目でカモフラージュし、バレずに安全な部屋を用意したのだ。これで裏切り者のスパイを炙り出す計画が立てられ、後ろ暗い話もし放題という訳だ。感謝するぞ。キサマのお陰でまた悪巧みができる。くく、どうだ? 自分が知らずのうちに利用されていた気分は?」

いや〜どうもこうも。

「いいんじゃないっすか?」

「あ?」

「私を利用して安全な部屋をバレずに作る……大いに結構」

あんまり舐めんなよ。そんなんで私が怒り狂うとでも思ってんのか?

「私に悪事の片棒を担がせやがって! とでも言うと思う? ないない、どんな聖人っすかソレ? アンタの悪事はアンタの悪事。私は利用されただけの汚れなき少女のままですわ。それに……アンタが私を利用しているように私もアンタを利用しているしね」

衣食住助かってます。

お、なんだ? 当てが外れたような顔して。豚貴族みたいな奴は他人が悔しがる表情が大好物だからね。

私もそうだから分かる。

「…………チッ! 悪党の素質が有りおる。つまらぬ小娘め」

なんか酷い事言われた……。

「まぁ何となく事情は分かったっすよ」

「フン!」

私の態度はお気に召さなかったらしい。不機嫌そうに立ち上がった。あ、今日の尋問タイムはおしまいですね。

「あ、そうそう。最後に一ついいっすか?」

「なんだ!」

コレだけは言っておかないといけない。

「食べ物のグレード上げてもらえません?」

「知るか!」

出ていっちゃった。