軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

嫌どす。ほっといて下さい

「うげぇ……町長様来てるよ」

「……しかもなんか増えてる」

どーも私です。

現在、幼女ちゃんとモニターを覗いて呟いております。

うん、いつもの灯台拠点のスキマだよ。監視カメラの能力を使って防波堤を見てみれば、いつもの町長さん……。オメーいったい何しに来やがった。

ハイテンション町長は前の時と同じく、防波堤に折り畳み椅子を設置して釣りをしております。なに? 釣りが趣味なんですかね?

しかも今日はお連れさんがいる模様……。

ハイテンション町長に並ぶように他に一列に椅子を置いて座ってる三人組。

女一人に男が二人……仲良く並んで釣りしてんだから知り合いなんだろうよ。

でもその表情は微妙……というか『俺たち何やらされてんの?』って感じかな?

あれだね。上司に付き合わされて、やりたくもないレジャーに休日を潰す部下……みたいな?

『町〜長〜……こんな事してる場合じゃねーんだけど、全然釣れねーし』

『アーハー、釣りでボウズにならない秘訣教えてあげるよ。んーん、釣れるまで帰らないことさ!』

茶髪の兄ちゃんの台詞に、ハイテンション町長は顔を押さえながら空に向かって高らかに笑い声をあげる。

「楽しそうねお前!」

あと上司の趣味に付き合わされる部下って、あながち遠くなさそう。

「……どうする?」

「いやまぁ、出て行くしかねぇでしょ……」

町長も言ってんじゃん『釣れるまで帰らない』ってさ。

これさ……もしかしなくても、私達が出てくるまで帰らねぇぞって言ってんだよな?

クソが、私達を釣り上げてぇならエサの一つでも用意してみなってんだよ。

「仕方ねぇ……要件聞きに行こうか」

じゃねぇと帰らねぇんだろうし……。

スキマからヌルリと飛び出した私達は、灯台の後ろから顔を出して町長に話しかける。

「うぃ〜ッス。なんか釣れますかぁ〜?」

主に水死体とか……。

「アーハー! 釣れた釣れた。ほぉら僕の言った通りでしょ?」

「へぇへぇ、ご機嫌でございますねぇ町長様」

うぅん?

どうした町長の部下ども。そんな怖い顔しちゃってさ。

三人の町長部下さんたちは、釣り竿を垂らしたまま灯台の裏から出てきた私達を見て目を細める。

「どう言う事……ですかね?」

「……本当にいやがったよ」

「おいおい、このお子様たち……ふつーじゃねえぞ」

金髪の秘書みたいな女。

戦うのを生き甲斐にしてそうな赤髪の大男。

普通の見た目の軽そうな茶髪の男。

それぞれが警戒……というか訝しげな表情で見てくる。

うん、お前ら雰囲気出してるところ悪いけど、自分たちの格好見てみ?

全員並んで釣り糸を垂らしてる姿……だいぶ滑稽だからな。

秘書と覇王みたいな赤髪、そして友達とカラオケ行ってそうな茶髪の兄ちゃんが並んで釣りしてんの違和感あんのよ。

それぞれ社長室と玉座とカラオケボックスにでも帰ってろ。お前らの生息域は堤防釣りじゃねぇだろ。

つか何でお前ら私達見て驚いてんの?

「おかしいですね。灯台の裏には……誰もいなかったはずですが」

「ああ、気配がなかった。いや……」

「そーね。気配がなかったんじゃなくて、いきなり現れた」

町長部下たちがそれぞれ口にすると、ハイテンション町長はクスクスと笑う。

ん〜……こわ。

コイツらの方が普通じゃねぇよ。なんだよ気配って。

つまり、この三人は誰もいないと思っていた灯台の裏から私達が出てきたから驚いてんのね。

そらそうよ、私達はスキマの中にいて出てきたんだからね。それが『いきなり現れた』って違和感を感じてるんだね。

はいはい、気配とか意味の分からんもん探れるやつは大変ですね!

普通のヤツ連れてこいや……。

なに明らかに達人みたいなやつら同伴させとんねん。

ただの幼女に会いにくるだけで過剰戦力過ぎませんかね? 戦争か?

それならマフィアか教会とでもやってろ。

「アーハー! うんうん、この子達のことはそう言う存在って割り切ろうね! いちいち気にしてたら胃にクレーターができるからね〜。そう、僕みたいにさっ!」

「アンタにそれ言わせんなら相当だよ……」

どことなく顔色の悪そうな町長が笑うと、茶髪の兄ちゃんが疲れたような顔を見せる。

「んでぇ……今日はどしたんです? 町長様」

寒いから要件は手短に頼むね。

「んーん、そうだ……ね」

わずかにテンションを下げた町長は、笑いながらも何処となく真剣な表情で話し始めた。

「二日後……亡霊デュラハンと決着を付けるよ」

「ほーですかぁ。それで?」

「んーん、言いづらいなぁ…………『保護』されてくれないかな?」

「…………ん〜、理由をお聞きしても?」

「決まってるさ。亡霊デュラハン……プレジール ヴィイはキミ達に執着している。安全の為だよ」

「……」

ふーん。そう……。

私の表情を見てどう思ったのか知らないが、町長は軽く目をつぶって諦めたように薄く笑った。

「そうだね……ゴメン。キミ達の安全とか言ったけど、僕の都合さ。そうか……僕は不確定要素を断ちたいんだね」

一人で納得したかのような事を言うと、悲しげに視線を海に向けた。

「もし……キミ達を人質にされたら。もし、デュラハンが僕の策よりキミ達に執着を見せたら……そんな不確定要素を排除したかった……本音さ」

「んっふっふ。結局あんま変わんないッスね」

結局、言い換えてもそれは『私達が心配』ということなんだろうね。

私の言葉に町長はキョトンとすると、大声で笑い出す。

「アーハー! そうかもね。……保護させてもらえないかな?」

仕方ねぇな……。

幼女ちゃんに視線をやれば、彼女は軽く頷く。

そうだね……。

「お断りします!!」

「あれぇ! この状況でその返事はおかしくないかい!?」

私と幼女ちゃんは目の前でバッテンを作りながら仁王立ちをする。

「お、町長。元気ッスね」

「はい、僕の胃に新たな穴が空いたー! すっごいねキミ! よくあの雰囲気でソレ言えたね! 一応理由を聞こうか! 返答次第じゃ僕のキャラ崩れるからね! 覚悟してね!」

「面倒臭い!!」

「いっそデュラハンに突き出したいねぇ!」

面倒臭い……それは確かにそうだけど、本音は違うよ。

町長に保護されるってのは、それは逆に私達の居場所が一ヶ所に確定する事を意味する。

そこはすぐに逃げれる場所なん?

だったら自分たちで考えて逃げ隠れするほうが私達は安心だ。……まぁ、町長は違うんだろうけど。

結局心配なのは、私達の居場所が誰かに知られてるのが不安なんだよ。

どうする? 『キミ達の保護に、僕の知り合いの【祈りの巫女】を連れてきたよ!』とか言い出したら……。

アンタが思ってるより敵が多いんだよ私達には!

「アーハー! なんてね。ぶっちゃけキミ達がそう言うのは想定内だよ!」

頭を抱えていた町長が、急にシャキンと背筋を伸ばすと余裕の表情を見せる。

お、なんだ? また追いかけっこでもするかい?

「妥協案を用意してきたんだー!」

「ほ? 妥協案とな?」

「後ろに立ってる三人の副市長! 彼らの中からキミたちの護衛に一人付けよう! 誰にする〜? 全員強いよ!」

「副市長さんですかぁ……ちなみに町長様の部下でいいんですかね」

「そうだよ。僕の部下の中でも特に戦闘に特化した人員。それが副市長たちさ!」

「へ〜、町長様の四天王てきな?」

三人しかいねぇけど。

私の言葉に、秘書風の副市長が得意気に胸を張る。

「ちなみに副市長は現在、七十二名いますね」

「思ったより多い! 急に量産型感出てきたんだけど!」

「……七十二天王」

「んふっ……」

やめろ幼女ちゃん。笑かすな。

「ちょ、量産型はやめようね! 本当に強いから。もっとたくさん連れてこないのは、いろいろと問題があるからなんだよ。セッテ区域の勢力の兼ね合いとかさ。警戒されちゃうんだよ。でも逆に言えば、三人いれば警戒されちゃうくらい強いからね彼ら!」

ふむ、町長はこのセッテ区域の勢力じゃないから警戒させちゃうってことね。

「で、誰にする!」

「……要らないッスね」

「知ってた!」

いや、スマンね。

だからこっちも出来るだけの譲歩をしよう。

「町長様、いろいろ迷惑かけてすんませんね。約束しますよ。私達は亡霊デュラハンの事件が解決するまで、誰にも見つからないようにしますわ。そう……絶対に」

「それ……は」

ふふ、譲歩とか言ってるけど、私の言い分って町長の提案を全部蹴ってるだけだよね。さぁどう出る。

追いかけっこ始めるか? 悪いけど、私達も譲れんのよ。

町長は何か言いたげに口を開いた後、弱々しく微笑んだ。

「んーん、約束できるかい? 二日後まで見つからないように隠れてるって」

「約束しますよ」

「なら……仕方ないかなぁ」

ハイテンション町長は苦笑いしながら頬をかくと頷く。

「分かった。僕も約束するよ。絶対に亡霊デュラハンに負けない。だって僕……町長だもの」

「あれ? この人死ぬ?」

「だからもし、全部終わったら……もしキミ達が良ければなんだけど……いや、何でもない。アーハー、忘れておくれ!」

「あれ!? 死ぬねこの人!?」

バンバン死亡フラグ立てんじゃん!

その後ハイテンション町長は、副市長たちを引き連れて帰っていった。

あ、車止めてあるね。

立っているのは町長の娘か……。なんだかんだいつも一緒いんのよね。

――――――――――――――――――――――

「町長……いいのかい?」

覇王のような赤髪の副市長が前を歩く町長に声をかける。

「んーん、いいんだよ」

「あのガキども……亡霊デュラハンに狙われてんだろ。こっそり俺が護衛してこおうか?」

「アーハー、やめとこう。彼女達そんなことしてバレたらスルリと逃げちゃうよ」

「……バレねえよ」

「分かってるさ。でもね。彼女達はよく分からない異能持ってるからね。絶対じゃないよ」

「あぁ、そういやいつの間にか現れたのには驚いたな。あの歳で異能持ちか」

「んっふっふ。子供達の事を思うなら……戦力を割かずに確実に亡霊デュラハンを捕まえるのが正しい」

その町長の言葉に副市長は、それ以上言うことはないとばかりに肩を上げた。

「アーハー、結局……彼女たちの信頼は勝ち取れなかったか〜」

――――――――――――――――――――――

私はスキマの中で目を瞑りながら寝転がる。

「そんじゃあ二日後までスキマに籠っとこうかね?」

横で同じようにダラダラしている幼女ちゃんに声を掛ける。別に返事を期待しているワケじゃない。

けど、薄く目を見開いて横を窺ってみれば……幼女ちゃんは私を無表情でガン見していた。

ふむ……

「そう、キミも同じ考えかな?」

「…………」

幼女ちゃんは答えない。それが分かりきった答えのように。

「町長と変態殺人鬼……どっちが勝つと思う」

「……」

「……そう……だろうね」

私は目をシッカリと開くと、ゆっくりと立ち上がる。

そして、あまり高くない……それでいて幼女の体には十分な高さの天井を見上げる。

「……動くよ……幼女ちゃん」

「……もちろん」

ここが分水嶺だ……。

幼女ちゃんも立ち上がり、天然コアを取り出すと手のひらに乗せる。

「……勝負にでる」

「うん、たぶんここで動かなかったら私達は……」

私達は目を細めて、スキマの外を睨みつけた。

「……亡霊デュラハンの手に掛かる」