軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

子供らしさ

ふむ、町長は資料を隠している可能性がある……ねぇ?

「どーしてそう思ったん?」

幼女ちゃんは扉をギィ……っと開くと、誰もいないか確認するためにキョロキョロ廊下を見渡して、私に目線も合わせずに静かな声で口を開く。

「……あくまで可能性。もともと場所は宝石店の女から、おおよそ二ヶ所に絞られてた」

う〜ん、あぁ宝石店の女って、遊園地を抜け出して最初に取引したOL女のことか。

そういやアソコで情報もらって、怪しい場所に目星つけてたんだよね。

私は文字読めないし、幼女ちゃんに任せっきりにしてたんだけどさぁ。

「もしかして、町長の出して来た情報にその領地の情報が無かったとか?」

コソコソと暗い廊下を歩く幼女ちゃんの背中に声を掛けると、首を振って否定する。

「……いや、あったよ。でも別人だった」

「ん〜、その二ヶ所の領地……もしかして見当違いだったんかね?」

「…………どうだろ。でも、あの豚野郎じゃないなら町長が隠してる可能性がある……かなぁ?」

豚野郎ってアンタ……。

これ私の影響かな……だよなやっぱ。

ま、まぁ私の影響はともかく、キミ……豚貴族に恨みあったもんね。

帰ったら殺せばいいんじゃね? 応援するよ。

「隠してる可能性ねぇ。そうなると何のためにって話だけど……」

いやまぁ分かるわ。

どう考えても豚貴族ってマトモな貴族じゃねぇだろうからな。

市民の人気に病的なほど入れ込んでいる町長からすると、絶対に関わりたくない存在だろうね。

「まぁ、そうだとしたら……契約違反ではあるよねぇ〜」

こっちは亡霊デュラハンの情報っていう対価は渡したからね。その報酬を『頑張ったけど見つけられませんでした』ならともかく……見つけたけど隠すってのはアウトだ。

「とと、この部屋とか怪しくない?」

「……ぬ。ワザとらしいほどの魔術施錠……調べよう」

ちょっと豪華でセキュリティーのシッカリしてそうな扉……。

魔術施錠が掛かってるなら重要な部屋だよね?

つってもこの屋敷は、そんなに広くない。

まぁ豪華な屋敷ではあるけど、町長がこのセッテ区域で活動するために用意した、仮の拠点らしいからね。

幼女ちゃんが魔術施錠を解いて部屋に押し入ると、そこは執務机とソファー、そして壁際には本がガラス越しに鎮座している。

「ん〜、本棚の本はもともと屋敷に備え付けられていたモンかね?」

「……だろうね。持ち込んだとも思えないから」

ほんじゃあ机を調べようか。

一番下の引き出しは……空!

下から順に開けていくけど、ことごとく空っぽの引き出しが続く。

そして最上段の引き出しは……。

「とどかねぇ……」

う、うむ。幼女の体じゃ上の段の引き出しまで届かねぇわ。

絨毯の上で背伸びをしながらプルプルと、上段の引き出しに手を伸ばしていると――。

「……こっちで開ける」

と言って幼女ちゃんが机の上から顔を覗かしてきた。

どうやらソファーからジャンプして、机の上に飛び乗ったらしい。

「……ぬ」

幼女ちゃんが机の上から引き出しに手を当てると、魔法陣が浮かび上がる。

お、やっぱり魔術施錠か。

私じゃ開けられなかったねソレ。

なんなく引き出しを開けた幼女ちゃんの手には、私達が見た『貴族リスト』が掴まれていた。ビンゴッ!

「……ぬぬぬぬ」

「どない?」

資料をパラパラとめくって確認する幼女ちゃんが、少し考えて引き出しの中に資料を戻す。

「……ない」

「ん〜、戻ろか」

私の言葉に肩を竦めて、幼女ちゃんは机から飛び降りる。

「……あったら幸運くらいに思ってたから、かまわぬ」

「ない気はしてたんだ?」

「……うん。町長が隠しているとも限らないし、隠してても資料として出力してない可能性があった」

そう言って幼女ちゃんは、部屋に侵入した形跡を消しながら腕に巻かれているパイプ端末を見せてくる。

あぁなるほど……紙の資料として用意したのは私達に見せるためだろうからね。そもそも私達に見せる気がないなら紙として印刷しないわな。

異世界のクセに、デジタル社会め。

「あ、帰り便に厨房寄ってこ〜よ。せっかくお泊まりまでしたのに収穫なしは腹立つし」

「……しょうち」

そう言って暗い廊下を歩いていると……。

「こんな所で何してるの?」

「ウヒィ!!」

「……ぴぃ!!」

すぐ後ろから声をかけられた……。

や、やべ……見つかった! どうする?

背中に冷や汗を掻きながら、横目で幼女ちゃんを見てみれば、私と同じように顔面を硬直させた後、スゥ……と目を細めた。

おい、やめろぉ!

なんだその険呑な瞳は!

ギギギと振り返ってみると――

「こんな真夜中にどうしたの?」

金髪のラリアードールを腕に抱いた金髪の少女、町長の娘がニコニコ笑いながら立っていた。

な、なんだ娘の方か……さてどう誤魔化す?

おい、そこの白髪『……致し方なし』じゃねぇわ。ボソっと呟くんじゃねぇよ!

こぇえわ。

絶対やめろよ! 証拠が残るうえに絶対疑われるからね!

無駄に敵を作ろうとすんな。

まぁ彼女も、流石にここで暴力に訴えるつもりもないだろう。

もっとも、あっちの方が体大きいから負けるかもしらんけど……。まぁいいや、誤魔化そ。

「んーんー、これはこれは町長様の御息女様〜! 実は怪しい人影を見ましてねー。追ってきたってワケっすわ! 部屋の鍵? 空いてましたよ?」

「……下手か」

うるせぇぞクソガキ! 文句言ってる暇があるなら、さっさとこの金髪のガキにゴマすらんかい!

「……」

「うっ」

私の完璧な誤魔化しに、金髪の少女はニコニコのまま無口を貫いた。

な、なんだよこのガキ……。『それで?』って顔すんじゃねぇよ、はっ倒すぞ。

「……」

私の、腕をスリスリしながらのご機嫌伺いにも、依然として無言の圧力を掛けてくる金髪ちゃん。

この世界に来て……私が暫定的に思ってたことがあるんだよね。

この世界の子供ってね……『子供』なんだよ。

何言ってるか分かんない?

例えばさぁ、幼女ちゃんは不思議な力を持っていて、子供らしからぬ思考能力を持ってるじゃん?

でもねぇ、それは環境のせいでそうなっただけで、歴とした子供なんだよ。

子供の姿をしているけど、何百年と生きた存在ってワケじゃない……。

だからこの世界の人間は、『子供を侮る』

つまり、そんな存在は居ないか……もしくは非常に稀な存在なワケだよね?

だから子供の姿をしてるんなら、子供なんだよ。

前にハリウッドメガネが寿命がどーたら言ってたから何とも言えないけど、大人になると老けなくなるとかじゃないかな?

もっとも例外はあるだろうけど……私とか。

まぁだからこの世界の人間は、ガキである私達を存分に侮ってくれるワケなんだけど……この町長の娘は何というか、子供にしては落ち着きがあるんだよね。

単純に落ち着いた子なのかもしれないけど、真夜中にこんな場所で私達を見かけて、真後ろまで接近してくるまで声かけないってことある?

子供なら普通……見かけた瞬間に声かけてこない?

とまあ現実逃避に思考を取られてたけど、そろそろ何とかせにゃな。

とか思ってたら幼女ちゃんが一歩踏み出して一言。

「……ねぼけてた」

「下手じゃん」

いやお前も下手じゃん! よく私のこと言えたねキミ!

通じるワケねぇだろ寝ぼけてんじゃねぇぞ。

「そう、寝ぼけてたのね。部屋分かる?」

え、通じんの? なんで私の誤魔化しは通じなくてお前の誤魔化しは通じるの?

なに? 私の知らないこの世界の常識だったりする?

「……だいじょうぶ」

「そう? お休みなさい」

しょせんただの子供か……。部屋に帰ろ。

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白髪の幼女は、先に行った長髪の少女を追いかけようとして、少し上を向いて考えるように停止した。

「どうかしたの?」

不意に立ち止まった白髪幼女に対して、人形を抱いた金髪の少女は不思議そうに背中に声を掛ける。

「……」

白髪の幼女は振り返ると、町長の娘をジッと見てゆっくり口を開いた。

「……もしかしてお前……『見えてない?』」

その言葉にウェーブの掛かった髪をサラリと揺らして、少女は不思議そうな顔をする。

「視力のこと? 見えてるけど……」

その答えに白髪幼女は、再度上を向いて考える姿勢をとった。

そしてすぐに、何も言わずに無言で立ち去る。

その白髪幼女の不思議な行動に、金髪少女は白髪幼女が去ったあとの暗闇に首を捻った。

――――――――――――――――――――――

「……やっぱりアイツ見えてない」

暗い廊下を、先に行った長髪の少女を小走りで追いかけながら、白髪幼女は静かに呟く。

「……オバケ姉ちゃんのこと」