軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

説明しよう!

「……オバケ姉ちゃん……また来てる」

「えぇ。またぁ? もうすぐ出かけんのに面倒くせぇなぁ……」

まったくもぉ……。

あ、どーも私です。

「あぁうん。パリピだね」

スキマの外を覗いてみれば、真夜中の、こんなくたびれた公園に数人の若者がたむろしてやがる。

「なんか最近多くなぁい? ここゴーストタウンだよ。実はもともとパリピの集会場だったんかねぇ」

「……」

「まぁいいや、出かけるのに邪魔だから追っ払ってくる。 闇滅球(あんめつだま) !」

体全体を闇で覆ってスキマから飛び出す。

「うおおぉぉおおおお!! 帰れーー!! こんな所に来てねぇでカラオケ屋にでも行ってろーー!!」

『うわあっ!! ホントに出た!!』

『やだやだやだ! ウソでしょ!』

『ぅぇあーー! 逃げっ逃げろ!』

『ただの噂じゃないのかよ! く、来るな!』

闇を被ってズモモモモと追いかけてやれば、アッサリと退散するパリピ達。

「まったく……ウチはコンビニじゃねぇっての」

去り行くパリピを乗せた車を眺めながら、纏っていた闇をボフンと解除すると、後ろの滑り台から幼女ちゃんが降りてきた。

「なんでわざわざ、こんな所にくるかね。ゴミ漁りしているカラスを追い払ってる気分だわ。カカシでも立てとくか?」

「……たぶん、それだよ」

「うん?」

「……毎回違うヤツらが来てる。オバケが出るってウワサが広がったんじゃない?」

「…………あ」

ソレだわ……。

私がパリピを追っ払うたび、こんな風にビビらせてたから心霊スポットの信憑性が上がっちゃったんだな。

どーりでパリピが多いはずだ。

パリピって好きだもんね心霊スポット。

友達と怖いもの見たさでやってくるんだ。そんでマジで出るから、余計に確かめたろってやってくんのか……。

「見事に悪循環だわ……」

「……追い払ったら……ふえる」

いっそ、マジヤベェ神霊スポットとして恐怖に叩き込んだろか?

――――――――――――――――――――――

「はあっ! はあっ!」

洋館の廊下を、目の下にクマのある小者臭い男が走る。

焦りにより足がもつれ、転びそうになりながらも崩れた体勢を必死に立て直し、後ろをチラ見する。

廊下の曲がり角から、ガラの悪い三匹のドーベルマンのような犬が飛び出し、こちらを目標に追いかけてきた。

「ちょっとっ! 負け犬ニーサン! 何も言わず一人で逃げるなんて酷いじゃないッスかっ!」

横からギャンギャンうるさく騒ぎ立てるのは髪の長い少女。

「ヒィッ! それを言うならアイツもだろ!」

「あれ幼女ちゃん!? キミもしかして私たちをオトリにしようとしてる!?」

「……気のせい!」

前方を走る白髪幼女が、一ミリもコチラ振り返らず一目散に走る。

「……デコイ姉ちゃん。追ってくる魔物何とかして!」

「デコイじゃねぇよ! やっぱオトリにしようとしてんじゃねぇかクソが! 水滅球(すいめつだま) !」

少女が後ろ手に投げると、煙幕のように水蒸気が広がりドーベルマンの魔物の姿を隠す。

「ひ、ひぃ! 飛び込め!」

煙幕によりコチラを見失った一瞬の隙をついて、魔法陣の書かれた扉に飛び込んだ。

「ふぃ〜……割としつこく追ってくんのね。はよ消えろや」

「……近くにセーフティゾーンあってよかった」

「だから俺は言ったんだ! 横を通り抜けるのは無理だってっ! ヒィ!」

廊下側でウロウロと歩き回り、コチラを窺っていた魔物は、程なくして溶けるように消える。

これは外にいる普通の魔物に見られる現象ではない。

ここはダンジョン……普通の法則で成り立ってはいない。

解明されていない事が多く、研究者の中には『誰かの見ている夢』や『何者かの記憶』なのではないか? と言われている。

だが、大体の人はそんな事を真面目に考えていない。

ただ共通の認識であり皆が重要なのは、うまく使えばダンジョンというものは、莫大な利益になる。その一点だけだ。

――――――――――――――――――――――

「セーフティゾーンって、本当にモンスター湧かないんスよね?」

「湧かねえよ……たぶん」

「そこは自信持って断言して欲しいッスね」

ドーベルマンの消え去った廊下を眺めながら、ため息を吐く。

う〜ん、やっぱ追いかけられたかぁ……。

いやね、負け犬野郎の話によると、入口の魔法陣から遠くになればなるほど、ダンジョンで得られる物も良くなる傾向があるらしいんだよ。

だから、ここは少し遠出してみようぜって提案してみたんだ。

ここ数日、負け犬野郎について回ってダンジョンに慣れて来たからさ、その方が実入もいいだろうと思ってね。

でも、大抵はモンスターが進行方向を塞いでて、入口魔法陣から遠出するのは難しい。

切実にダンジョン探索パーティの攻撃力が足りないね。

ゲーム的パーティ構成にするとこんな感じかな?

負け犬野郎 盗賊(荷物持ち)

幼女ちゃん 盗賊(鍵開け)

私 盗賊(荷物持ち)

ははっ、魔王も真っ青の勇者パーティだぜっ!

バランス良すぎて指名手配されるわこんなん……。

まぁそれでも実入を多くするために、モンスターのいるエリアを越えれないかなって思ったワケだ。

だから負け犬に『ちょっとアイツら倒してこいよ』ってニュアンスを伝えたら、一言……『死ね』って返されたよね。

でもまぁ、なんかピクリとも動かんし、横をソロ〜って通り抜けたら行けんじゃねって思ったんだよ。

それで三人で壁際をゆっくり歩いてみたら……いきなり三匹の犬コロが一斉にコッチ振り向きやがんの……。

後は見ての通り……通り抜けはNGらしいですハイ。

「地道に散策するしかねえだろ……魔物は避けて」

「ま、仕方ないッスね」

負け犬野郎といえば、私たちの有用性は認めているようで、付き纏っても文句は言わなくなった。

なんせ負け犬が一人でダンジョンに潜るより、持ち帰れるお宝の量と質が違うだろうからね。

こっちとしても、売買を代わりにやってくれるのなら美味しい。

それにコイツ……意外にも数字に強いというか、物によって高く買い取ってくれる店を選んでるっぽいんだよね。

買い叩かれそうになったらスッと、その商品だけ取りやめて別の店に持ち込んだりさ。

それで半分こっちにくれんのなら文句はない。

もしかしたら前職がそういった数字関係の仕事なのかもね。見た目完全に小悪党だけど……。

まぁ金が貯まるまで持ちつ持たれつでいこうぜ!

――――――――――――――――――――――

「ただいま〜」

「……おかえり」

「ダンジョン作ろうと思うんだよね」

「……なに言ってんの?」

スキマに帰って来て開口一番に告げたら、天然コアをイジっていた幼女ちゃんが、目線すらよこさずに『馬鹿かオメェ』みたいに答えた。

最近この子、私に厳しくない?

「お、弁当買ってきてくれてたんだサンキュ〜」

「……安かった。それで、ダンジョン作るってどーいうこと?」

「あぐあぐ、いや、言った通りだよ。この公園……というか、このゴーストタウンにダンジョンを作って人を呼び込もうって画策してんの」

「……もっちゃもっちゃ……」

幼女ちゃんの買って来てくれていた弁当を頬張りながらそう言うと、口一杯に食べ物をかき込んだ彼女は目を瞑りながら咀嚼し、考えを纏めているようだ。

「……ごっくむ……それ、なんの意味があるの?」

「おん?」

「……人がいないからココにきたのに、人を呼び込むとはこれいかに……」

「あ〜……」

そりゃそうだ。

なんも説明してないからね。

幼女ちゃんの疑問ももっとも。

あくまで人を集めて感情エネルギーを集めるのは、私の事情だ。

幼女ちゃんからしたら、わざわざ危険を増やす行動に見えるんだろうね。

『ダンジョンなんて作れるの!?』って疑問が出てこないのは……少々私に毒されすぎな気もするけど、しっかりと危機管理ができて偉いね。

ま、軽く説明しとくか。

「うむ、実はね。簡単に言うと防御力が上がるよ」

「?」

「まず、私は人の『感情』からくるエネルギーを求めています」

「……邪神のソレ」

あれ言い方ミスったか?

「あ〜うん、違くて……あれ?」

「……続けていいよ。たぶん信仰心とか、外にいるアレとかと似た感じだと判定する。……百歩譲って」

「あ、そぉお? ならいいや、防御力が上がるってのは、ダンジョンを作ってそのエネルギーを貯める事で、私たちが隠れやすくなる……というか、融通が利くようになるって感じ。ダンジョンを作るのは初めてだから効率とか分からんけど」

「……ならよし……手伝う?」

お、説得成功。

自分たちの身の安全が増えるのなら、幼女ちゃんも反対する理由はないわな。

「う〜ん、ちょっと作ってみないと、何を手伝って貰えばいいかも判断できないなぁ」

「……分かった。なんかあったら呼んで」

「うぃ〜、ご馳走様。じゃあダンジョン作るための下準備してくる」

私はスキマから出てジェットブーツを起動し、滑り台の柵をシャーっと駆け降りる。

ほんじゃま、このゴーストタウンに領域畑を広げようかね……。

ダンジョンを作るための能力は、領域畑前提の能力になりそうだからね。

さぁて、上手く作れるかな?

――――――――――――――――――――――

「…………」

髪の長い少女がスキマから飛び出した事により、中で一人となった白髪幼女は、食事の続きを再開する。

「むぐむぐ……ダンジョンかぁ」

チラリと少女の出ていった場所に、感情のないような視線を向ける。

「……たぶん……」

軽くため息を吐く。

そして、口の中の物をゴクリと飲み込んだ白髪幼女は、ゴロリと寝転がりスキマの天井を眺めた。

「……それダンジョンじゃないよ」