作品タイトル不明
拒絶の合鍵
「お、悪魔のコインみっけ」
建物の影に隠された、禍々しいコインがポップアップされる。
どーも私です。
今日も今日とて、私の領域でポチポチとゲームプレイ中です。
「んでぇ、何のゲームやってんのかって言うとね」
『slitースリットー』だよ。
うむ、私が一番最初にプレイして、滅多なことでは外さない能力。
まぁキモノお嬢とのダンスバトルでは、どうしてもスロットが足りなくて外しちゃったけどさ。
とにかく、何で今更スリットをプレイしてるのかって話なんだけど。
「少しだけ能力のバージョンアップをしたいんだよね!」
その為のリソース稼ぎに再度プレイしてんのね。
つってもスリットはクリア済みで、ストーリーは全部把握しちゃってる。だから今はスリットのやり込み要素をやってるところなんだよ。
そして、そのやり込み要素なんだけど、ゲーム中に存在する72個の『悪魔のコイン』を集めることなんだ。
そんなん前回プレイした時あったかな? ……とか思ってたんだけど、なんか6個ほど持ってたわ。
どこかで拾ってたらしい。
普通にプレイしても、この位しか持ってないんだから全部集めるってなると大変だ。
うん、ぶっちゃけ自力で集めるのは無理!
「諦めて攻略サイトのお世話だよ……」
悪魔のコインが何処に落ちてるか、事細かく網羅されてるわ。
そしてこの悪魔のコイン。
別に集めたところで、ゲームの進行が有利になるワケじゃない。
本当にただのやり込み要素ってことだね。
でもなにやら、全部集めて最終ステージにある扉に行けばムービーが見れるらしいよ。それを目指して悪魔のコインを集めてるって感じ。
「おい、こんな所のコインとか誰が分かんだよ……」
海岸沿いの崖をジャンプして回り込むとか、普通にプレイしてやらねぇよ……。そこ足場の判定あんのかよ。
まぁ、そんなこんなで72個全部集め切りました。
そして、ラストステージの地獄の門みたいな物に嵌め込むとムービーが流れ始めた。
ゴゴゴゴゴと重苦しい音を立てながら開かれた扉の中は、なんか紫色のモヤが掛かった空間。その、空間をただひたすらに歩く。
そして歩くたびに映し出される古代の光景。
次々と変わりゆく映像……。
「えっと、よく分からんけど、悪魔の成り立ちみたいな感じ?」
う〜ん、苦労して集めたわりには、イミフで小難しい内容だったなぁ。
「どんな意味があったんアレ?」
あ〜なるほど、攻略サイトの考察によると、同じ会社の別のゲームとの繋がりがある内容だったらしい。
実は世界が繋がってたんだよっていう、ファンなら嬉しい隠し要素だったワケだね。
いいじゃん、私そういうのロマンあって結構好きよ。
「私はソレやってねぇけどな!」
ちくしょう、なんか順番間違えた感が凄いな。
どうせならこの別作品やってから見れば良かった。
ま、そのうち気が向いたらやってみてもいいかもね。
つーことで領域解除!
「ただいま〜」
「……いきなりなに?」
現実世界に戻ってきたら、幼女ちゃんにジト目で見られた。
あはは、そりゃそうよね。
私はたった今、『私の領域』から戻ってきた所だけど、幼女ちゃんからしたら私がイキナリ『ただいま』って言い出したようなもんだからね。
すまんすまん、気にすんな!
「ほれ、さっき幼女ちゃんと話し合ったヤツ、なんとかできたッスわ」
「……はやいね」
「じゃじゃ〜ん! コレをキミに授けよう!」
そう言って私がポケットから取り出したのは、メダルのついたネックレス。
「……これで、わたしはココに自由に出入りできるの?」
「ちょいと注意事項があるから覚えといてね」
ネックレスを受け取って、マジマジと幼女ちゃんは観察する。
うむ! 実はスリットの追加した能力というのは、幼女ちゃんが私がいなくてもスキマに入れる機構を作る事だったんだ。
いままで私が側にいて、スキマに誘わないと入れなかったんだけどね。彼女単体で入れるようにしたんだ。
と言うのもねぇ。お金を集めるにしても何にしても、情報がなくてはどうしようもないってことで、二手に分かれるのが効率いいんじゃないかってさ。
マフィアに追われてるけど単独行動して大丈夫なのかって考えもあったんだけど、まぁ大丈夫かなって。
よく考えたら、この世界の街って発展してるからさ。メチャ広れぇワケよ。
だから簡単には見つからんハズ……。
もちろん警戒は怠っちゃいけないけど、幼女ちゃんもだいぶ警戒心は強いから、そうそう見つかるような目立つマネはしないだろう。
帽子被ってりゃ大丈夫よ。
そうなると、帰りがバラバラになることもあるだろうからね。だから私が居なくても、 お家(スキマ) に入れるようにってさ。
まぁ、簡単に言うと合鍵だね。
「……うわぁ……キモ」
幼女ちゃんが、ネックレスについたコインを裏返してそう呟く。
う、うん。それはスマン。
コインには、おどろおどろしい顔がレリーフされている。
これね、悪魔のコインだよ。
ゲーム中と同じデザインだからちょっと怖いよね。
でも諦めて! デザイン変えるとゲームエネルギーのリソース食っちゃうからさ。
「ささっ、登録するから早速付けてみて!」
「……」
納得いってないような顔すんな。
「じゃ行くよ〜。登録!」
別に口に出す必要ないけど、幼女ちゃんに分かりやすくする為だよ。
――ォォォ……ォォォオオオオォォォオ……
幼女ちゃんの首に下げたネックレスが、妙な唸り声をあげた。
――ウォォォオオオオォォォ……
無表情よりだったコインの顔が目を開き、血の涙を流す……。
苦しむような表情をした悪魔のコインは、憎しみの籠った顔に変わり泣き続ける。
やがてソレは収まり、無表情に戻った。
「登録終わったよ〜。これで幼女ちゃんも一人で出入り出来るからね!」
私の言葉を聞いて、幼女ちゃんはニッコリと笑い、ネックレスを大事そうに握りしめて……
「……キモい!!」
床に叩きつけた……。
何すんねん……。結構苦労してソレ作ったんやぞ。
「……邪悪! 気持ち悪い! オバケ姉ちゃんのセンス終わってるよ!」
「おまっ! 私の感性じゃねぇし! 仕方なかったんだよ! とにかくデザインは変えられないからね!」
私の言葉にグッと顔を顰めたが、本当に仕方がなかったのだと分かると、汚いモノでも触るように首にかけた。
「お〜しお〜し、納得したね?」
「……」
「気に入って貰えたようで何よりですなぁ」
「……めでてぇ」
頭の事かな?
キミも言うようになったね。
でもお母さんに再会したら直すんだよ。
怒られちゃうからね。……たぶん私も。
「じゃあ注意事項いくよ。まず『悪魔のネックレスはキミ以外使えない』さっき登録したから分かるよね?」
「……いま悪魔っていった?」
「私みたいに、幼女ちゃんが第三者をスキマに入れる事も出来ないから気をつけてね」
まぁ、他に誰入れんだよって話だけどね。
幼女ちゃんも、そう思ってんのか流している。
「次に、『幼女ちゃんはスキマの場所は特定出来ない』見ただけじゃ判断出来ないから、ココの場所覚えといてね。ヌルリと入れる場所があるからソコだよ」
「……分かった」
「最後だよ。『そのネックレスは、幼女ちゃんから離れると消滅する』だから手放さないように気をつけて、もし紛失したら私が帰ってくるまで外で待ってて」
正確には五メートル以上離れたら消滅する。
「……なんか条件きびしくない?」
「仕方ないねん……」
うん、色々条件を決めたのは、制限でリソースの確保をしたからなんだけど……それにしても、私も能力の変換効率が悪い気がしてるよ。
まぁ予想はできてるんだ。
たぶん……私の本心が拒絶してるんだろうね。
本当は、勝手にスキマに出入りする存在を作りたくなかったんじゃないかな?
だから効率が悪いんだと思う。
「ま、いいや。外に出て今日の探索を始めようか! ネックレスが、ちゃんと機能するかも確かめたいしね」
「……承知」
――――――――――――――――――――――
外に出て確認してみたが、問題はなさそう。
遊具のスキマに、一人で出入りする幼女ちゃんを見るとゾワゾワするけど。
幼女ちゃんは満足気だ。
「ふむ、相変わらず人気がないねぇ……」
遊具から顔を出して辺りを見渡す。
公園は寂れていて、周りの建物からも人の気配はない。
水道は生きてるし、街灯も付いてる。
手入れがされてないのか、所々チカチカしてたり、消えたりしてるけど。
「なんでこの街って人が居ないんだろ?」
辛うじてだけど、インフラが生きてるんだよね。
まぁ、この世界のインフラは、整備しなくても長持ちするのかもしれんけど。
住むのに問題はなさそうなんだけどね。
ホントになんでこの街は捨てられたんだろ……。まぁ考えても分からんか。
偶々で理由なんてないのかもしれんしね。
「……予想できるよ」
とか言ってたら幼女ちゃんが私の呟きに返してきた。
え? 分かんの?
もしかしてこの世界の常識だったのかな?
「……たぶん、出るからだよ」
ファッツ?
「な、なにが?」
「……よくないもの」
「悪霊ってこと?」
「……………………違う。でも、そう思われたんだよ」
幼女ちゃんは少し考え込んでそう答えた。
「えっと、なにそれ? 怖いんだけど……場所変える?」
「……大丈夫。わたしには害がないから……」
「私はぁ! 私に害があったらどーすんのぉ!」
「…………オバケ姉ちゃんも大丈夫」
えぇ……本当に?
流石にそこまで言われたら気になるんだけど……本当に私に害はないんだよね。
「ねぇ、出るってさ。結局何なの……」
勇気を出して聞いてみたら、幼女ちゃんはキョロキョロ見たわして、ある一点を指を指した。
「……アレ」
「んん〜?」
何もない……。
幼女ちゃんの指の先には、ひび割れた道路があるだけだ。
でも、少しだけ……漏れたガスのように景色が歪んでるような……。
「あ……」
「……オバケ姉ちゃんには、もしかしたら見える……かも」
あ〜……もしかしてあのパターンかな。
遊園地のドレス女を思い出す。
私はポケットから懐中時計を取り出して、蓋の裏を目に当てる。
これ豚貴族の飛行船からパクった懐中時計なんだけど、蓋の裏側の覗き穴の周りが鏡みたいに反射してるんだよね。
その鏡部分に反射させるように景色を映して見れば。
「なんじゃありゃ」
「……やっぱり見えるんだ」
道路を歩く黒い影。
辛うじて人型のソレは、目と口だけがポッカリと空いてるように見える。
しかし、意思はなさそうだ。
「……街中に居るのは珍しい」
「どう見ても悪霊なんですけど幼女さん……アレ本当に大丈夫?」
「……悪霊じゃない。でもよくないモノ。お母さんが言うには、人の『悪感情』が出たモノ……魔力の一歩手前」
「アレが居るから街に人気がないワケ?」
「……普通じゃ見えないし……証明もできない。でも、悪感情が元だから人に良くない。弱った心に入り込もうとする。……心が弱ってたりネガティブだと狙われる」
「……」
「……悪感情を増幅する。そして侵食されちゃうと……ちょっと見える」
「……それもう悪霊じゃん」
まぁ、なんとなく分かった。
あの悪霊がいるからこの街に住んでた人間が、狂っちゃったんだ。
全員じゃないだろうね。たぶん数人。
何人かの人間が狂ったように暴れて、『しかも何か見える』とか言い出したんだ。
つまりは、悪霊の仕業ってことになって、呪われた街とか言われた。そのせいで名前の通りゴーストタウンになったんじゃないかな?
あ、ちょっと分かったぞ。
幼女ちゃんの『解の巫女』って、なんで巫女なんだろうって思ってたけど、昔は霊媒師みたいなことやってたんじゃないかな。
幼女ちゃんが大丈夫って言ってんのって、自分の能力で消しされるから……とか?
「あれ幼女ちゃんなら何とか出来る?」
「……人に入り込んでないなら出来る。けど面倒だし……無駄。アレこの街にいっぱい居る」
「なるほどねぇ……良く分からんけど分かったよ。じゃあ気を取り直して、人のいる街に行って情報を集めようか!」
「……今日は……分かれて行動するんじゃなかったの?」
怖えぇんだよ……分かるだろ。