作品タイトル不明
意外とついで
意外なことに、ジェイドは特別苦労もなく盾を片手で持ち上げる。
「・・・重い」
「それがお前と仲間を守る。慣れろ」
姿勢は悪いが・・・どうせ片手で持ち上げるのはバッシュの時ぐらいだし、その時にもたつくようなら強化魔法でも掛けちまえばいい。
「クッソ‼ 要件はこれだけだったよな⁉ なら、もう行くぞ‼」
不愉快だと書いた顔で盾を引きずるようにして店から出てくジェイド。
「ちょっと‼ 待ってください‼ ジェイド様‼」
それを追うように、キューティーが続き、
「アンタ達! どこ行くのよ‼」
エイラが叱りつけるが、止まらない。
ケイトはどうしよう? とエイラを見て、見られたエイラがこちらを向く。
「すみません! 呼び戻してきます!」
そう言って、ケイトを連れて出ていこうとするが、
「構わねぇよ。それより、合流したらギルドで簡単な討伐依頼でも受けといてくれ。それと・・・」
盾を選ぶ時、ついでに見繕った手袋を渡す。
「これを持っていけ」
「皮手袋? でも!」
「わかってるさ。ギフトだろ?」
手袋を受け取ったエイラを押さえて言う。
「別に詮索するわけじゃねぇが、癒しの手とかそんなとこだろう」
「どうしてわかったんですか?」
「よくいるんだよ。そういう奴はな。けどな? 手先や指先ってのは怪我しやすいんだよ。だから、手袋ぐらいはしといたほうがいい」
「でも・・・」
「最初は手のひらの辺りを切り取って使うでもいい。慣れりゃぁ手袋越しにでも使えるようになる」
よくある勘違いで、手や目に関係するギフトを素手や裸眼じゃないと使えないと思ってる奴は多い。
実際には手袋をしてようが眼鏡をかけてようが関係ないんだ。
「戦闘中に手先やらの怪我を治してる余裕はねぇだろうし、あったとしても、後々魔力が尽きた時にアレを治してなきゃ仲間を助けられたのに。なんてことになるかもしれねぇ。かといって、治さなきゃ治さないで痛みが気になりゃ集中を乱すことになる。それがミスにつながるし、そのミスで死ぬことだってあるかもしれねぇ」
気にしすぎだ。という輩もいるだろうが、痛みはあるだけで判断を遅らせるし、精密な動きを阻害する。
そもそも、怪我なんざあって得するもんでもないしな。
エイラに渡した手袋を指差して、
「そいつ一つで、そういう可能性を減らせるんだ。つけても罰は当たらねぇと思うが?」
そう言うと、エイラも手の中にある手袋を見つめて、
「そう、ですね・・・。ありがとうございます。試してみます」
手袋を装着しながら店を出た。
残されたケイトも軽く頭を下げてから、走って追いかけていった。
「オメーはいかなくていいのか?」
「支払いとかあんだろ? それとも、タダにしてくれんのか?」
「んなことになったら、次に来た時にゃぁここは別の店んなってるだろぉよぉ!」
適当に言い合いながら、腰の魔法鞄から袋を取り出す。
中には俺の持ち金の大半が入れてあるそれをカウンターに置く。
そいつの中身を見たバルシムが、
「こりゃなんだ⁉ うちは盾と鎧とおまけの手袋でこんなにボッタクル店じゃぁねぇぞ⁉」
気持ちは嬉しいが、ケンカ売ってんのか? と受け取ろうとしない。
「さっきの分だけじゃねぇよ。あの鎧、売らずに置いといて欲しいんだ」
「あの鎧をか?」
「ああ。それに、聞きたいこともあってな。その報酬だと思ってくれ」
「なにが聞きたい?」
「前回の話の続きだよ。あの槍はまだ売れてるか?」
店の端に置かれた樽に入れられた軍の払い下げ品を手直しした槍。
「おう! ついこの間も3本ほど、な」
「時間帯と服装は見てくれたか?」
「一応なぁ? 昼に兵士が来た。鎧は街にいる連中のと同じだったぜ?」
「マントは覚えてるか?」
「なんでまた、そんなとこまで?」
「皇国軍はマントの色で大雑把な所属がわかるんだよ」
「そぉなのか? 気にしたことなかったなぁ・・・。こないだ来たやつぁ赤だったはずだ」
「赤か・・・」
赤は中央司令本部だ。
形式上、最高司令官は元帥の皇王様ではあるが、政治で動かされることがある以上、誰が指示を出していてもおかしくはない。
同じ赤マントでも、鎧が違えば皇族の親衛隊だったり、どっかの領軍だったりするんだがな。その場合、親衛隊はほとんど街には顔を出さねぇし、領軍も皇都にまで出張ってくることはそうないからな。
同じ鎧でも、おもり隊が買い戻してんなら、マントの色は緑のはずだ。
これじゃ絞り込むのは無理だな。
まぁ、逆に言えば内乱に全く関係ない可能性もあるってことだが・・・だったら、なんのために? って話になる。
ベルが調べて尻尾も出さねぇ奴が、こんなところでボロを出すわけもねぇ、か。
「よぉ。ちょっといいか?」
悩みの種について考えていたところに、バルシムから声がかかる。
「さっきの話なんだが・・・」
なにか気になることでも思い出したのか? と思ったが、違った。
「これじゃぁ金額が足りねぇよ」
は?
一瞬、そのまま声を出しそうになった。
結構な額を渡したはずだ。本人もボッタクリじゃねぇぞ? というぐらいには。
飛び出しかかった声をどうにか飲み込んで、聞いた。
「・・・どういうことだ?」