作品タイトル不明
side――クライフ2
まずい!
本能が警鐘を鳴らす・・・鳴らすが、ほとんど座り込んだような状態。
ここから立ち上がって回避までは無理がある。
かといって、地面を滑るように移動するのも不可能だ。
盾と鎧が重い。なにより、どこかでつっかえる。
枝垂れ落ちるような冷気が背を撫でる。
ヒヤリと首筋に掛かる気配を感じた瞬間、パキンッ! と割れるような音。
視界の端で亀裂が走る。
変化したのは氷の板だった。
板に映った俺が、剣を突き出していた。
「「―――ッ⁉⁉」」
驚いたのは俺だけに納まるはずもなく。
ドラゴンが息を呑むなんて、珍しい光景を目の当たりにした。
喉が動くのと、どちらが早いか。
鏡映しの左手が差し出した氷の剣は、まもなく振り下ろされそうだった腕へと伸びる。
けれど、その攻撃には大した威力はない。
だからドラゴンも逡巡はしても止まらなかった。
ただ少しだけ、さっきよりもいい態勢で受けられそうだ。そう思った。
「グァ――ッ!」
短い悲鳴。
俺のじゃない。
盾にのしかかる衝撃。
だけど、芯を捉えていない。
外側に逃げる力に合わせて、盾と体を回転させて押し出されるように滑る。
潰される危機を回避し、横移動の勢いを使って立ち上がる。
パラパラと砕けた氷の破片に、赤が混じる。
血だ。
間違いなく、ドラゴンの血。
どこから⁉ よくよく見れば、爪と鱗の間。弱い肉の部分から血が垂れる。
弱点・・・には無理があるか。
歯茎や鼻の穴を狙っても、うまくいかないのと一緒だ。
本当に運よく、たまたまそこに刺さっただけだ。
それでも、十分すぎるほどに意味があった。
なぜって? ドラゴンの目つきが変わったからさ。
恨みがましい視線がジーナへ飛び、変形した氷の板は握りつぶされる。
狙いが定まったらしい・・・けど、そうはさせない。
あの青い炎は罠に違いない。
ゼネスとエリックが、なにかをするための。
そのなにかまではわからなくとも、アレが罠だってわかっていればいい。
ドラゴンはそこを通れない。
それさえわかってれば利用はできる。
檻に見えなくもないから、追い込んでみるのはどうだろう?
流石に露骨過ぎるか?
でもこのドラゴンなら―――・・・・・・。
そんな浅はかな考えが見透かされたような感覚があった。
確信があるわけじゃない。
ただなんとなく、今そう思った。
目の前のことばかりに気を取られ、雑な戦い方をするドラゴン。
ここまではその印象通りで、言ってしまえば知性をあまり感じなかった。
なのに、なんで俺は見透かされてるなんて・・・?
自分の思考のはずが、違和感に疑問を抱く。
窺うように見上げても、見下した目と目が合うだけだった。