軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

無明

振り返る。

景色さえ置き去りにするような速さで。

結果、確かに置いてきた。

何も見えねぇほどに。

「――ッ‼‼」

振り返る。

反射的に。

さっきと変わらない速さで。あるいは、それ以上で。

「―――ッ⁉⁉」

速すぎたせいだろう。

遅れ来て気付く。

1度目に振り向き、何も見えなくなったことを知覚した瞬間に、俺は舌打ちをしたはずだ。

それも反射的に。

なにせ癖になっているんだ。どうしようもねぇ。

だが、なにも。

聞こえはしない。

―――・・・ここに来てかッ‼

まさかここに来て、2つ以上の感覚を同時に奪うような真似を!

出来るなら最初から使っとけって物言いは流石に通らねぇか。

油断を誘う目的なら完璧すぎるほど刺さってやがる。

わざわざ言葉にして確認するぐらいだ。

切り札としても、切り時としても、これ以上ない。

「―――っ、・・・・・・」

声を出そうと息を吸って、考え直す。

本当に2つだけか?

そんな疑問が脳を過ったからだ。

素早く拳を握ったものの、なにも感じねぇ。

力が入っているかすら・・・・・・。

嗅覚は元から頼りになるほど鋭くもねぇし、分かるような何かもない。

味覚に至ってはこの期に及ぶわけもない。

震えてる気がしてくる。

だが、それさえ―――。

己の存在を揺るがす恐怖。

今、生きているのか?

生きているとして、それはいつまで続く?

目の前にはドラゴンが居て、今の俺は痛みさえ感じられない。

攻撃を避けるなんざ夢のまた夢だ。

俺は、自分が死んだことさえ認識できねぇんじゃ・・・?

どうしても、そんな弱気が忍び寄る。

「・・・・・・・・・――――――っ!」

深く。

深く息を吐く。

迷いも、恐れも、焦りも、全て。

吐き出す。

まだ、手はある。

魔力で繋がるあの感覚。

あれだけは五感の外にある・・・・・・はずだ。

もし、これでもダメだったら?

不意に浮かび上がる吐き出し損ねた弱さの欠片。

『もしなんて言葉は冒険者にはねぇんだよ!』

それを打ち砕いたのは、いつかを歩いてきた自分自身だった。

空になったこの身を器に。

魔力を集める。

魔力なんてもんを感じられなくても、今まで通り。

誰かが信じてくれた俺自身を信じて。