作品タイトル不明
途絶
「ふーん。それが風の正体かもってことね。あ、寒さ? そっちは心配ないわよ。手がかじかんだりとかもないわ。っていうか、融合強化をアタシにも無理やり教えたのはアンタでしょ⁉ 忘れてんじゃないわよ‼」
「炎強化で体温を調整してたのか」
「当たり前でしょ! そんなことにも気付かないって――アンタの方が心配になるわね。大丈夫なの?」
「どうだろうな? まぁ、今のところは問題ねぇはずだ」
「ったく、しっかりしなさいよね‼ 次も風に乗って進むんだから、場合によっては戦闘になるのよ‼」
「わかってるさ。そっちも、くれぐれも音には注意しろよ」
「壁を掘り進んで来たら流石に気付くわよ。それより、底に潜まれてる方が厄介ね」
「壁の幅が狭くなってねぇってことは、まだ底までは遠そうだが・・・」
「ワームだかイーターだか知らないけど、ソイツらの道っていうのが底から遠いかはわからないでしょ? いざとなったら探知で調べるつもりだけど、底まで届くかはわからないものね。不発に終わっちゃったら魔力の無駄だし、ギリギリまで粘るんだけどね」
アンナとの会話はこんな感じで。
話し終わるとまた、キビキビと降下へ移った。
「イーターだとすれば、攻撃方法は単純に丸飲だけど、ゼネス。なにか対策をするべきだと思うか?」
降下途中でクライフが訊いてくる。
「融合強化はさっき掛けたからいいとして、腹から出る方法と出た後の処理だな。どれを選んでも面倒くせぇのは間違いねぇが、尊厳か時間か。どっちを取るか」
丸飲み・・・というと、傷付けずに食道へ帆織り込むことの様に思うかもしれねぇが、実際にはワームやイーターには鋭い牙が何重にも生えていて、飲み込まれる過程で無防備な生物は肉の半分程度を小削ぎ取られる。
それの対策として融合強化・土による肉体強度の上昇をおこなった。
コレで飲み込まれても無傷で済むはずだ。
そして選ぶのが尊厳か時間。
要は糞の様にケツから出るか、別の方法でイーターを殺して腹から出るか。
ケツから出る分にはイーターが死ぬことはない。
消化されてやるつもりがねぇからケツはぶっ壊れるが、死体が出ねぇ分、時間に優れてると言える。しばらくイーターに乗っておけば移動も楽できる可能性すらあるな。
代わりに、糞まみれで排出されるために尊厳は失うかもしれねぇ。
腹から出るとその逆だ。
糞に塗れねぇから尊厳を失うことねぇだろうが、死体が穴に詰まる。
移動や合流を考えれば時間を奪われる。
イーターはその性質上あまり群れることはねぇが、それでも数匹なら同じ場所に居てもおかしくねぇ。そうなりゃその分だけ足止めを喰らうに等しい。
「イーターの掘った穴が地上から続いていたあの洞窟へ近づいていそうなら、その穴を進む必要がある。目的で考えれば、イーターに丸飲みにされたまま移動するのが効率としてはいいな」
「糞塗れの皇子になるけどな。他にも、全員で同じ個体に丸飲みされる方法を考えたり・・・」
「糞塗れは仕方がないにしても、同時に飲み込まれる方法は考えないとな。他のイーターが居たとして、同じように動くとは限らないわけだから」
「ま、そんなこと言ったら飲み込んだイーターだって思い通りの方向へ動くわけじゃねぇだろって言われそうだがな」
「方法はあるだろ?」
「そりゃぁな。探知で道を調べて、内から痛みを与えてやれば、ある程度は―――」
会話の途中でクライフの動きが止まる。
どうした? と声に出すより早く。
「縄が・・・切れてる!」
行き場を失った縄の先だけが宙に揺れていた。