作品タイトル不明
限界線
暗い空の境界線。そこから見下ろす景色。
「やっぱ星ってのは丸いんだな」
『やはり・・・ということは人類にも星の形を知るものが居たのか?』
「いいや、単純に俺がそう思ってただけだ。太陽も、月も、他の星にしても、見える限り全部が丸いからな」
『それはその通りだな。では、この星が青いことにはどう思った?』
「まぁ海の広さを思えばそんなもんだろう」
『なんだ、詰まらんな。もう少し驚けばよいものを』
「驚いてねぇわけじゃねぇよ。ただ――」
「見ろ‼ ゼネス‼‼ 見たことない大陸があるぞ‼‼ あそこにはなにがあるんだろうな⁉」
「あの黒い空間ってなに? なんかイヤな感じがするんだけど、アタシ達が単体で活動できる空間なの?」
「そうは見えないですね。僕達の体に異常がないのは結界のおかげかな? それとも、あの虹色の壁の力? 両方だったりするのかな? でもだったとしたら、かなり冒険的な行動過ぎるますね? 結界の性能によってはどうなってたか・・・」
「結界はあくまで条件を付けてそれを拒絶する魔法ですので、この場合では役に立っていない可能性が高いでしょう。そうなると、龍王の護りはどんな結界よりも強固で完全なものになってしまうということに――・・・ですが、そう考えると私達が生存できている事実が矛盾してしまいますね? 空気をも拒絶していれば息が続きませんので」
「ふむ。それよりも気になるのは外の気温だね。てっきり太陽に近付いた分、暑くなると思ったのだけれど、空気が澄み渡るようなこの透明感・・・いや、澄み渡るどころか薄くなっているのかな? 山の頂上に近付くにつれ、気温が下がるのと同じ現象だとすれば、地表の温度は太陽光の量と空気中の成分によって変化する? しかしそれだと、城下とそれ以外での気温の差に違和感が――」
各々が気になる所へ視線を向け、言葉を発する。
当然。驚きもそれらの中にあり、その感情は俺のものより遥かに大きく。
気後れってほどじゃねぇにしても、負けた感情は純粋に発露し辛い。
『まだ時間はある。気になることがあれば答えてやろう。もちろん。我らの知る範囲で・・・だがな』
龍王は星の狭間を悠然と羽ばたきながら述べると、興奮気味のクライフが我先にと質問した。
「あの北大陸よりさらに北にある白い大陸‼ アレはなんだ⁉ どんな地図にも乗っていなかったはずだぞ⁉」
『アレこそが我ら竜族が住まう極地だ。人の身では僅か数時間の生存でさえ難しい極寒の地。故に人類が知らずとも無理からぬ話』
「極寒! だとすると白いのは雪なのか⁉ なんでそんなところに⁉」
『雪ではなく氷だ。何故あの地に住まうかと問われれば、身を護るためだ』
「ドラゴンが⁉ なにから身を⁉」
『汝ら人類よ。人間は数が多い。その分、愚かな者も数え切れぬほどに居る。その中には、我らドラゴンの血や肉で不老不死を得られると考える馬鹿や、爪なり牙や鱗などを手に入れ売り捌こうという者も後を絶たぬ。いくら竜族と言えど、幼体ともなればどうしても犠牲になるものが現れてしまう。故に、人の身では辿り着けぬ極地へと移ったのだ』
なんとも感想の言い辛い話だ。
金属鎧は極端な高温にも低温にも弱いからな。武装した人類から離れるためなら、その移住は極めて合理的な判断だと言える。
しっかし竜殺しと言えば、今でも語り継がれる伝説だが、その概要が赤子殺しだったときかされちゃ、浪漫もクソもねぇ話になっちまったな。
何気ない質問から重い返しを喰らったクライフは、
「・・・・・・・・・すまない」
微かに絞り出すような声で謝るしかできなかった。