作品タイトル不明
下位視点
side―――???
なぜ、そんなことをしなければならないのか?
それが唯一にして絶対の感想だった。
なにを言われたのか?
『北大陸の人間を調査して来い』だ。
本当に意味が分からないと思わないか?
我らはドラゴンだ。
それがなぜ、なにが楽しくて人間の調査など・・・・・・。
だが、逆らえない。
理由は当然、ドラゴンだからだ。
命令してきたのは龍王の1頭。
親や祖父母の様に龍王よりも年上ならまだしも、我らは普通に龍王より後の生まれ。断れるだけの要素がない。
その上『加護が低下する恐れがあるが、コレは必要なことである。調査完遂後の待遇には力を添えよう』だと。
もう一度思う。
なぜ、そんなことをしなければならないのか?
しかし、やらなければならない。
役目として与えられたからだ。
そして、なぜ我らが選ばれたのかも直ぐに理解した。
集められた4頭は全員、比較的に加護のLvが低いのだ。
例え下がっても痛手が少ない立場ゆえに選ばれた。
これほど心外なことはない・・・が、断れないのも事実。
集められた我らは、ただ言われたままに北大陸へと向かう。
『精神操作の恐れがあるため、保護魔法には力を入れるように』
とも言われたが、我らはドラゴンである。
そんな恐れなどあるものか。
北大陸を訪れて驚いたことは、人間が野生に帰っていたことだ。
身なりは汚く、欲求に忠実で、狩りを基本とする生活。
人間という生物を初めて見たが、聞いていた生態と随分違う。
魔法と道具を頼りに秩序により社会を形成し、外面のために生きていると教えられてきたのだが・・・聞き及んでいた生物よりは目に映る人間の方が、いくらか健全で好意が持てる。
そんな感想を抱いていた。
もう一つ驚いたことは、この大陸全土の人間が野生と化していたことだ。
事前に人間の生態を知ってていなければ、これを異常だと見抜けなかったことだろう。
利権を求め、土地を奪い合い、欲望のために殺し合う。
そんな醜い生物だと知らなければ、この光景も微笑ましいで済ませた。
とはいっても、異常であることが分かったとて。
それがなんなのだ?
もう帰ってもいいのだろうか?
こんなことのために働かされたのかと思うと、怒りよりも呆れが上回る。
そこへ、
『応答せよ。北大陸の状況はどうなっている?』
急に頭に声が響く。
これはあの龍王の声に違いない。
違いないが、どうなっているのだ?
応答? どうすればよいのだ?
4頭で顔を合わせるが、答えは出ない。
しかし、全員の表情に疑問符がついていたことで、同じ状況であることが分かったのは僥倖だった。説明をし直すという手間が省けたからだ。
その後、魔法の詳しい説明を聞いてどうにか応答に成功する。
まぁ続く質問攻めに難儀することになったが・・・。
『荷物の運搬がありません。人間は商売をするのでしょう?』
『子供の声が聞こえないの。静かすぎるのは不気味よ』
『臨戦態勢・・・でありますか? そうは見えないであります! 戦場特有の緊張感などは微塵も感じられないであります!』
もしかしたら、難儀していたのは我だけだったのかもしれない。
皆、よく観察していたようで偉いと思う。
いいや。我は無能ではない。
全体の情報を少しずつ集め、統合的に判断していただけだ。
役立たずではない。決してない。
その証拠にほら、
『よく周りを見ているな』
褒められただろう?
なに? 我以外を褒めた?
そんなはずがない。
なぜなら、そうであれば我には聞こえないように言うはずだ。
『しかし、まだ気付かないのか?』
いやいや、気付いていますとも。
ええ。我は無能ではないゆえ。
『ほう・・・? ならばこちらを見ろ』
言われて振り向く。
振り向く?
どこへ?
なぜ、そちらから声が聞こえてきたと・・・?
疑問に思うのが遅すぎた。
我らは全員でそちらを向いていた。
そのことに気付いたのは、我が背後からその光景を見ていたからだ。
反応が遅いからやっぱり無能じゃないか?
そうだ。我らは弱く―――そして等しく無能であった。