作品タイトル不明
同じ後悔
聞くに堪えない苦労談だった。
お互いにどれだけ依存し合っていたのかを確認するような。
そんな話をしておいて、
「どうして、引退だったんだ? お前なら、1人でも・・・・・・」
クライフは訊く。
「あの頃の俺は――っつーと、今は違うのかって話になるが、力不足だったのは間違いない。4人居ても怪我をするんだ。1人で続けてたら、死んでたかもな」
「パーティーを抜けて直ぐS級モンスターを1人で倒しておいてよく言う」
「あれは運がよかっただけだ。偶然と奇跡が何十にも重なった結果、運よく死ななかったに過ぎねぇよ。もし、魔力が繋がる感覚に気付けなかったら、その先が転移門じゃなかったら、ワンダーゴーレムの拳が振り下ろされていたら、あの巨体が停止した態勢で倒れてこなかったことも含めりゃ、もう一回なんざありえねぇ」
「それは、そうなのかもしれない。けど、サルベージに残っていれば、S級モンスターと戦うこともなかったんじゃないのか?」
「だとすりゃぁ俺のLvはそのままだっただろうな。それこそ、愛想をつかされてたかもしれねぇ。それを恐れて、お前達みたいに無理をしたかもな。どんな状況でも逃げずに戦ってたんだろ?」
「別に、逃げないと決めてたわけじゃないさ。わかるだろ? 息を合わせて逃げるのは、息を合わせて戦うより難しい。簡単な方を選んだだけだ」
「1人なら、逃げてたって?」
「・・・・・・・・・逃げられない、だろうな」
「己の価値を諦めきれねぇから、引き際を見誤る。引退してなきゃ死んでただろうって判断はおかしいか?」
「いいや・・・そうだな。お前だって、失敗ぐらいするもんな」
「ワンダーゴーレムと戦ったことも、言っちまえば失敗だからな。安全確保を心掛けてたなら、戦闘は回避できてたはずなんだ。まぁ、直前にも色々とあったしな。後進の育成も初めてで、浮足立ってたのは間違いない。ただ、それがいい方向に転がったってだけだ」
「なら、俺達の後悔は・・・」
「・・・等しく無意味だな」
同じように後悔をしていた。
自分に力があったなら―――・・・・・・。
そんな妄想に意味がないことは、とっくの昔に知っていたのに。
捨てられない思いとして、ずっと。持ち続けていた。
次第に、誰ともなしに、クツクツと湧き上がるように、笑いを堪えられなくなる。
はっはっは! と声を合わせ、腹を抱え、机を叩いて笑い合う。
浮かべる涙は悔恨のせいじゃない。ましてや、悲哀や屈辱などであるはずもない。
偏に馬鹿らしかった。
何を悩んでいたのかと、思い上がっていたんだと。
自分なら、自分であれば、力があれば、それなら――と。
冒険者に”もし”はない。
散々言い聞かせてきた言葉が、今になって自分に。こんなにも綺麗に刺さるとは、走り出したあの時には思ってもいなかった。
だから笑ったんだ。
これ以上なく。
「~~ク、ハハ! 覚えてるか? お前が俺を誘った時の言葉」
「ハハハハッ! 覚えてるに決まってるだろ! 一緒に旅に出よう‼ 誰も見たことない景色を見に行くんだ‼」
ああ、そうだ。
その結末がコレだ。
馴染みの酒場で顔を突き合わせて、もしなんてねぇよ! って笑い合う。
間違いなく、誰も見たことがねぇ終わりの景色だ。