作品タイトル不明
同じ視点
「毒消しの用意ぐらいしてなかったのか?」
「してなかったんだ・・・してなかったんだよ。する人間が居なくなって、誰も引き継いでいないことにすら気付かなかった」
「そうだな。その辺りもきちんと話しておけばよかったな」
「お前が皇都に帰るとは思ってなかったんだ。お前なら1人ででも、冒険者続けていくだろうなんて、勝手に思い込んでた。あの日、いきなり引退を聞かされて大慌てさ。それぐらい、ゼネス。お前に頼ってばかりだった」
「サラマンダーの件も聞いたぞ。動きがよくなかったってな」
「ああ、そうさ。敵と味方の位置を完全に把握するだけのことが、あれほど難しいとは知らなかった。合図も決めてなければ、動きだって読めやしない。おかげで生傷が絶えない冒険になった」
「合図ぐらい流用すりゃぁよかったんじゃねぇのか?」
「俺はお前の位置には居ないんだぞ。それどころか、お前の位置には誰も居ない。同じことはできないさ。そのことに気付いたのが戦闘中だったせいで、かなり浮足立った。合図を出しても手が足りないんだからな。その後は連携の内容を固めたよ。自分達だけで完結させられるように。そのための合図も考えた」
「けど、それが出来てからは連勝だったみたいじゃねぇか。毒を除いて」
「そうさ。そのせいで足元を掬われた。考え抜いた連携が上手く決まって、怪我もしないで済んだ。だから、大丈夫だと思ったんだ。その結果が毒消しみたいな必需品の携帯忘れなんて、笑えないことなのに思わず笑ったよ」
「そうか。だが、それで終わりだろ? 学習しねぇほどの馬鹿じゃねぇんだ。もう不自由はなかったはずだ」
「ははは! そんなわけないだろ? 探索における続行や中止の判断。野営場所の確保。移動時に注意する点、移動先の選び方。きつい生い立ちの中で、欲しくもないのに得た知識だったかもしれないけどさ。俺達はそれにずっと助けられてた。強化魔法だって、お前みたいに上手くはないんだ。戦闘中に常時掛けてなんていられない」
「・・・それでも、1番活躍したパーティーだって聞いたがな。俺が居た頃じゃ考えられねぇ話だ」
「活躍、か。誰に聞いたか知らない――いや、あの子か。本当に1番の活躍だなんて言っていたか? 貢献度とか、そういう話だったんじゃないか?」
「違いがあるのか?」
「全然違うさ。貢献っていうのはギルド・・・ひいてはチャード集合国への素材供給量、あるいはそれによって金銭的利益を上げられたかどうかの話になる。最前線での攻略と違って、分岐を増やしただけの俺達じゃ1番の活躍とは呼べないだろう?」
「深度だとか、価値の話か」
「俺達は今まで珍しかった素材を供給できる分岐を開拓した。国やギルドからすれば金の生る木だ。でも、アドレスの頂上を目指すっていう冒険者での視点では、特別大きな価値はない。それに、貢献度が高くなったのはなにも、俺達だけの手柄じゃないぞ」
笑って答えるクライフの言葉に、まさかと思って視線を動かす。
「ジーナは関係ないさ。いや、関係ない・・・のか?」
「なくはないだろう! 君達が持ち帰った素材の使い道を作っているのは、私達研究者なのだからね! とはいえ、直接的な貢献はしていないね」
「協力してもらったのは分岐に後からやってきた冒険者の皆にだよ。なにせ、誰かさんが居なくなったせいで俺達は色んなことがわからなくなったから。わからないことを訊いて、その対価に。俺達が戦闘で得た新素材モンスター達の情報を教えたんだ。弱点とか、習性とかをさ」
「それで新しい素材が安定して供給されるようになって、結果ギルドの懐が潤ったってわけか」
「そういうこと。冒険者が知っていて当然のようなことを訊いたせいだろうけど、よく怒られたよ。今までどうやって来たんだ―――ってさ。その度に担当してた仲間が抜けて・・・って説明をするのも疲れたよ。その後の反応が揃って、そんな奴を手放すな‼ だったのも堪えたな。俺達だって、好きでそうしたわけじゃないって説明までしなきゃならないんだから」