作品タイトル不明
同じ気持ち
「・・・・・・・・・俺は、お前達の邪魔をしたくはない。いつまで続けられるかもわからねぇ冒険者家業で、誰もが夢見る前人未到のアドレス攻略を行うお前達の残り少ない時間を奪うような真似をしたくねぇんだ。だから」
「だから何も訊くなっていうわけ? 何もなかったことにして、久しぶりね~なんて上辺だけの会話で終わらせろっての? 冗談でしょ?」
「確かに。アドレスの攻略は冒険者の夢とは言われますけど、僕らがそれに固執していないことは覚えてくれてますよね? あくまで力試し。いつか、冒険者を辞めた後のための実績作りだって言ってたじゃないですか!」
「そんなことよりも、なぜそう思ったのか・・・ということの方が問題ではありませんか? 私にとってゼネスさんからのお願いは何よりも優先されることなのは説明のよりもありませんから、やっぱりアンナさんのせいによるところが大きいかと思うのですけれど」
「ちょっと! なんでアタシだけのせいなのよ‼ どうせ自分とクライフを重ねて、肩が痛いとか腰が痛いとかで気を使ったに決まってるでしょ‼‼」
迫真のアンナの突っ込みが笑いを誘う。
年齢や時間って意味じゃ、あながち間違ってもねぇんだが。
「ま、そんなところだ」
「ひどいな・・・ゼネス。怪我でもしたのか?」
「おや? そうだったのかい? 体に悪いところはなさそうに思っていたのだけど」
「てめぇのせいで気分は悪いがな」
口を軽くさせるためか、軽口に乗っかるクライフと身勝手に楽しむジーナ。
「・・・・・・・・・・・・」
緩衝地帯のような乾いた沈黙が横たわる。
集まる視線は真剣であるが故に、決して逃がしはしないという意思が見て取れる。
恐らくどんな会話で濁そうとも、この名状しがたい時間は続くんだろう。いつまでも。
満足する答えが得られるまで―――。
そう考えれば、観念するには余りある。
「お前達がアドレスの攻略に乗り出したのは、俺が居なくなったからだろ? 俺が居たら足手まといになる。そう思ったから、あの時・・・俺を諭した。これ以上は無理だって。なのに、そうまでして取り組んでる今を――諦めて欲しくないんだ。また俺のためだけに」
だからこそ、正直な言葉で真摯に向き合おう。
自分の気持ちと。大切な仲間と。
「ハア⁉ アンタそんな―――」
「―――それは違うぞ。ゼネス」
反射的に声を上げたアンナを鎮まらせるほど、落ち着いた通りのいい声でクライフが言う。
この話し方は皇族としてのソレだ。
見るのも聴くのも久しぶりだが、相対するのはもっと久しい。
「・・・・・・むしろ、逆だ。俺達が悪かったんだよ」
深く息を吸い込んで数秒。
言葉を探してから続けると、皇族としてのソレは一瞬で消え去り、代わりに申し訳なさそうな雰囲気をまとう。
「俺達がお前に甘えすぎてたんだ。それがお前の成長を妨げていた。そんな簡単なことに気付いたのは、もう随分と経ってからだったな」
その言葉の意味が、俺にはよくわからなかった。