作品タイトル不明
違う答えだという
「また、つまらないことを考えているんじゃないのかい?」
油断した。
ジーナがこれ見よがしに耳元で囁く。
「・・・なんのことだ?」
「君のことさ。折角の英雄譚に集中していないようだったからね」
「人のことが言えんのか?」
「私は今もここで活動をしているんだよ? 彼らの活躍だって承知済みさ。引退してから情報を集めてもいなかった君とは違ってね。だから、聞かなくても知っているというわけだ。なのに、仲間であったはずの君がしっかりと聞いてあげないのは薄情ではないのかな?」
仲間、だった・・・・・・今はもう―――。
薄情というのなら、そうなのかもしれねぇな。
だがそれこそが仲間のためなら、そうするべきだと・・・俺は思う。
「それとも、一方的に仲間であることを捨てるのかい?」
「ッ‼ 人聞きが悪いな。引退してパーティーを抜けた以上、仲間を気取るわけにはいかねぇだろ」
「そうだろうか? 私なら腹を立てるだろうね? 例え離れ離れになっても、心は一緒だと誓った仲なのに、勝手な想像でその約束を反故にされたなら、ねぇ」
「勝手な想像だと言い切る根拠は?」
「君は答えを聞いたのかい?」
「・・・・・・・・・」
「それを恐れているわけではないだろう。君は想像通りの答えを聞いたからといって悲しんだりはしない。そうだろうなと、納得して終わりのはずだ。私には理解できないけれど、君はそんなことで傷ついたりしない合理性を持っている。ただ―――責任という言葉を好きすぎる」
責任。
この言葉が、その意味が、好きな人間なんざいるわけがねぇ。
もちろん。俺だって。
「そんなわけねぇだろ」
「いいや。君は拘り過ぎている。何に対しても、責任を取ろうとしている。その必要がないことへも、だ」
「自分の選択に責任を持つのは当然だろ? それ以上を抱え込んだつもりはねぇよ。面倒ごとは嫌いなんでな」
「だったら何故、今ここでこうしているんだい? 神を気取るだけのドラゴンなんて放っておけばいいだろう? 例え誰かが死のうと、国が滅びようと、君の責任なんかじゃなかったはずだ」
「結末まで分かり切ってることを知らねぇ振りをして見過ごすことは、罪にならねぇのかもしれねぇけどな。だからって放置できるほど神経はしてねぇんだよ。その先にある哀しみを、受け止めきれるほどの器もな。それは責任じゃねぇだろ。ただ俺が見過ごしたくないっていう、それだけの意思だ」
「違うね。ああ、まったく間違っている。君は王様じゃない。結果を権力者に教えるだけでも十分に責任を果たしているといえるんだ。だから、その先の全ての行動は君の善意であって、その善意に責任を問う人間などいない」
「それは今だけだ。未来まで見据えりゃ余計な真似をっつー奴は出てくる。特に、失敗してりゃ必ずだ。だからこそ、どんな行動にも責任はある。そう理解して行動しなきゃならねぇんだ」
「未来のことは未来の人間に任せればいい。過去の、過ぎ去った人間に責任を押し付けるような輩にまで気を使う必要がどこにある? ましてや、正解などわからない挑戦に対して、結果論を振りかざすような卑怯者に」
「だからって、好きに失敗すりゃぁいいってのか? それで死人がでたら、恨まれるのは誰だ? 善意だからで済ますのか? 納得できるのか? 責任は誰がとってくれるんだ?」
「死んだ人間がとるさ」
「――は?」
「君は勘違いをしている。それも盛大にね。誰でもいいわけじゃないんだ」
ジーナはどこまでも、得意げな顔で笑った。