軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

万が一

唸る激流、だけじゃない。

背後には灼熱の息吹が上がっている。

これは女王戦で見せたあのコンボだろう。

振り返って確認するだけの暇はない。足だけ見えればそれでいい!

俺は自らを囲う。広く、高く、土を迫り上げ、天井を張って三角柱を作る。

頂点をリミアの魔法に合わせれば、波を割ることが出来る。

そうすりゃ押し流して追撃の形を潰せるし、なにより、このコンボはその後の水蒸気にケイトの電撃を合わせるための布石でもあるはずだ。

だから水の流れを変えてやれば、以降全ては繋がらない。

土を迫り上げる時に飛んでも良かったが、その場合はケイトに狙われるだろうし、サンも俺の姿が見えてれば仕掛けるのを待つだろう。

重要なのは、焦らせること。

起点は消した。

姿も隠した。

先にもう終わりにしようと言っておいたんだ。これがラストチャンスだと思うはず!

俺の体勢を崩すために、この攻撃のために使った領域の広さを逆手にとって、最大限の空間を作った。

広く、間を取ったのはサンの両手剣で縦に割られないように。

高く、迫り上げたのはケイトの魔法で天井をえぐられないように。

限定はされても、特定はされてない。

後は運だが・・・どうする⁉

すぐに、バァン‼ と音が響き暗闇に天より光がさし、赤い光が壁を貫く!

それを合図に飛び出す‼

突き刺された剣をすり抜け、壁をぶち抜き横を取る。

「せいッ‼ はぁッ‼」

当たり前だが、そこを狙ってくるヨハン。

縦、横で繋いで俺とサンの間に立とうとするが、

「甘い!」

「うわぁッ⁉」

庇おうとするあまり、自分の回避がままならないんじゃ意味がない。

ヨハンを蹴り飛ばしてサンに押し付け、その隙に後ろのジェイド達を狙う。

リミアは一人、まだ柱の向こう側。

蹴り飛ばしたヨハンとそれを受けたサンはすぐには追って来れない。

「ここで止めるぞ!」

「お任せいただきたいですわ‼」

それをわかって、ジェイドとキューティーが前に出る。

その後ろで、ケイトが魔法の準備を始め、エイラがそれを守る最後の砦だ。

壁3枚。

まともにやってるとサンやヨハン、リミアまで追いついてくる。

そうなったら、終わり時を逃しそうなんだよな。

だからまぁ、

「ちょっと! どういうことですの⁉」

攻撃以外の魔法を積極的に使っていく。

真っ直ぐ突っ込んできたキューティーの目の前で、光魔法を使って生み出した虚像と交差する。

この手の魔法は単純だが、いきなりやられたら意外と反応できなかったりするんだ。

二人の俺はたじろぐキューティーの左右を走り抜け、ジェイドの前へ。

「こっちだろ‼ わかんだよ‼」

「へぇ! よくわかったな?」

ジェイドは見事に俺を見分けてシールドバッシュ。

ただ、

「残念ながらそいつはさっき見たんでな」

叩きつけようと押し出される盾の上部を掴んで引っ張る。

「うおぉッ⁉」

押しにいったところを引っ張られ、つんのめる。装備の重さも相まってか、崩れた体勢を戻すのに時間がかかっている間に駆け抜ける。

少しでも時間を稼ごうというのか、最後に立ちふさがるエイラは近づく俺を見ても、構えを取ったまま動かない。

それはある意味健気に見える。

このまま体当たりでもすれば、確実に抜けれるだろうが・・・なんというか、見苦しい気がする。

どうしたもんか? と思っていたところに、

「お待ちいただきますわよ‼」

最初に素通りしたキューティーが追い付いてきた。

素直に驚いたが・・・間が悪いな。

言われた通りに急停止し、並走を始めていたキューティーの前に足を差し出す。

「は?」

それがどちらの声だったのか・・・わかりゃしないが、次の瞬間には悲鳴が重なっていた。

キューティーは急なことになすすべもなく、エイラは仲間を避けることも出来ず、仲良く地面に転がることになった。

俺は間に立つ者がいなくなったケイトの背後に回りながら、鞘ごとナイフを取り出し、首に突き付けて、

「こんなもんでいいだろ」

模擬戦の終了を宣言した。