作品タイトル不明
移り変わる街並み
扉を潜った先には見覚えのある光景が広がる。
扉を閉じて振り返れば、いつぞやの風呂場があるんだろう。
「覗いていくかい?」
後ろのジーナが閉じた扉を再度開こうかと冗談めかしてくるが・・・。
「それになんの意味があるんだ?」
「そうだった。今は私が入浴していないのだから、価値なんてあるわけがなかったね」
「例え入ってたとしても価値なんざねぇけどな」
「失礼だね! これでも毎年数十の求婚を受けているんだよ?」
「金と爵位を目当てにな」
「そんなのはあの元当主殿だけさ‼」
「それはどうだろうな?」
なにおう⁉ と憤るジーナを無視して、サルベージへ向かうために2つ目の扉を潜る。
前回はドラゴンの襲来を聞いてここから移動したんだったか。
外へ出て。サルベージの町を見て。
それすらもう、随分と昔のことの様に感じる。
復興した街並みは、俺が知るものとは大きく変わっていて。
なんだかんだ破り捨てたギルドカードも、未だ手の内に残り。その割には、ブロンソン教官の所へは戻らず。袂は中途半端に分かたれたまま。
にもかかわらず、再度こうしてこの土地へ足を踏み入れる事になるとはな。
「感慨深いかい?」
「さっきから、心が読めるとでも言いてぇのか? それとも、浅い俺の考えなら想像に難しくないとでも?」
「いやいや、これも愛がなせる業だよ。その人を知るが故の見解の一致さ。理解を示すのは親愛の証だろう?」
「変態に理解されるなんざ恐怖の象徴だろうがよ」
「いい加減受け入れてくれてもいいというのに・・・私は能力だけを目当てにされても怒りはしないよ? この町の案内だって任されようじゃないか。どうだい? 役に立つだろう?」
「・・・・・・要らねぇよ」
使おうと思っていた道がなく、デカい建物の前に出たあたりで提案される。
分かってて黙ってやがったなという思いが鬱陶しさに拍車をかける。
仲間より先に足抜けしたとはいえ、ここは元活動拠点のサルベージ。
研究者を自称する奴に、元とはいえ冒険者が手を引いてもらうなんぞ、恥以外のなにものでもないだろう。
「宿屋通りが商会館に入れ替わってやがる」
「ドラゴン襲来の話題が強かったからだろう。前よりここを目指す冒険者が増えた。そのための装備や活動のための日用品や食料の需要も増したからね。なにより、復興を聞き付けた商会も多かった。新参者がこの土地に食い込むにもちょうど良かったんだろうね」
「すぐ隣から売店が大量に並んでるのはそっから仕入れてるってことか? 参入してきた商会が直売所を作るとは考えなかったのか?」
「その辺りには不文律があったようだよ。ここの人間を敵に回すってことは、多くの冒険者を敵に回すってことでもあるからね。この霊峰アドレスまでの護衛はここサルベージを目指す冒険者がついでに受けるだろう? そういう利点を失ってしまうと、商品が売れても収益が出ないからね」
「格安の護衛が割高になってちゃ元も子もないってのは分かるが、だったら商会館なんざ立てなきゃいいだろうに」
「保存のきく商品の安置や滞在人の入れ替え、運搬した御者の休息なんかに使うんだと聞いたよ。宿を取り続けるよりは安上りなんだとさ」
「なるほどな。その需要が無くなったから、入り口付近の宿屋通りがきれいさっぱり無くなっちまったのか」
「冒険者を客層にするなら入り口よりも出口付近の方が都合がいいからね」
「ま、攻略のためにここへ来てるだろうからな」
「帰ってくれたならまず休みたいだろうし、持ち帰った素材の選別なんかも同時にやりたくなるはずだからね」
変化した周囲を見渡し、どうにか面影を探しながら、目指す。
かつて、仲間達と過ごした懐かしの溜まり場を。