作品タイトル不明
事前準備3
「その状態のことをマーラグ公は超越と名付けました。本来より多くの魔力を有している状態のことです」
「本来より多く――それはマーラグ公の魔力を其方が私へ寄こしたのか?」
「いいえ、そのようなことは。今回は単に私の魔力を陛下で献上させていただきました。おかげで私の魔力はほとんど空になってしまいましたが、感じる事ができませんか?」
「これは、確かに。いつもより・・・いや、先程までより小さく感じるような気がするな。私は戦争を経てもついぞ戦士にはなれなかったので詳しくはわからぬが・・・それでも、なんとなくはわかるぞ」
言い表し難い感覚の話。
言葉にせずとも伝わる強さの気配。圧力。雰囲気。
そういったものを経験できなかった陛下だからこそ、言葉にしようとしてくれたのだろう。
こればっかりは本当になんとなく、だからな。
魔力の差さえ、経験なしに読み取ることは中々に難しい。
そこへ、
「王が戦士の真似事など、する必要がないでしょう。ですから、気に病まれるまでもありませんが・・・それよりも」
ジーナが不満そうに割って入る。
「そのようなこと・・・とは、どういうことかな? 私の魔力を陛下へ受け渡すことは失礼に値するのかい? そうではないはずだ。私は優れた魔法使い。その魔力は大したものだと自負している」
それを示すように胸を張りながら、
「つまり、それ以外が原因のはずだ! いや! もっと直接的に言おうか! 君は私の魔力を陛下へ渡したくないという感情を持っていた。それは君自身の本当の気持ちだ。気付いていないようだから、その感情の正体を教えよう。それはね、嫉妬という感情だ! もっとはっきり自覚してくれないとね?」
私としても困るんだよ。などと、戯けたことをぬかす。
「・・・・・・よろしいでしょうか? 閣下」
「なんだい?」
「その自信がどこから来るのか、私にはわかりかねますが、世間一般的な話をしますと――」
「うん?」
「研究者とはすべからく研究や探求に心血を注ぐものです」
「当然だね。それが仕事なのだから」
「そのような人間は一般的ではなく、世間からは奇人・変人として判別されます」
「悩ましいことだね。そういった人間の知識や技術を享受し、恩恵を得ているというのに」
「ではそのような人間の、奇人・変人の一部を尊き人に許可なく植え付けるような行為が不敬ではないという根拠は御座いますか?」
「何を言うんだい? 私は公爵家の人間だよ? その尊き人の血を濃く受け継ぐ貴人なんだ。不敬になる要素がどこにあるんだい? そうでしょう? 陛下!」
「ジーナよ。親類として言うが、私は王だ。研究者ではない」
「なぜ今、そのような当たり前のことを?」
「つまり、そういうことだ」
「どういうことですか⁉ 陛下‼‼ 陛下は私の味方では無いのですか⁉⁉ 親友の血を永く隣に残したくはないのですか⁉⁉」
「ゼネスよ! ジーナの圧が増したぞ⁉ どうなっておる⁉ 魔力の差はなくなったのではないのか⁉」
気を大きくした陛下が、毅然とした態度で居られたのはほんの一瞬だった。
それは女の圧です。あるいは変態の圧です。
魔力量ではどうにもなりません。
御自力を以って、処理することをお勧め申し上げます。