作品タイトル不明
真実であっても
「あぁ、そうだ。俺は弱い。だから、引退したんだ」
「本当に、そんな状態で冒険をしていたのですか?」
「そうなるな。で、最終的には、もうやめた方がいいって言われたよ。いつ死んでもおかしくないってな」
ステータスレベル99。
それは、身体が出来上がる頃には到達している必要がある、ステータスレベル100に届かない数値。
能力の不足は死に直結する。どんな時にも。
特に、俺の役割は囮だったからな。
装備こそ一級品だが、一撃もらったら体が耐えられなかっただろう。
他に出来ることがありゃパーティーに残れたかもしれねぇが、それでもお荷物に変わりはなく、そのツケを仲間に支払わせ続けるぐらいなら、と結局やめてたかもしれねぇな。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
なにを考えてるのか、俯いたまま反応がない。
「どうした? 失望したか?」
それならそれで構わない。が、そのままの空気にされると少々鬱陶しいので、さっさと話しを進めさせてもらう。
しかし、
「いいえ?」
返ってきた答えは俺の予想を裏切り、
「常に困難に立ち向かう在り方! 誰かを思って身を引く姿勢! 自らを貶めてでも、それを伝えようという思いやり! お爺様に聞いていた通り、ゼネス様は素晴らしいお方です‼」
こぶしを握り、腕を構え、目を輝かせるその姿には、頭が痛くなるばかりだ。
あの爺、いったいどういう風に俺のことを話しやがったんだ?
冒険者になったのは困難だとかじゃなく、自由にいきたかったからだ。
仲間のことを思うのは、それが自分の為になるからだ。
自らを貶めて・・・って、本当のことを話しただけでそうなるんなら、俺の人生はなんだったんだよ!
「なんでそうなる・・・・」
「冒険譚でも弱い主人公が強いモンスター相手に活躍しますよね? 危険を冒す者こそが冒険者! まさしくゼネス様のことですよ!」
「それは話の中だけだ。危険なんざ、出来るだけ排除するに決まってるだろ・・・」
「そうなのですか? では、身の丈に余る強敵と相対する場合などは、なんというのでしょうか?」
それも、冒険の一部ではあるだろうが・・・だからといって、そこだけを切り取って、それが冒険者だってのは乱暴がすぎる。
どうしようもない時はある。
望まなくても、願わなくとも、かなわないことがある。
そういうのは、
「挑戦っつーんだよ」
その後もどうにか現実とのすり合わせを頑張ってはみたが、ユノの中の俺は大して変わらず。
むしろ、なぜか評価が上がる場面すらあって・・・・・・。
どうすりゃいいんだか。
「やっぱり、ゼネス様に依頼してよかったです!」
「依頼? 個人依頼か?」
「え? はい。そうですけど・・・?」
サンの質問にユノが答えながら、こちらを向く。
「現役ならまだしも、引退者に個人依頼なんて珍しいな。どんな依頼なんだ?」
「えっと・・・」
答えてもいいのか、わからないんだろう。
どうすればいいですか? と、目が訴えている。
「迷宮攻略の手伝いだ」
「迷宮攻略⁉ この子が?」
「こいつは教会の信徒で、迷宮攻略は修道の旅の試練だ」
「あぁ・・・なるほど。それの付き添いか。修道士じゃないのは?」
「こいつの爺さんと古い付き合いがあってな。俺の方が信用できる、だとよ」
「引退したとはいえ、直近まで個人A級・・・なら、確かにそっちに頼むかもしれないな」
サンを納得させていると、近寄ってきたユノが聞く。
「いいのでしょうか? 怒られませんか?」
「構わねぇよ。嘘じゃねぇし、隠すことでもねぇ」
「そうなのですか?」
「個人依頼は免除と免責されてるからな。内容については公開するのが基本だ。ギルドは関わってませんよってのが重要なんだ」
「なるほど・・・?」
わかってなさそうだな。
まぁ、わからなくても別にいいだろう。問題があるわけでもなし。
「それじゃぁ、僕らを見てくれるっていうのは・・・?」
ヨハンが不安そうな声で言う。
「あぁ、デモンストレーションになるだろうと思ってな」
「デモン・・・?」
首を傾げるヨハンに、
「つまり、先生が相手をしてくれる・・・ということでしょう?」
「そうなんだ!」
リミアが武器を取り出しながら教える。
それはそのつもりだったからいいんだが・・・だったら、
「さっきの不安そうな声はなんだったんだ?」
「その・・・てっきり見てもらえないのかと思って・・・」
「それなら最初から断ってたさ。俺と戦うのが怖いのかと思ったぞ?」
「そんなわけないじゃないですか!」
「そうですね。それはありえないでしょう!」
成長を見せれると思ってるからか、ノリノリで武器を構える二人。
自分がやられるところまで、ちゃんと考えてんのか?
「私達は全力で行きますが、先生はどうしますか? 出来るだけ早く始めたいのですが・・・」
メイスを素振りしながら目を光らせるリミア。
もしかしてだが、単に俺を殴りたいだけだったりするのか?
まぁそれでも、
「攻撃魔法と籠手の機能制限でどうだ?」
「僕らはいいんですけど、先生は大丈夫なんですか?」
「問題ねぇよ」
駆け出し相手に、一撃だってもらうつもりはねぇからな。
「お前らも・・・それでいいよな?」
残りの連中にも確認しておいた。