作品タイトル不明
side―――ジェイド
情けねぇ!
ただそう思っちまった。
認めさせるとか言っておきながら、俺はまた自分の力で何も出来てねぇ!
ほとんど消耗せずにどんどんと敵を転がしていくが、それが余計に自尊心を刺激した。
操られただけの一般人。その群れがあの時の失敗を彷彿とさせる上、それを上手く躱せているのはヨハンとリミアという年下の、後からなし崩しで入った仲間のおかげだって言うんだからしょうがねぇだろ!
誰かに聞こえるわけでもないのに、自分自身に言い訳をしていた。
なにも、ヨハンやリミアを侮ってるわけじゃねぇ。
今までだって助けられたことはあったし、もう仲間であることは認めてる。
そんな短い付き合いでも、浅い付き合いでもない。
けど、だからこそ!
今の状況が許せなかった。気に入らなかった。
俺様達が上手く戦えてるのは、ヨハンの経験があまりにもデカい。
その経験も、アイツがヨハンに与えたもんだ。
家族の、故郷のことだからよ。理解はしてたさ。
けどな、それだけで納得なんて出来ねぇよ‼
俺だって! 俺様にだって‼ その時があれば――って、そう思っちまうだろうがよ‼‼
ヨハンの提案は完璧だった。
注意の引き方、拘束の仕方、そこから波状的に繋がる利点。全てが結果に繋がってる。
おかげで敵は身動きが取れないまま地面の上を転がって、リミアの魔法で流される。そいつらが敵の足を掬って、どんどん楽に。有利になる。
いいことだ。いいことだけどよ・・・。
そうして楽になればなるほど、周りを見るだけの余裕が出来る。
アンタ、何やってんだよ‼‼
情けねぇのは俺様だけでいいだろうが‼‼
なんで・・・!
軍隊の動きについてこれねぇだろって俺様達を除け者にしておきながら、なんでそんなに動きが悪い⁉⁉
初めこそ優勢だった。距離を取れてた。寄せ付けなかった。
でも今はどうだッ⁉
前列なんか敵か味方かの判別がつかないほど団子になってるじゃねぇか!
武器だって捨てちまって、泣きそうな顔で敵を引き剥がしてやがる。
なんなんだよ! それは‼
情けなく見えちまうだろうが‼‼ 何にビビってんだよ‼‼
そんな姿、見せるんじゃねぇよ‼‼
感情的になってつい、視線を走らせた。
自分の無力さを噛みしめておきながら、勝手に憧れを押し付けた。
神様気取りは誰なのか・・・・・・俺様にはまだ、わかってなかったんだ。
そんな視線に気づいたのかはわからねぇ。
ただ、身体が熱くなる感覚があった。
それは記憶にこびりついた感覚だ。
あのドラゴンと戦った時に感じた―――。
でもそれはほんの一瞬で。
熱を感じて視線を手に移した次の瞬間には。
背筋が凍るような光景が視界に飛び込んできた。
取っ組み合いみたいになってたはずの戦列が。
僅かに、瞬く間に、空間を取り戻してた。
それどころか、それまでの動き全てが同じだったような・・・。
違和感とも取れる疑問の答えはすぐに出る。
前後に分かれた2つの隊列は、全員が同時に動き出す。
声に出すわけでもなく、指示に合わせるでもなく、自発的に動き出す。
しかも驚くべきことにそれは、近くで見えていた部隊だけじゃない。
奥で、見えない位置で戦う兵士達もまた、同時に動いていた。
それだけの音が重なってた。
まるで1匹のデカいモンスターが鳴らす足音のように。
そんなことがあるか? あり得るのか?
もう一度、感情によって視線が奪われる。
そこに居るのは、いつもと同じ、少し前を行くだけの先人ではなく。
遥か先を見据え、何かと戦う覚悟をした。
知りもしない誰かに見えた。