作品タイトル不明
探し出して決せよ
敵の数の多さには本当についさっき足元掬われたばっかりだ。
だから明確に。より意識して。
母数を把握するために全体を見る。
こっちが80余りに対して、約3倍にもなりそうな大群。
どこから用意した? なんて疑問は最早浮かびもしねぇ・・・が、代わりに違和感が湧く。
敵味方総勢で300は優に超える人数。にもかかわらず、閉塞感など覚えないぐらいに広い庭園。
入った瞬間に別世界と感じるほどの衝撃を受けたとはいえ、地図上で見た広さは、走り抜けた軍事施設の演習場よりも狭かったはず。
体感で言えば演習場の直線は400Mそこそこ。
ここはそれより広く感じる。
ただ平坦だった演習場より、木や椅子なんかの障害物があるのに。
「結界と同化した時、違和感はなかったか?」
「違和感ですか? それはまぁ・・・無かったと言えば嘘になりますけど」
「例えば、本来なら必要ない効力があったとか」
「結界は目的によって効力が違いますから、本来なら必要のない効力と言うのも・・・申し訳ありません」
「いや――悪い」
ユノの言い分におかしな点はない。
その通りだと思うし、同化なんて離れ業でなにかに気付けって方が無茶だ。
「あ! でも――」
思い出したように閃き、次の瞬間には自分の胸元をまさぐるユノ。
敵の攻撃を警戒しながら隊列を並べてる最中になにやってんだって話だが、急展開過ぎてこっちも反応に困る。
胸元を引っ張り開けながら、手繰り寄せたのは紐だ。
なんの変哲もない紐。
首飾りを掛けるための紐だろう。
その先にぶら下がっていたのは、
「ゼネス様の御力は感じていました――」
いつか。グレアムの爺さんに身代わりとして渡した指輪だった。
俺のギフト:加護の恩寵
その効果を押し込めた指輪が、割れた状態で紐の先に引っかかっていた。
「ああッ⁉⁉ ゼネス様からの贈り物がッ⁉⁉」
「・・・その指輪、いつから?」
「確か、ゼネス様が帝国へ赴く前じゃありませんでしたか? お爺様にお渡しくださったのでしょう?」
「・・・・・・そうか」
破損した指輪を見て、爺さんが持ってりゃ何か変わってたのかなんて想像をしちまう。意味なんざねぇのにな。
けど、それだけ孫娘を。ユノを大切にしていたことも理解出来ちまう。
だからこそ、なんでこの指輪が割れてるのかを考えなきゃならねぇ。
ユノを、託された思いを守るためにもだ。
「単刀直入に聞くが。今からもう一度、結界に同化することは可能か?」
「ッ! ~~~・・・駄目です。何か見えない壁みたいなものが・・・いえ、結界こそがそうだろうと言われてしまえば、その通りなのですが・・・」
「いや、いい。その壁には触れるか?」
「・・・・・・触っている感覚がないというのでしょうか? もしくはその、分厚い皮膚に覆われているような感覚といいましょうか」
「痺れた手で物に触ってるような感覚か?」
「っ‼ そうです‼ こんな説明でわかるなんて、流石はゼネス様です!」
次元魔法だな。
空気を掴むような感覚はガキの頃に経験した。
この結界には次元魔法による空間の拡張や接続が施されてるんだ。
そのせいで敵の数が増えたってのに空間を狭く感じねぇ。
やり難いな。
常に注意してねぇと敵の全体像が歪む。
数が増えてるのに気付けなきゃ押し負けるだろうし、逆なら粘られる。
なにより空間ごとの移動・縮小・拡大が出来るんなら、戦列が意味をなさねぇ。
―――だが。
結界にこれだけの細工があるんなら、いるはずだ。
この中に、教祖が。