作品タイトル不明
覚悟して撃てよ6
そこは別世界だった。
所狭しとそびえ立つ高層建築から遠巻きに。
緑が溢れ、空は青く。
息苦しさに支配されそうな路地裏からは隔絶された世界。
今に迷うものであれば、未来まで開けたかのような錯覚にも陥るだろう。
優雅に、奔放に、あるいは呑気に。
ゆっくりと解放された時間を過ごすための庭園が広がる。
芝生、長椅子、丸机。
骨子に草木を纏わせた屋根が雨から匿う所まで。
居心地の良さに特化したこの空間に、無粋で無骨な俺達が踏み入る。
それを許すものが居るとすりゃ、神か神に魅入られた信者くらいのもんだ。
生憎と。
ここにそんな存在は居なそうだがな。
「大丈夫か?」
腕に抱いたユノへ尋ねる。
「・・・はい。もちろんです」
精一杯の笑顔は、本当に限界であることを示す。
ユノの体からは幾つもの魔力が感じられた。
俺には他者に魔力を与える力がある。魔法道具から魔力を吸い上げる力も。
その力を使うには、魔力的に相手と繋がっている感覚が必要で。恐らくは同化や同調といった状態に近しいんだろうと理解していた。
だからユノの中に沈殿している魔力を取り除けないかと試してみるが、
「流石ゼネス様ですね。さっきより凄く、楽になりました」
芳しい成果は得られなかった。
幾つもあった魔力のほとんどは吸い上げられたが、どうしても1つ。
そうはならねぇと抗う魔力があった。
初めての感覚ではあるが・・・考えるまでもなく、これは教祖の――その先にいるドラゴンの魔力だろう。
ユノの言葉に偽りはねぇんだろうが、強がっているのは脂汗から丸わかり。
それでも、足手まとい・・・もといお荷物になりたくねぇのか、降ろして欲しいと頼まれる。
ずっと抱いたままでもいられねぇもんだから仕方なく、頼みに応じてユノを立たせる。
そうこうしている間に兵達の息が整い始め・・・、
「この聖域になにをしたっ⁉⁉」
扇動者か、先導役か、領主の部屋で殺した先輩と呼ばれていたあの男を思わせる奴が現れる。口の利ける特別な目とでも言えばいいのか、同じく男であることに意味があるのか、気になることは数あれど、それよりも気になるのはその周囲を固める数の方か。
ズラリともの言わぬ人形の如き信者を連れて、俺達を取り囲むみてぇに、倍以上の数でもって歓迎してくれる。
「別に何もしてねぇよ。ちょっと通れるようにしたぐらいだ」
「そのために何をしたのかを聞いているのだろうッ‼‼ 答えよッ‼‼」
怒気を発露させた口調。
よく見れば、人形のような信者達さえも。言葉ではなく表情で、不快感を訴えていた。
「さぁな? 特別なことは何も・・・」
「そんなはずがなかろう‼‼ 貴様らが現れる直前から、この地から神聖が失われたのだぞ‼‼」
「結界の構成を、その一部条件を書き換えただけです。貴方様方が敬う教祖様から、こちらのゼネス様へ」
「なんということを――ッ⁉⁉」
俺の代わりにとんでもねぇことを言ったのはユノだ。
アイツらからすれば、この領域における神様を挿げ替えられたに等しい。
しかめっ面になるぐらいには居心地も悪化したことだろう。
それに輪をかけるよう、
「ご安心ください。貴方様方が崇め奉る自称教祖様よりも、ゼネス様の方が。よほど神に相応しいですから。加護教の聖女である私ユノが保証致します」
つみ重ねることで、あっという間に臨戦態勢へと移行した。