作品タイトル不明
side――ダミアン
「領主様‼‼」
血相を変えて飛び込んできたのは若い執事だ。
若いと言っても勤続はそれなり。
こうも慌てふためくようなことはそう無いはずだが・・・?
「どうした?」
まずは息を整えさせ、そこから話を促す。
「それが―――ッ‼‼」
内容を聞いて驚嘆するも、この執事が慌てていた理由に合点がいく。
「間違いないのだな?」
「はい! 確かに‼」
娘が自分の道を行くと言ったその時から、いつか訪れる未来だと覚悟してはいたが、そうか。
「ここまで連れてきてくれ」
「直ちに!」
一礼を残し、踵を返し走り出すその背中を見て、自らと重ねた。
威厳を失うわけにはいかないと。肚を括る事ができた。
「ただいま戻りました」
「よく帰って来た。嬉しく思う」
愛する娘の第一声。
このような場でなければもっと砕けて居られたのだが・・・そう思いつつ、視線を飛ばす。
1人は少年。
身長、顔つき、体つき、どれをとっても娘と差がない。
恐らくはこの少年が娘の連れて来た相手なのだろうと推測できる。
だが・・・・・・その他はどうだ?
次に視線が吸い寄せられたのは女だ。
明らかに場違いであるもう1人の男よりも、捨て置けないだけの特徴があったがためにそちらを見た。
先に断じておくが、目を引かれたのはこの女が魅力的だったからだとか、露出が多かっただとか、そういうことではない。むしろ、露出は少なかった。
なぜなら修道服を着ていたからだ。
頭こそ隠してないがその身は間違いなく修道服に包まれていた。その上で。それを隠しもしないまま、私の眼前に。
これは何の冗談だ? それとも、私の考えが及ばないほどの何かが?
どうしようもなく、ぎこちなく鈍る思考にまで止めを刺そうというのが、捨て置いた男。
なんだ? この男は?
背が高いわけでもなく、筋骨が膨れ上がっているわけでもない。しかし、確かに感じられる威圧力。
これが貫禄というものか?
気を抜けば一瞬で場を支配されそうなほどの迫力。
こんな人物と対面するのはいつぶりだ?
私腹を肥やし、権力に溺れた司祭共よりも。長年に渡り交渉を繰り返し続けた老獪な商人達よりも。同じく領を束ねる貴族でさえ。これほどではない。
皇王陛下に拝謁した時はどうだった? など思えば、王にも及ぶと言っているようなもの。
いやしかし、これに匹敵するとなればもはや―――教祖と呼ばれたあの者ぐらいであろう。