軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

諦めるべきもの

「おねえちゃん‼‼」

意識のないローランを抱えて戻ると、少女マーテルが駆け寄ってきた。

沈み切った空気に耐えきれなくなったライザード達を連れて、一旦ヤーレン達と合流することにした。

ローランの回収成功も教えたかったしな。

「一応、身体は無事だ」

「身体は、ということハー・・・」

「精神の方は保証できねぇ」

「どうして⁉ おねえちゃんになにがあったの⁉」

「かなり無茶な魔法を使わされてたんだ。すぐに意識が戻るかもわからねぇし、異常がないとも断言できねぇ。悪いな」

そんな⁉ とショックを受けているマーテルを横に、今後の話も進める。

「ヤーレン。今、お前達の処遇で話が行き詰ったんで伝えに来た」

「お聞かせ願えますカ?」

「将軍、フリードリヒは皇国までの護送なら出来ると言ってる」

「この状態の彼女を連れていても、でしょうカ?」

「ああ。ローランも含めてだ。だが、皇国では内戦が起きる」

「なるほど、それで共和国へ直接の護送を頼んで頂いたのですネ?」

「そうだ。だが・・・」

「彼の将軍の部隊は皇国への睨みを役目としていた。そのため皇国への道には詳しくトモ、共和国側はそうではなイ。指揮権もまた同様であるト」

「話が早くて助かる。それと合わせて、カーナを信用できねぇ状況になった。だから、時間もない。出来る限り早急にこの国から離れるべきだ」

「上では何があったのですカ? そんないきなり・・・」

「精神操作だ。その可能性がある」

「そんなまさカ―――」

ヤーレンも驚きこそすれ、あり得ないとは言わない。

「ですガ、我が部族も全員が同じ場所にいたわけではありませんカラ。一同にとなるト・・・少々問題があると言いますカ」

それはそうか。

ローランは皇宮の宮廷魔法使いだったし、マーテルは皇都の冒険者ギルドの受付をやっていた。

他の全員にも、それぞれ生活があったはずだ。

元通りの生活ができるかは不明だが、帰りたいと思ってもおかしくはない。

「悪い。配慮に欠いた」

「イエ、精一杯だったのでしょう? 感謝こそすれ・・・というものですヨ。しかし、困りましたネ。正確な残り時間がどの程度か、わかりませんカ?」

「皇都での内戦を終結させるまで、が目安だ。つっても、長引かせるつもりもねぇ。帰ったら直ぐに攻め込む。出来れば1ヶ月以内に決着をつけたい」

「一か月・・・ですカッ⁉ イエ、それ以上にお聞きしたいこともありますガ、なにより! 内戦にも参加されるのですカ⁉」

「・・・それだけの理由がある」

「そうですカ。ソレハ――・・・仕方ありませんネ。1ヶ月・・・今からですト2か月半と言ったところでしょうカ? それならば皇国へ赴く方が生活は安定しそうですネ。帝国との国境から部族が暮らしている地域までは距離がありますカラ」

なにかを計算するようにしてヤーレンはそう言ったが、勘違いがある。

「今から2か月半じゃない。今から数えて1ヶ月。その期間で終結を目指す。だからこそ、どうするかを迷ってる。1ヶ月じゃ皇国へも辿り着けやしない。そこへカーナの精神操作が行われると、お前達はこの国に取り残される」

「ど、どうやってそのようなコト・・・ッ⁉ 今から1ヶ月ではゼネスさんも皇国へ戻れないのデハ⁉」

「少数なら一瞬で皇都まで移動する方法がある。俺はそれを使ってすぐにでも皇都へ戻り、そのまま望福教が起こした内戦を潰しに行く。だから1ヶ月の有余っつーわけだ」

「少数ですカ・・・誰を連れていかれるので?」

「ライザードとマルチナは連れて帰る。置いてくわけにはいかねぇからな」

「彼らハ――?」

ヤーレンが視線をずらした先にいるのは蒸気の騎乗者達だ。

「あの人数は無理だ。それにアイツらは強い。冒険者っつー身分もあるしな。本人達でどうにかできるだろう」

「でしたら、彼らの力を借りつつ皇国を目指すというのはどうでしょうカ? 強行軍になるかもしれませんガー・・・1ヶ月でも十分皇国に近付けるかト。そうすれば、新たな命令が追い付く前に。皇国まで辿り着けるカモ」

50人とその護衛を含める団体と、命令を聞いた個人の伝令と。どちらが速いかは比べるまでもないが、最初から逃げ切るつもりなら確かに。なんとかなるかもしれねぇな・・・。

「そこでお願いなのですガ、彼女達をお願いできませんカ?」

彼女達というのはもちろんローランとマーテル。

ローランは言うまでもなく動けないから、マーテルはこの中でも群を抜いて子供だからだろう。

急ぐなら歩調を合わせては居られない。

そういう意味での足手まとい。

「わかった。そうと決まれば上で話をつけてくる」